健康

高齢者が筋肉をつける方法|年齢に負けない身体を作ろう

はじめに

年を重ねるにつれて、筋肉量が減少していくのは自然なことです。
しかし、適切な方法で筋肉を維持・増強することは、QOL(生活の質)の向上だけでなく、様々な病気のリスクを軽減するにも非常に重要です。
この記事では、高齢の方が安全かつ効果的に筋肉をつける為の具体的な方法を解説ていきます。

なぜ高齢者に筋肉トレーニングが必要なのか?サルコペニアと健康寿命

「サルコペニア」という言葉をご存知でしょうか。
これは、加齢に伴う筋肉量の減少と筋力低下のことで、それによって転倒リスクの増加、活動能力の低下、ひいては要介護状態に繋がる能性が高い状態になります。
厚生労働省の調査でも、高齢者の約半数がサルコペニアに該当すると言われています。

筋肉は、単に身体を動かすだけでなく、基礎代謝量の維持、血糖値のコントロール、免疫機能の維持など、多岐にわたる生命活動を支えています。
筋肉量を増やすことで、基礎代謝量が向上して太りにくい体質になるだけでなく、糖尿病や骨粗しょう症などの生活習慣病の予防にも繋がります。
さらに、バランス能力が向上し、転倒による骨折のリスクを減らすことができるので、健康寿命を延ばす上で不可欠な要素と言えます。

高齢者でも安全にできる筋力トレーニングの種類と実践法

スクワットをする高齢者

「筋トレ」と聞くと、重いバーベルを想像されるかもしれませんが、高齢の方には、ご自身の体力レベルに合わせた安全なトレーニングが重要です。
ここでは、自宅で手軽にできるものから、少し負荷をかけたものまで、具体的なトレーニング方法を一例としてご紹介します。

自重トレーニング:いつでもどこでも手軽に

自重トレーニングは、自分の体重を負荷として行うので、関節への負担が少なく、初心者の方でも安心して始められます。

  • スクワット(椅子を使ったスクワット)
    椅子に座るように腰を落とし、ゆっくり立ち上がります。
    膝がつま先よりも前に出ないように注意し、太ももの前側に効かせましょう。
    最初は10回×2セットから始め、慣れてきたら回数やセット数を増やしていきます。
  • かかと上げ運動
    壁や椅子の背もたれに手をつき、かかとをゆっくり上げ下げします。
    ふくらはぎの筋肉を意識し、バランス能力も同時に鍛えられます。
    転倒予防にも効果的です。
  • 腕立て伏せ(壁を使った腕立て伏せ)
    壁に手をつき、身体をゆっくりと壁に近づけ、また押し戻します。
    胸と二の腕の筋肉を意識しましょう。
    慣れてきたら、机や台に手をついて行うと負荷が上がります。
  • 膝つき腕立て伏せ
    膝をついて行う腕立て伏せは、通常の腕立て伏せよりも負荷が軽いので、筋力に自信がない方でも取り組みやすいです。

チューブトレーニング:低負荷で全身運動

セラバンドやゴムチューブなどのトレーニングチューブは、低負荷で筋肉に刺激を与えることができるので、体力が低下している高齢の方にもおススメです。

  • チューブを使ったレッグカール
    足首にチューブを引っ掛け、椅子に座った状態で片足を後ろに引くように膝を曲げます。
    太ももの裏側に効かせましょう。
  • チューブを使ったアームカール
    チューブの中央を踏み、両手でチューブの両端を持ち、ゆっくりと肘を曲げてチューブを引き上げます。
    力こぶを意識します。
  • チューブを使ったショルダープレス
    チューブを背中に回し、両手でチューブの両端を持ち、ゆっくりと腕を真上に押し上げます。
    肩の筋肉を鍛えられます。

