メンタルヘルス

【認知行動療法】生きづらさの根源「スキーマ」を見つける方法:下向き矢印法を解説

「特定の状況でいつも不安になる」「同じパターンで人間関係に悩む」……。

その生きづらさの原因は、自身の心の奥底に隠された「スキーマ(中核信念)」かもしれません。

スキーマとは、私たち自身の人生の土台となっている*目に見えない当然のルール”です。
無意識のルールであるがゆえに、他の考え方があることに気づけず、自動的に苦しさが生まれてしまいます。

ここでは、自身のスキーマ(人生のルール)を明らかにするための、認知行動療法(CBT)の具体的な手法「下向き矢印法(Downward Arrow Technique)」をご紹介します。


1. スキーマ(中核信念)とは? 自動思考との違い

私たちの頭に浮かぶネガティブな考えは「自動思考」と呼ばれますが、そのさらに深層にあるのがスキーマです。

  • 自動思考
    状況に応じて瞬間的に浮かぶ思考(例:「またミスをした」「上司に嫌われたかも」)
  • スキーマ
    生き方や世界観に関する断定的な信念、頑なな思い込み(例:「自分は無能だ」「誰からも愛されない」)

スキーマは普段意識に上りにくいため、まず、自分が抱える自動思考を徹底的に掘り下げていく必要があります。


2. 下向き矢印法:スキーマを見つける具体的な手順

下向き矢印法は、浮かんだ自動思考を「もしそれが真実だとしたら、それは何を意味しているのか?」と繰り返し問い続け、信念の中核に迫る手法です。

この問いを繰り返すことで、曖昧な不安や思考の裏にある、断定的な表現で表される「中核信念(スキーマ)」が見えてきます。

下向き矢印法のステップ

  1. 自動思考を特定する
    今、頭に浮かんでいる不安やネガティブな考えを書き出します。
  2. 問いを繰り返す
    その考えが正しいとして、「それは何を意味している?」と問いかけます。
  3. 核心に迫るまで続ける
    質問への回答が、あなたにとっての「真実」をあらわす断定的な表現(例:〜ねばならない、〜に違いない)になるまで、問いを繰り返します。

実践例:下向き矢印法によるスキーマの発見

自動思考(出発点)問いかけの連鎖スキーマ(中核信念)
このまま結婚できなかったらどうしよう↓↓↓ それは何を意味している?
一生、一人で暮らすことになる
↓↓↓ それは何を意味している?
何の楽しみもない、不幸な生活で一生を終える
↓↓↓ それは何を意味している?
結婚して家庭を持たないと幸せになれない達成・承認に関するスキーマ
業績が落ちることはあってはならない↓↓↓ それは何を意味している?
同僚や部下に抜かれてしまうかもしれない
↓↓↓ それは何を意味している?
社内での評価が下がり、自分の存在価値がなくなる
↓↓↓ それは何を意味している?
仕事で成功しないと自分に価値がない価値・能力に関するスキーマ

💡 職業や立場に固有のスキーマもある

スキーマは、その人の過去の経験だけでなく、職業や立場によって形成されることもあります。

  • SE・技術者
    「感情的になってはいけない」「論理的でなければならない」
  • 看護師・介護士
    「常に患者(相手)を最優先すべきだ」「自分の弱音を吐いてはいけない」
  • 管理職
    「部下に追い抜かれてはいけない」「常に完璧な決断をしなければならない」

3. スキーマを「発見」することの意義

長年信じてきた頑なな思い込みを明らかにすることは、生きづらさの根源を特定することに他なりません。

この作業によって、「自分が長年信じてきたそのルールは、本当に100%正しいのだろうか?」と、初めてその信念に疑問を投げかけることができるようになります。

スキーマを自覚し、柔軟な思考へと書き換えていくことが、認知行動療法による心の変容の第一歩となります。
まずは恐れずに、下向き矢印法を試して、あなたの「人生のルール」見つけてみてはいかがでしょうか。