「能力主義」という名の残酷な階級社会。私たちが信じる「努力」の落とし穴
「努力すれば報われる」「実力がある人が評価されるべきだ」
現代社会において、これらは疑いようのない「正義」とされているのではないでしょうか。
しかし、このメリトクラシー(能力主義)という言葉の生みの親であるイギリスの社会学者マイケル・ヤングは、今から60年以上も前に、このシステムがもたらす悲劇的なディストピアを予言していました。
私たちが信じてやまない「公平な評価」の裏側に潜む、残酷な真実があります。
「努力すれば報われる」という神話の崩壊
かつての階級社会(門閥制度)では、生まれた家柄で人生が決まりました。
リベラルな現代社会は、人種や性別といった「本人が選べない属性」による差別を禁じ、代わりに「知能と努力(メリット)」による評価を取り入れました。
ですが、ここには無視できない2つの大きな落とし穴があります。
遺伝という逃れられない現実
科学的事実として、知能の遺伝率は年齢とともに上昇し、思春期を過ぎる頃には70%以上に達すると言われています。
「知能」という、本人の努力だけではコントロールしきれない要素が成功の鍵を握っているのです。
「自業自得」という逃げ場のない呪い
能力主義の最も残酷な点は、格差を正当化してしまうことです。
「成功したのは自分の能力のおかげだ」という考えは、裏を返せば「失敗したのは本人の能力不足(自業自得)だ」という結論を導き出します。
これが、現代社会に蔓延する逃げ場のない自己責任論の正体です。
2034年、知能によって分断される未来予測
マイケル・ヤングは、2034年の社会が「知能」によって完全に二分されると予測しました。
- エリート層の固定化
高学歴同士の結婚(アソーティブ・メイティング)により、高い知能が次世代へと濃縮・固定化されていきます。 - 下層階級の絶望
「知能の低い者」として科学的に選別され、社会的な自尊心を根本から奪われます。
かつての身分制度では、「運が悪かった」と諦めることができました。
しかし、メリトクラシーにおいては「お前が劣っているのは事実だ」という科学的な烙印が押されることになります。
「絶望死」の広がりとAI時代の新たな問い
現代のアメリカなどでは、低学歴層を中心に「絶望死(薬物や自死)」が増加しています。
これは単なる経済的困窮だけではなく、心の格差が原因です。
成功者の傲慢と敗北者の屈辱
メリトクラシーは、勝者には「自分一人の力で掴み取った」という傲慢さを植え付け、敗者には「自分には価値がない」という屈辱を与えます。
AI(人工知能)が揺るがす「人間の価値」
これまで「知能」は最強の武器でしたが、今やAIがその領域を侵食しつつあります。
将来、機械が多くの知的労働を担うようになったとき、私たちは知能以外に「何をもって人の価値を測るべき」なのでしょうか。
まとめ:私たちが目指すべき社会とは?
「能力で評価されること」は一見公平ですが、実は非常に残酷な側面を持っています。
知能格差がそのまま「人間の尊厳の格差」に直結してしまっているのが現代の姿です。
私たちは今、教育のあり方や「成功」の定義をもう一度問い直すべき時期に来ているのかもしれません。
参考書籍⇒無理ゲー社会


