五大栄養素とは?炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンとミネラルの主な機能
目次
炭水化物は生きる為のエネルギーになる
私たちが毎日食べている食品には、主に炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルが含まれています。
これらは五大栄養素と呼ばれ、私たちが生きていくのに欠かせない栄養素になります。
炭水化物は一般的に糖質のイメージがあるかと思いますが、厳密には糖質と食物繊維の総称のことを炭水化物と言います。
ここでの炭水化物は、糖質についてお話になります。
炭水化物は、単糖を主成分とする栄養素です。
米やパン、麺類などの主食、イモ類、砂糖や果物の仲にも多く含まれています。
体内に入ってきた炭水化物は、体内でエネルギーを作る材料になります。
このエネルギーによって私たちは、体温を一定に保ったり筋肉を動かしたり、心臓や脳などの臓器を働かせることができます。
穀物やイモの炭水化物は、単糖類であるグルコースが多数結合したでんぷんになります。
でんぷんは、口から入って最終的に小腸でグルコースにまで分解されます。
グルコースは、細胞内のミトコンドリアでエネルギー源であるATPを生み出します。
1gのグルコースからは、約4kcalのエネルギーが生じます。
一つのグルコースから一つのATPが合成されます。
実際には、30数個ものATPが合成されます。
ATPは、アデノシン三リン酸と言って、三つのリン酸が結合しています。
リン酸同士は大きなエネルギーを使って結合をしているので、リン酸が一つでも外れると大きなエネルギーが放出されます。
このエネルギーが私たちの生命活動に使われています。
タンパク質は身体を構成している
身体の中には10万種類のタンパク質があるとされています。
タンパク質は、筋肉や骨、皮膚など私たちの身体を作っています。
タンパク質は、アミノ酸という分子が結合してできています。
牛肉、豚肉、鶏肉、魚や大豆、卵、乳製品に多く含まれています。
アミノ酸は20種類あり、アミノ酸の並び順によってタンパク質の形や機能は変わってきます。
20種類のアミノ酸のうち9種類は必須アミノ酸です。
必須アミノ酸は、体内では合成することができないので食品から摂取する必要があります。
タンパク質は、筋肉や髪の毛、骨などを構成していますがそれだけではありません。
酸素を運ぶヘモグロビンや食べ物を分解する消化酵素、病原体を排除するよう働く分子である抗体、ATPを構成する酵素など、体内で働く様々な分子もタンパク質になりますし、ホルモンの材料にもなります。
食品中に含まれるタンパク質は、主に小腸でアミノ酸まで分解されて吸収されます。
アミノ酸はその後、血液を通って身体中の細胞に供給され新たなタンパク質の材料になります。
脂質は細胞に欠かせない
脂質は制限するべきと思われがちかもしれませんが、制限のし過ぎは良くありません。
脂質は、脂肪酸からできています。
大きく分けると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けることができます。
脂肪酸は、炭素原子が数個~二十数個、鎖のように結合している分子です。
植物油、動物の肉の脂、バターなどに多く含まれています。
脂質は、私たちの体内でエネルギーを作る元になったり、細胞膜を作って細胞の防御壁になったりと非常に重要な働きをしています。
ホルモンの材料にもなります。
私たちが食品から摂取する脂質は、中性脂肪です。
中性脂肪は、小腸で分解されて小腸の細胞に吸収された後、同じ細胞の中で再び中性脂肪やリン脂質、コレステロールなどに作り変えられます。
血液中を運ばれていく中性脂肪のほとんどは、身体の皮下にある脂肪組織に蓄えられます。
皮下の脂肪は、分解されてエネルギーを作る元になります。
リン脂質は、細胞膜を構成する主な成分になります。
コレステロールは、リン脂質と同じように細胞膜の構成成分になる一方で胆汁酸や様々なホルモンの材料になります。
脂質は、私たちの細胞に欠かすことができない栄養素です。
ビタミンは酵素の働きを助けてくれる
人間の身体は水分を除けば、炭素を含む分子(有機化合物)からできています。
ビタミンは、炭水化物、タンパク質、脂質を除いた有機化合物のうち体内でほとんど合成されない有機化合物になります。
ビタミンの必要な量はごくわずかですが、体内で非常に重要な役割を果たしています。
特に酵素の働きを助ける補酵素としての機能が多いです。
例えば、ビタミンB1やナイアシンは、炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出す反応をになう酵素の働きを助けます。
また、葉酸は、DNAを合成する酵素や赤血球を作る酵素の補酵素として働きます。
食べ物に含まれているビタミンは、炭水化物やタンパク質と結合をしているので、そのままでは体内に吸収することができません。
この結合は、胃酸や膵臓から分泌される膵液などによって切り離されて小腸から吸収されます。
ビタミンの種類と働き
ビタミンA
皮膚や粘膜を正常に保ち、抗酸化作用もあります。
目の網膜で光を受け取るタンパク質のロドプシンの成分になります。
レバー、アンコウの肝、卵、ニンジンやモロヘイヤなどの緑黄色野菜に多く含まれています。
ビタミンD
小腸からカルシウムの吸収を促します。
骨からカルシウムを溶かして血液中のカルシウム濃度を高くします。
鮭、サンマ、キクラゲ、干しシイタケなどに多く含まれています。
ビタミンE
抗酸化作用があり毛細血管を拡張させます。
植物油、アーモンド、キングサーモン、カボチャなどに多く含まれています。
ビタミンK
骨からカルシウムが溶け出すのを抑えます。
止血作用があります。
