メンタルヘルス

不安はただの心配ではない|不安を感じると様々な影響が身体に出てくる

不安は頭の中の問題だけではない

不安はただの心配ではなく、身体や心、さらには社会的な要因が複雑に絡み合った現象になります。
私たちは精神状態によって身体にも様々な影響を与えます。
震えや心臓の動悸などがその一例です。
不安や恐れが闘争-逃避反応を引き起こして、筋肉を緊張させたり心拍数や呼吸を早めたりするホルモンが分泌されます。
さらに脳と腸は密接に関係しているので、不安を感じると胃腸の調子が悪くなり胃腸の不調が不安を引き起こすこともあります。
実際に過敏性腸症候群の約4割が不安を抱えている一方、そうでない人はその割合が1割未満だった、という調査結果が示されているようです。

不安は単なる心配性ではない

不安をただの心配性と片付けてしまうと、その本質を見失い、適切な対処を遅らせてしまう可能性があります。
心配とは、仕事や人間関係、健康など現実的で具体的な問題に結びついていることがほとんどです。
しかし、不安は明確な理由がないまま、強い恐怖や苦痛を引き起こすことがあります。

また、心配が一時的であるのに対して、不安は慢性的に続くことが多いのも特徴です。
例えば、上司との会話や面談が終わった後、あの発言は間違っていたのではないかと過度に気にしてしまうことです。
このような思考が続くと不安がエスカレートして眠れなくなったり、物事に集中できなくなったりして日常生活や仕事に深刻な影響を及ぼしてしまいます。
さらには、動悸、発汗、過呼吸など、身体的な症状が出ることもあります。

過度に不安を抱えることは物事を慎重に判断するのに役立つ場合もあるかと思いますが、それが解消されても不安が消えずに日常生活に支障をきたしてしまうのであれば問題になります。
このような状態が長期間続くのであれば、専門家のサポートを受けてみることを検討してみましょう。

不安を引き起こす状況を避けても解決しない

頭を抱えて落ち込む女性

不安を感じる場面を避けようとするのは自然な反応です。

ですが、こうした行動が必ずしも不安を軽減するわけではありません。
むしろ、不安を避け続けることでかえって心が休まらず、日常生活に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。

不安を克服する効果的な方法としては、曝露療法が広く知られています。
これは、不安を引き起こす状況と少しずつ向き合い「恐怖の対象を乗り越えられるもの」として認識させます。

例えば、飛行機恐怖症であれば仮想現実を使ったシミュレーションで仮想飛行を体験する、などです。

不安の原因と向き合うことで、自分の感情を受け入れ、冷静に対処する力を養うことができます。
さらに不安を感じた時にその感情を認めることも重要です。
自分を観察することで、その感情を受け入れる為の心の準備が整います。
不安を否定するのではなく、受け止める為の助けとなります。
その結果、次に何をすべきかが冷静に考えられるようになります。

ビジネスの場面では、不安を避け続けることが信頼や成果に直接影響を及ぼす場合があります。
会議で意見を言わない、重要なタスクを後回しにする、対人関係や業務上課題から距離を置く、といった行動は一時的な安心感を得ることができるかもしれません。

しかし、これらを繰り返すことで問題が深刻化すると結果的に評価やキャリアチャンスを逃すことになります。
このような状況では、まず自分の不安を認めた上で可能な範囲で挑戦する姿勢が大切です。
この積み重ねが、長期的な成長や成果に繋がっていきます。

不安は誰でも感じる自然な感情です。
ですが、適切な方法で向き合えばコントロールすることもできます。
不安を避けるのではなく、少しずつ行動を起こしていくことが大切です。

内気とは違う社会不安障害

落ち込んでいる女性

内気は性格の一つとしてよく見られる特徴ですが、社会不安障害(SAD)は医学的に定義された不安障害です。
社会不安障害の人は、周囲から視線を向けられたり評価されたりすることに対する強い恐怖心を抱きます。
それが原因で長期間にわたって社会的場面を避けるようになります。

また、日常生活の中でほとんどの人が特に意識をせずに行えるような行動が大きな壁になることもあります。
具体的には、電話や人前での発現、さらにレジで店員と話すことを過度に恐れて買い物自体を避ける、などです。
これに加えて身体がこわばったり頭が真っ白になったりするなどの恐怖反応が出ることがあります。
このような症状は、生活や仕事に深刻な影響を与えることも少なくありませんが、社会不安障害は適切な治療によって改善させることもできます。

例えば、認知行動療法を受けた約7割の人が症状の改善を実感しています。
認知行動療法は、不安の元となる思考パターンを見直してより健全な考え方を身に付ける行動療法になります。

不安は気の持ちようで解決すると考える人も多いかもしれませんが、不安は単なる気持ちの問題だけでなく、心と身体に影響を及ぼしている状態なので適切なケアが必要になります。

不安を軽減して健全な生活を送るには認知行動療法だけでなく、運動や日記を書く、リラクゼーション法なども役立ちます。
運動は、ストレスを減少させ、気分を安定させる効果があります。
日記で感情を言葉にすることで不安の原因を整理し冷静に状況を振り返ることができます。
リラクゼーション法である深呼吸やマインドフルネス瞑想、ヨガなどは心を落ち着かせ思考を整理する助けになります。

不安は、治療を通じて不安を軽減して社会生活や仕事における自信を取り戻すことが十分に可能なので一歩ずつ取り組んでいくことが大切です。