子供たちにとってマスクを外すのはハードルが高い、自己肯定感が低い日本の若者
子供はマスクを外すことも大変
コロナ感染予防の為に、3年間も徹底されてきたマスク着用に一体どれほどの感染予防効果があるのか、今ではこれに対して疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
実際マスク着用に明確な感染予防効果は証明もされていません。
ですが、子供たちは違います。
そんな疑問を持つきっかけすらないまま、大人がしてきたマスク着用の生活を今も守り続けているのではないでしょうか。
今ではマスクを外すこと自体、抵抗を感じている子も多いようです。
でも、それはよく考えれば当たりまえのことなのです。
マスク着用の日常は、大人にとっては3年のことかもしれませんが、幼い子供からすれば人生の多くを占めているのです。
マスクを着けるか外すかの選択は、子供たちにとって大人が考えている以上に大きいことになっているのです。
ウイルスは地球上からいなくなりません。
コロナに限らず様々なウイルスと私たちは、これからもずっと共存していきます。
これは絶対に変えられない事実です。
そうした中で私たち大人が今こそ考えなければいけないことがあるのではないでしょうか、
それは子供たちが自らの意思でマスクをするか、しないかの決断ができる雰囲気を社会に取り戻すことではないでしょうか。
マスクを外そうと子供たちに伝えれば良いと思うかもしれませんが、それだけでは難しいと思います。
国立成育医療研究センターが公表した2021年8月の報告によるとコロナ前に比べて小学校高学年から高校生までの約半数が先生や大人に話しかけにくくなった、7割超が何らかのストレス症状を抱えている、15~30%に中程度以上のうつ症状がみられた、未就学児でも支援の必要がある子は20~40%になったそうです。
子育て中の親、子供たちが抱えている深刻な実態がこれによって分かるかと思います。
小学校中学年から高校生の時期の子供たちは、コロナ前の日常が脳内にしっかりと記憶として残っている世代になります。
その記憶を封印して突然始まった新しい生活様式に順応する為、これまで頑張ってきたのです。
そして、今子供たちはさらに努力を強いられる時間を迎えることになるのかもしれません。
それは、マスクのない日常に戻すことです。
大人にとっては簡単なことかもしれません。
しかし子供たちにとっては、また新しい生活様式に順応する為に時間とエネルギーが必要になるのです。
これほど子供たちにとっては大きな変化だということです。
顔を見られたくない子供たち
マスク社会を3年も続いたことにより顔をさらけ出すのが不安と感じている子供たちが多くいるようです。
ほとんどの人は、もうコロナは気にしていないと思います。
マスクを外したくない一番の理由は感染症対策ではなく、自分の顔を見られるのが恥ずかしい、というのです。
顔は確かに個人のアイデンティティでしょう。
顔をマスクで隠した状態で生活することは、脳を発達させている途上にある子供たちに今度どのような影響を与えていくのでしょうか。
特に思春期の子供たちにとって自分の顔はとても気になるものです。
思春期は、他者との関係によって自分の価値や自信を見出していく時期です。
他者は、どう思っているのか、自分はどう見られているのか、このようなことを強く意識しながら生きている時期に「自分の顔を隠す」ことが日常になったのです。
これによって子供たちは自分の素顔を見せないことが当たり前となり、ありのままをさらすことに大きな不安を感じるようになってきたのではないでしょうか。
マスクくらいで変わらないだろ、と思う人たちも多くいるかもしれませんが、大人と子供では脳、心の働きが大きく異なります。
このことをしっかりと考えないといけません。
今でもマスクをつけることをよしとする空気が社会を支配しているのではないでしょうか。
これでは、子供たちがマスクを外して、ありのままの自分で他者と接したいと思う動機を減らしていくのは当たり前のことだと思います。
自己肯定感は最下位の日本の若者
思春期に限ったことではないですが、日本や韓国を含む東アジアでは、自分の顔にコンプレックスを持つ人が他の国に比べて多いようです。
その理由として東アジアでは他者と自己の存在の境界線があいまいで他者の見方、価値観に強く影響を受けがちである点が指摘されています。
このような特性は、東アジア圏の社会制度と深く関わっているようです。
東アジアは、「家」「ムラ」という小集団を単位とする社会構造を基本としてきました。
家やムラを守る為の存在としての個で、その役割が個に求められてきました。
東アジアでは親の経済力によりますが、子供の教育に早期から巨額の投資をする傾向があります。
これは、子供の将来を考えてのことですが、家の為、親の為という側面もあるのではないでしょうか。
子供たちは集団の価値観を求められ、個人の特性が重視される機会が少ない環境の中で育っていくのです。
先進国の中で日本の若者の自己肯定感は最下位という結果が出ているようです。
国連がまとめた2022年の世界幸福度ランキングを見ると146カ国中で日本は54位、韓国は59位です。
1位がフィンランド、2位がデンマーク、3位がアイスランド、米国は16位、英国17位です。
先進国の多くが25位以内に入っている中で日本と韓国は非常に低いのです。
個人の特性があまり重視されないで自己効力感、自己肯定感も低い日本の子供たちにとって自らの意思で「マスクを外す、外さない」を決断するのは、相当にハードルが高いのではないでしょうか。
親や周囲の大人がマスクをつけ続ける限り、それに反するようなことをするのは抵抗を感じるでしょう。
なので、マスクを外した子供が社会から肯定的に見られていることを意識的に、大げさなくらいに伝えてあげることが大切になってくるのではないでしょうか。
参考書籍⇒マスク社会が危ない 子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?