納豆、アシタバ、ツルムラサキ、オカヒジキなどに多く含まれています。
ビタミンB1(チアミン)
炭水化物からエネルギーを取り出す反応を助けます。
神経の機能を正常に保ちます。
玄米、そば、豚肉、ウナギ、エンドウ豆に多く含まれています。
ビタミンB2(リボフラビン)
炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出すのを助けます。
抗酸化作用を持っています。
レバー、納豆、牛乳、卵などに多く含まれています。
ナイアシン
炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出す反応を助けます。
アルコールの分解を助けます。
たらこ、カツオ、レバーなどに多く含まれています。
ビタミンB6
タンパク質の分解と合成を助けます。
神経に情報を伝える物質やヘムの合成を助けます。
マグロ、カツオ、レバー、バナナなどに多く含まれています。
ビタミンB12(コバラミン)
DNAの合成を助けます。
レバー、菜の花、芽キャベツ、ホウレン草などに多く含まれています。
葉酸
DNAの合成を助けます。
造血を助けます。
レバー、菜の花、枝豆などに多く含まれています。
パントテン酸
炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出す反応を助けます。
ホルモンやHDLコレステロールの合成を助けます。
レバー、子持ちカレイ、ニジマスなどに多く含まれています。
ビオチン
炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出す反応を助けます。
皮膚の炎症を起こす物質の排泄を助けます。
レバー、落花生、卵などに多く含まれています。
ビタミンC
抗酸化作用がありホルモンの合成を助けます。
コラーゲンの合成を助けます。
腸内での鉄の吸収を助けます。
赤ピーマン、ブロッコリー、柿、キウイフルーツなどに多く含まれています。
微量でも必須なミネラル
栄養学でいうミネラルとは、体内を構成する元素のうち、炭素、酸素、水素、窒素を除く、残り数%を占める元素のことです。
カルシウムやリンは、骨や歯を形成しイオウは爪や髪の毛を形成し身体の構成成分となります。
一方で、ナトリウムやカリウムのように体液の浸透圧など、体内の環境を保つものもあります。
また、鉄や亜鉛のように酵素の成分となって酵素の機能を助けるものもあります。
ビタミンと同じように1種類のミネラルが様々な機能を持っています。
食べ物に含まれるミネラルは、消化の過程でイオンの形で水に溶けています。
溶けたミネラルは小腸でほとんどが吸収されて毛細血管に送られ全身に運ばれます。
ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルは大腸でも吸収されます。
ミネラルの機能と働き
カルシウム
骨や歯を形成し筋肉の収縮を助けます。
神経間の情報の伝達を抑えます。
ホルモンの分泌を助け細胞の分裂を調節します。
牛乳、ヨーグルト、チーズ、干しエビなどに多く含まれています。
リン
骨や歯を形成します。
DNA、ATPの材料になります。
細胞膜を構成しているリン脂質の材料になります。
ワカサギ、シシャモ、牛乳、レバーなどに多く含まれています。
カリウム
体液の浸透圧を調節します。
神経間の情報の伝達を助けます。
細胞内外での物質の出し入れを助けます。
血圧を下げます。
ホウレン草、バナナ、ジャガイモなどに多く含まれています。
イオウ
解毒作用を助けます。
皮膚、爪、髪の毛を形成します。
卵などに多く含まれています。
ナトリウム
体液の浸透圧を調節します。
神経間の情報の伝達を助けます。
細胞内外での物質の出し入れを助けます。
食塩、味噌、梅干しなどに多く含まれています。
塩素
殺菌を行う胃酸の成分です。
体液の浸透圧を調節します。
神経間の情報の伝達を抑えます。
食塩に含まれています。
マグネシウム
骨や歯を形成し筋肉の収縮を助けます。
血管を広げて血圧を下げます。
神経間の情報の伝達を抑えます。
エネルギーの生産を助けます。
アーモンド、玄米、大豆、ホウレン草などに多く含まれています。
鉄
身体中に酸素を運ぶタンパク質であるヘモグロビンの成分になります。
血液中の酸素を筋肉に取り込むタンパク質であるミオグロビンの成分になります。
レバー、牛肉、ホウレン草などに多く含まれています。
亜鉛
DNAやタンパク質の合成を助けます。
舌が味を感じるのを助けます。
生殖機能を維持します。
牡蠣、レバー、牛肉などに多く含まれています。
銅
鉄をヘモグロビンに取り込まれる形に変えます。
抗酸化作用があります。
コラーゲン、髪の毛の合成を助けます。
タコ、レバー、ソラマメなどに多く含まれています。
ヨウ素
発育を促します。
全身の基礎代謝を促します。
ヒジキ、マダラなどに多く含まれています。
セレン
抗酸化作用があります。
アンコウの肝、タラコ、クロマグロなどに多く含まれています。
マンガン
骨の発育を促します。
抗酸化作用があります。
炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出す反応を助けます。
緑茶、栗、生姜などに多く含まれています。
モリブデン
DNAの分解で生じた物質を尿酸に変える働きを促します。
大豆、納豆、レバーなどに多く含まれています。
クロム
炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出す反応を助けます。
青のり、きざみ昆布、ヒジキなどに多く含まれています。
コバルト
ビタミンB12の構成成分になります。
造血を助けます。
もやし、納豆になどに多く含まれています。
参考書籍⇒Newtonライト2.0 食と栄養