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栄養素が体内に取り込まれる仕組み、様々な消化酵素によって分解される

口ではでんぷんだけが分解される

子供の頃に「よく噛んで食べなさい」と言われたことはないでしょうか。
噛むことは歯で物理的に食べ物をすりつぶしていく為です。
ですが、それだけではありません。
唾液と食べ物を混ぜる為でもあるのです。

唾液には消化酵素が含まれているので、食べ物の栄養素を身体が吸収できる状態にしてくれる作用があります。
唾液に含まれる消化酵素は、アミラーゼがほとんどです。
これは、でんぷんを消化する働きをします。

アミラーゼは、でんぷんの分子を短く切断して最終的にグルコースが二つ結合したマルトース(麦芽糖)まで分解されます。
タンパク質や脂質はアミラーゼでは分解されません。

例えば、ハンバーガーならパンから炭水化物、肉からタンパク質と脂質が主に摂れますが、これらをいくら噛んで唾液と混ぜても口の中で消化されるのは、ほぼパンだけになります。

ご飯やパン、イモなどに含まれるでんぷんは多数のグルコースが数十~数万個結合しています。
アミラーゼは、それを二つ結合した状態(マルトース)になるまで切っていくことができます。
ご飯などをよく噛んでいくと甘みを感じてきますが、これはマルトースによるものです。
この状態でもまだ身体に吸収できるわけではありません。

口の中が消化の第一段階になります。

タンパク質を分解する胃液

胃

食べた物は、食道を通って胃にたどり着きます。
ここでは胃酸が分泌されます。
胃酸は強酸性で、タンパク質は胃の中に入って胃酸によって分解されていきます。

タンパク質は、肉や魚に豊富に含まれています。

胃液には、ペプシンという消化酵素が含まれています。
胃液は、塩酸(胃酸)や消化酵素などが混ざったものです。
酸はものを溶かすイメージがあると思いますが、胃酸がタンパク質を消化するわけではありません。
胃酸は、からまった構造をしているタンパク質の分子をときほぐすだけで消化まではしません。
その分子を身体が吸収できるまで切断するのは、ペプシンの働きになります。
実はペプシンは、本来の効力を発揮できない状態で分泌されます。
ペプシンは、強酸性の胃酸にさらされることでリミッターが外れて、それによってタンパク質を分解する効力を発揮できるようになります。

胃酸は、二つの側面からタンパク質の消化を助けています。

十二指腸で分泌される強力な消化液

胃を出た先は、十二指腸です。

十二指腸では、膵臓が分泌する膵液と肝臓で作られて胆嚢で濃縮される胆汁が流れています。
胃液と混ざったかゆ状の食べ物が十二指腸に届くと、膵液や胆汁の量が急増していきます。
膵液や胆汁には、重炭素イオンを多く含んでいてアルカリ性になっています。
十二指腸で胃酸を中和してくれます。

胃の消化酵素は強酸性の環境で働くことができる仕組みでした。
ですが、膵液の消化酵素は中性付近の環境でないと働くことができません。
なのでアルカリ性で中和させる必要があるのです。

膵液は、タンパク質の消化酵素などを5種類以上も含むとても強い消化酵素になります。
その要であるのがトリプシンという消化酵素です。
トリプシンが、その他の消化酵素を活性化させていきタンパク質の消化が進んでいきます。

例えは、肌に張りを生む源の一つであるコラーゲンは、食べたとしてもそのままコラーゲンとして身体を作るわけではありません。
膵液の消化酵素によって細かくなってから吸収されます。
膵液には、アミラーゼも含まれているのででんぷんの分解も進みます。

十二指腸では脂質も分解

十二指腸では、タンパク質だけではなく、脂質の分解も本格化します。
脂質の50~70%は十二指腸で分解されると言われています。
口の中で数%、胃の中で10~30%と言われています。

脂質を分解するのは、膵液に含まれているリパーゼという消化酵素になります。
十二指腸では、胆嚢に蓄えられていた深緑色の胆汁も流れ出てきます。
胆汁には、消化酵素は含まれていません。
胆汁の成分の50%程度は、胆汁酸です。

胆汁酸の役割は、石鹸とよく似ています。
どちらの分子構造にも水にくっつきやすい部分と油にくっつきやすい部分の両方があります。
胆汁酸は、油にくっつきやすい部分を脂質に、水にくっつきやすい部分を水に向けて、本来混ざりにくい水と油を橋渡しします。
すると水(消化液)に溶けているリパーゼが脂質と出会いやすくなります。

膵臓が炎症やガンによってリパーゼが分泌されにくくなったり、胆汁酸が沈殿してしまったりすると脂質の消化が上手くできなくなってしまいます。
脂質が上手く消化されていないと灰色がかった脂肪便が出ることがあります。
正常な便は黄褐色であり、これは胆汁に含まれるビリルビンの色素になります。

小腸には糖やアミノ酸の専用の入り口がある

腸

十二指腸を通ってきた食べ物は、小腸に到達します。
小腸には、輪っか状のヒダが多数あります。
ヒダの表面には、絨毛と呼ばれる1mm前後の突起が無数に並んでいます。

でんぷんは、消化酵素のアミラーゼでは最後まで分解しきれません。

また、小腸には分解途中のデキストリンやマルトースもやってきます。
これをグルコースまで分解する場所が、小腸細胞の表面にある微絨毛になります。

一方で、タンパク質は3~8個のアミノ酸が結合したオリゴペプチドになって小腸にたどり着きます。
微絨毛には、オリゴペプチドを分解する消化酵素が埋め込まれています。
また、細胞内には分解途中のペプチドをアミノ酸まで分解する消化酵素があります。

微絨毛には、グルコースやアミノ酸など、それぞれ専門の入り口が存在しています。
勢いよく回る回転ドアのようにイオンを流しこみ、その流れに乗せて栄養素を取り込んでいます。

このようにして食べ物の消化・吸収が行われています。
消化・吸収は、数時間で完了します。

大腸では腸内細菌によって消化

大腸の役割は、便を作ることです。
大腸で食べかすが便になる間には、消化酵素に頼らない消化が実は起きています。
そこで活躍しているのが腸内細菌です。

腸内細菌は食物繊維を分解して単糖を作ってそれを取り込んで活動をしています。
食物繊維の多くは、でんぷんと同じように糖が結合してできています。
腸内細菌の中には、人間の消化酵素では切断できない糖の結合を切断できる酵素を持ち、食物繊維を使って活動をするものがあります。

様々な腸内細菌は、食物繊維を切断してできた単糖を栄養源にして短鎖脂肪酸を作ります。
短鎖脂肪酸とは、酪酸やプロピオン酸、酪酸などです。
副産物として作られる酪酸などは、大腸の細胞の粘液を作ったり水分を吸収したりする為のエネルギー源として使われます。

腸内細菌は食べ物の残りものを分解する一方で、腸内の脂質やアミノ酸などを変換して多様な物質を作っています。
それらが腸細胞同士の結合を強めて、病原体の侵入を防ぐバリア機能を強化したり、免疫系に働きかけるシグナルとなったりしていると言われています。

大腸の内容物は、運ばれるにつれて徐々に水分を失い便として排出されます。
便の固体成分のうち、およそ3割前後が腸内細菌だと言われています。

参考書籍⇒Newtonライト2.0 食と栄養