身体の設計図である遺伝子について|DNA、ヒトゲノムマップ
遺伝子とは?
私たちの身体には約37兆個の細胞が存在しているとされています。
60兆個の細胞では?と思われる人もいるかもしれませんが、10年くらい前に訂正されているようです。
現在では37兆個と推定されています。
それぞれの細胞が脳や筋肉、皮膚、血液などの正しい場所で機能することで、一つの固体が構成されています。
髪の毛や目の色などの形質が親から子へ伝わることを遺伝といいます。
遺伝によって子や孫に伝わる情報が遺伝情報です。
遺伝情報を基にタンパク質を合成して、身体を作る設計図が遺伝子になります。
身体を構成しているのは、ほとんどがタンパク質で臓器や筋肉、皮膚などを構成しています。
遺伝子は、これらのタンパク質を作る為の情報をコントロールしています。
ヒトの遺伝子は約2万数千種類あると言われていて、各遺伝子が適切な時期に働いて約10万種類のタンパク質を適切な量作っています。
遺伝子は、生物を構成する重要な情報で、細胞内に厳重に保管されています。
遺伝子の構造
ヒトの細胞の核の中には、遺伝子、DNA、染色体と呼ばれる構造があります。
私たちの身体を構成している細胞の中には、エネルギー産生に関わる細胞質やミトコンドリア、タンパク質を合成するリボソームやゴルジ体、ゴミの処理をするリソソーム、恒常性を保つ為の細胞膜などがあります。
その中でも遺伝子と深い関係があるのが核です。
核は、各細胞に一つしかありません。
遺伝子という情報の宝箱を保管する重要な役割を担っています。
核の中にはDNA(デオキシリポ酸)があります。
DNAは塩基・糖・リン酸で構成されているヌクレオチドという単位で繋がった鎖状のもで二重らせん構造をしています。
塩基には、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類があります。
AはT、GはCと必ずペアになって結合します。
この4種類の塩基の並ぶ順番である塩基配列を遺伝子が決めています。
塩基の組み合わせは全部で約30億種類あると言われています。
細胞一個には約2mのDNAが入っています。
遺伝子とは、DNA上に存在する「遺伝子情報が書かれた特定の部分」のことです。
DNA=遺伝子と思いがちですが、実はDNA上には無数の塩基のうちタンパク質を合成する為の情報が書きこまれた部分を遺伝子といいます。
タンパク質を合成する為の情報が書きこまれていない部分を非遺伝子領域といいます。
ヒトのDNAの約30億種類の塩基配列のうち、遺伝子は全体の約2%に過ぎず、残りの98%は非遺伝子領域であると言われています。
DNAとヒストンというタンパク質が結合し凝集したものを染色体といいます。
ヒトの細胞一個の核は直径5㎛です。
その中に2mのDNAを入れないといけないので小さく折りたたむ必要があるので、このような構造になっています。
ヒトは一つの核内に23組、46本の染色体を持っています。
細胞分裂をする際、コピーしやすく為DNAを染色体として凝縮しておく必要があります。
長いDNAを折りたたんでコンパクトな状態にしたほうが分裂の時に一気に分けることができて効率が良くなります。
ヒトゲノム計画、ゲノムとは遺伝情報全体
ゲノムとは、遺伝子と染色体から合成された言葉で、遺伝子をはじめとする遺伝情報を意味しています。
本に例えるとDNAは情報を示す為の紙、遺伝子はその中のタンパク質の作り方が記載されている文章、染色体は全ての文章をまとめた本、その本を保管している本棚全体がゲノムといいます。
ヒトゲノム計画とは、DNAの全塩基配列を解読して遺伝子を全て明らかにすることを目的にした国際的なプロジェクトです。
このプロジェクトは、アメリカを中心にイギリス、日本、ドイツ、フランス、中国の6カ国によって研究が進められました。
約13年の月日をかけて2003年4月に完了しています。
これによって46本の染色体のどの位置にどのような働きをする遺伝子があるかが明らかになりました。
ヒトゲノム全体に含まれる遺伝子の数が約2万~2万5千あると判明しました。
この研究をもとに作られたのがヒトゲノムマップです。
現在明らかになった塩基配列を利用することで、遺伝子の個人差による病気のかかりやすさなどの研究が世界中で盛んに行われています。
研究が進めば、個人の遺伝子特徴に応じた様々な病気の治療が可能になると考えられています。