ウォーキングと階段昇降:日常生活に取り入れる

ウォーキングや階段昇降は、特別な器具なしで始められる有酸素運動でありながら、下半身の筋肉をある程度鍛えることもできます。

  • ウォーキング
    毎日20~30分、無理のない範囲で継続しましょう。
    少し息が上がる程度の速さが理想的です。
    姿勢を意識し、大股で歩くことを心がけると、より効果的です。
  • 階段昇降
    エレベーターやエスカレーターを使わず、積極的に階段を利用しましょう。
    一段飛ばしで上るなど、負荷を上げてみるのも良いです。

筋肉を作る食事術:タンパク質摂取の重要性

ハムソーセージ盛り合わせ

筋肉をつけるには、トレーニングだけでなく、食事も非常に重要です。
特に「タンパク質」は、筋肉の材料になるので意識的に摂取する必要があります。

1日に必要なタンパク質量と摂取タイミング

高齢者の場合、体重1kgあたり1.0g~1.2gのタンパク質を目安に摂取することが推奨されています。
例えば、体重60kgの方であれば、1日あたり60g~72gのタンパク質が必要です。

  • 毎食に均等に摂取
    一度に大量に摂取するよりも、朝食、昼食、夕食に分けて均等に摂取する方が、効率的に筋肉の合成を促せます。
  • 運動後のゴールデンタイム
    運動後30分~1時間以内は、筋肉の合成が最も活発になる「ゴールデンタイム」と呼ばれています。
    この時間帯にタンパク質を摂取することで、筋肉の回復と成長を最大限に促進できます。
    プロテインドリンクや乳製品なども手軽で良いです。

積極的に摂りたいタンパク質源

  • 肉類
    鶏むね肉、ささみ、牛肉の赤身、豚肉のヒレ肉など。脂身の少ない部位を選ぶとカロリー過多を防げます。
  • 魚介類
    マグロ、カツオ、鮭、サバ、イワシなど。青魚はn-3系脂肪酸のDHA・EPAも豊富です。

  • 卵は栄養価が高く、手軽にタンパク質を摂取できます。
    ビタミンやミネラルなども豊富ですが、ビタミンCと食物繊維は他の食材から摂取しましょう。
  • 乳製品
    牛乳、ヨーグルト、チーズなど。カルシウムも豊富です。
  • 大豆製品
    豆腐、納豆、味噌、豆乳など。女性に嬉しいイソフラボンが含まれています。

継続する為の工夫と注意点:無理なく楽しく続けよう

女性ストレッチ

筋肉トレーニングは、短期間で劇的な変化を期待するものではありません。
継続こそが力となります。

専門家への相談とメディカルチェック

運動を始める前には、かかりつけ医に相談し、健康状態を確認することが重要です。
特に、持病をお持ちの方や、関節などに不安がある方は、医師や理学療法士、トレーナーなどの専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
適切な運動メニューや負荷について指導を受けることで、安全かつ効果的にトレーニングを進めることができます。

記録と目標設定でモチベーション維持

日々のトレーニング内容や体の変化を記録することで、自分の成長を実感でき、モチベーション維持に繋がると思います。
例えば、「スクワットが〇回できるようになった」「体重が〇kg増えた(筋肉量が増えた証拠)」「階段を息切れせずに上れるようになった」など、具体的な目標を設定し、達成していく喜びを味わうと良いかとは思います。

休息と睡眠の重要性

筋肉は、トレーニング中にダメージを受けて、休息中に修復・成長します。
十分な休息と質の良い睡眠は、筋肉の回復と成長に不可欠です。
無理なトレーニングは避け、週に2~3回のトレーニングと、十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。

まとめ

高齢になってからでも、筋肉をつけることは十分に可能です。
年齢は関係ありません。
適切なトレーニング、バランスの取れた食事、そして十分な休息。これらを継続することで、筋力低下を防ぎ、健康寿命を延ばし、より活動的で充実した日々を送ることができるようになります。
今日からできることから少しずつ始めてみませんか。
無理なく楽しく続けることが成功の鍵かとは思います。