メンタルヘルス

【認知行動療法】辛い気分は「性格」のせいじゃない!思考のクセ(認知の歪み)を直す方法

「どうして自分はこんなに落ち込みやすいのだろう」「いつも悪い方向に考えてしまう」と悩んでいませんか?

その辛い気分やネガティブな行動は、「性格」の問題ではありません。
原因は、物事を捉える際の「思考のクセ=認知の歪み」にあるかもしれません。

本記事では、気分を決定づける「認知の歪み」とは何か、それが私たちの心と行動にどう影響するのかを解説し、辛い気分から抜け出すための具体的な対処法をお伝えします。

認知の歪みとは?気分と事実を分ける「思考のフィルター」

私たちは、世界をそのまま見ているのではなく、「認知」という独自のフィルターを通して物事を解釈しています。
しかし、この認知に偏りがあると、客観的な事実が見えにくくなり、ささいな出来事でも過度に落ち込んでしまう原因になります。

この偏った思考の傾向を、認知行動療法(CBT)では「認知の歪み」と呼びます。

認知の歪みが引き起こす悪循環

認知の歪みは、気分だけでなく、行動にも深刻な影響を及ぼします。

例えば、「私はいつも失敗ばかりだ」という歪みを持っていると、新しい挑戦を避け、ますます成功体験が得られなくなり、結果的に自己評価が下がるという悪循環に陥ります。
憂鬱な気分の根源は、まさにこの「認知の歪み」にある可能性が高いのです。

「性格」ではなく「思考のパターン」が問題

ネガティブな解釈をするのは、決してあなたの性格のせいではありません
それは、単なる「思考のクセ(パターン)」です。

認知の歪みがあると、以下のようなマイナスな解釈をしやすくなります。

  • 他者へのマイナス解釈(読心術):
    • 「同僚は私のことを仕事ができない人間だと思っているに違いない」
    • 「私と話してもきっと楽しくないだろう」
    • (根拠なく、他人の気持ちを勝手に決めつけてしまう)
  • 将来への悲観的予測(先読みの誤謬):
    • 「この先もどうせ良いことなんてない」
    • 「結局、私は誰とも結婚できず孤独に過ごすことになる」
    • (根拠のない悲観的な予測を立て、それを事実だと信じ込む)

これらのマイナス思考は、あなたの認知が原因で心が辛くなっている状態を示しています。

【具体例】認知が気分・行動に与える影響

認知の歪みが、感情と行動にどのような影響を与えるのか、具体的な事例で見てみましょう。

要素事例認知の歪みが生む解釈影響
状況初めてのプロジェクトでクライアントの希望を十分に聞けなかった。「私はいつも失敗ばかり」「私にこの仕事は無理だ」 (一度の失敗で全てを決めつける「過度の一般化」の傾向)😞 気分:みじめ、無力感、ゆううつ
歪んだ認知普段は求められた仕事ができているにもかかわらず、「いつも失敗」と決めつけ、能力を低く評価する。自分の能力を実際よりも低く評価し、「この仕事は無理だ」と結論づける。🏃‍♂️ 行動:失敗しそうな業務を避け、仕事に消極的になる。

特に新社会人など、新しい環境にいる人は、ミスを注意されると「自分自身が否定された」と感じやすく、認知の歪みが起こりやすい傾向があります。

思考パターンを変えるための実践的な対処法

自分の思考のクセを変えることは可能です。悲観的な「自動思考」に気づき、より現実的でバランスの取れた思考に修正していきましょう。

思考のパターンを客観視する

辛いと感じた状況で、頭に浮かんだ「自動思考」を書き出してみましょう。

  • 例:「クライアントに怒られた」→「私は本当に無能な人間だ」

この「自動思考」は事実ではなく、あなたの解釈(認知の歪み)であることを認識するのが第一歩です。

「証拠」を探し、客観的な事実と比較する

自動思考が本当に正しいのかどうかを検証します。

  • 自動思考の「反対の証拠」を探す
    • 「過去に上手くいった仕事はなかったか?」
    • 「今回の失敗以外に、自分の能力が評価されたことはなかったか?」
  • より現実的な解釈を探す
    • 「失敗したのは、単に経験が不足していたからではないか?」
    • 「今回の反省点を次に活かせば、成長できるのではないか?」

信頼できる友人の思考パターンを参考にする

困った状況に直面したとき、「問題に落ち着いて対処できる友人」がどんな「自動思考」を抱くかを聞いてみるのも有効です。

  • 「もしあなたが同じ状況だったら、最初にどう考える?」
  • 「あなたの思考を聞いて、自分の思考パターンとどう違うかを確認する」

これは、より「ほどよい思考パターン」を知るための非常に有効な参考資料となります。

自分の思考のクセを見つめ直し、一つずつ修正していくことが、辛い気分を和らげる鍵となります。