健康

スマホの使い過ぎで全身の疼痛や不安障害などが起こる|ぼんやりする時間が大切

スマホは危険な依存性物質である

あなたは1日にどのくらいスマホを使っていますか。
移動中の電車内や休憩時、待ち時間などちょっとした空き時間にスマホを見ている人は多いかと思います。
今では、スマホは生活に欠かせない物になっていますが、スマホを使い続けることで健康被害が起こることも分かってきています。
長く続く体調不良は、もしかしたらスマホの使い過ぎが原因かもしれません。

スマホを絶え間なく使い続けることで脳は疲弊してしまいます。
脳過労は仕事のパフォーマンを低下させ健康にも悪影響を及ぼしてしまうのです。
主な脳内物質としては、集中力を高めるノルアドレナリン、快楽物質といわれるドーパミン、そのバランスを調節するセロトニン、覚醒作用を持つオレキシンなどがあります。
スマホを使い過ぎることでこのバランスが崩れてしまい脳過労の状態になってしまいます。

では、なぜ私たちはスマホを使い過ぎてしまうのでしょうか。

それは、スマホを通して新しい情報に触れることでドーパミンが分泌されて、手っ取り早く快楽を得ることができるからです。
ドーパミンは、特定の行動に対してその報酬として気持ちよさを与えます。
私たちは、それを味わいたい為にその行動を繰り返すようになります。
それが行き過ぎてしまうとやめたくてもやめられなくなる依存症になってしまいます。
医療の現場では、スマホは酒やタバコ、薬物などと同じように依存症を引き起こす危険な依存性物質として認定されています。

スマホ依存症になってしまうとスマホをやらないとドーパミンが出ないようになっていきます。
本当はもっと大事なことを考えないといけないはずなのに我を忘れてスマホをやるような状態になります。

スマホによって体調不良になる

悩むイメージ

スマホを使い過ぎてしまうと脳過労になってしまいます。
そうなると全身の疼痛が出てきます。
スマホによって脳が疲れてしまうと身体の様々な部位に原因不明の痛みが出てくることがあります。

では、なぜ脳が疲れ過ぎてしまうと痛みを感じるようになるのでしょうか。

痛みは、身体の末梢部分から電気信号となって脊髄の後角という部分に伝わり、脊髄を経て脳へと伝わります。
それと同時に脳内では、ノルアドレナリンが分泌され過剰な痛みに抑制をかける信号が後角に送られます。
この仕組みによって多少の痛みがあっても感じずに済むようになっています。
しかし、脳過労によってノルアドレナリンが枯渇すると痛みの抑制が利かなくなり慢性疼痛のような原因不明の痛みに敏感になります。

そして、不眠症も招きます。
スマホを使い続けるとオレキシンが過剰に分泌されます。
オレキシンは、動物が自分の身を守る為に不可欠な覚醒作用をもたらす物質になります。
スマホから発せられる光や動画、不安を煽る情報などがオレキシンの分泌を促します。

一方で睡眠作用をもたらす脳内物質のメラトニンは、外部環境が明るいと十分に分泌されません。
これらの作用から夜にスマホを見過ぎてしまうと寝付きにくい、眠りが浅い、朝早く目覚めてしまうなどの症状が出てきます。

スマホ認知症

近年ではスマホ認知症と言われる症状が問題になっています。

スマホ認知症とは、スマホを使い過ぎで脳過労になってしまうと人や物の名前が出てこなかったり、うっかりミスが増えたりなど生活に支障が出る状態のことを言います。

スマホ認知症は、老人性認知症とよく似ています。
アルツハイマー型認知症に代表される認知症は、病気によって不可逆的な脳機能の低下が起こっている状態です。
それに対してスマホ認知症は、病気ではなく脳過労の状態なので、生活習慣を改善して疲労を取り除けば認知機能を回復させることができます。

ですが、スマホ認知症になっている中高年世代は、認知症予備軍と言っても良いかもしれません。
スマホ認知症と思われる人の脳機能の状態を見るとうつ病の人とよく似ているからです。
40~50代でうつ病が2年以上続くと、老後にアルツハイマー型認知症になる可能性が2倍以上に高まってしまうというデータもあります。
これは、スマホ認知症の人にも同様のリスクがあると言えます。

また、スマホ依存度が高い人は人と接したり身体を動かしたりすることが面倒になり、栄養バランスも気にしなくなる傾向があります。
そのような生活習慣を送っていると認知症のリスクも高まってしまうと思われます。

スマホによって脳がゴミ屋敷に

脳伝達イメージ

では、脳過労の状態から脳を回復させるにはどうすればいいのでしょうか。

脳の情報処理は、3つのステップで成り立っています。
まずは、見聞きしたり体験したりしたことを脳にインプットする「入力」です。
次が入力した情報の中から大切な内容を保存して不必要な内容は捨てる「整理・整頓」です。
最後が適切な情報をアウトプットする「出力」になります。
このうち、人間を人間たらしめているのが「整理・整頓」です。
情報の入出力は人間以外の他の動物にもできますが、整理・整頓は人間にしかできません。
取り入れた情報を元にアイデアを生み出すのもここで行われます。

整理・整頓は、情報の入力を遮断することによって行われます。
なので、スマホをずっと使っていると情報が入力されるばかりで整理・整頓ができない状態になります。

その結果、脳内は無駄な情報のゴミ屋敷になってしまいます。
ゴミ屋敷になると情報を取り出しにくくなりパフォーマンが低下して脳過労の状態になります。
この状態を改善させるには、情報の整理・整頓が必要です。
それを促す働きをするのが、前頭葉内側部と後部帯状回をハブとした広域の回路であるデフォルトモード・ネットワークです。

デフォルトモード・ネットワークは、脳の一部分だけを起動させて待機している状態です。
つまり脳の省エネモードになるので、脳の疲れを軽減してくれます。
この間に入力された情報が整理・整頓されていき、それと同時に長期的視点に立った考えを促す働きもあります。

では、デフォルトモード・ネットワークが働くのはどんな時なのでしょうか。

それは、外からの情報を遮断してぼんやりしている時になります。
この時にセロトニンが分泌されて脳内物質のバランスが整い、情報の整理・整頓が行われます。
散歩中や入浴中にアイデアが浮かびやすいのもデフォルトモード・ネットワークの働きによるものです。
アルツハイマー型認知症で最初に機能が低下するのは、デフォルトモード・ネットワークであることが分かっています。
将来の認知症リスクを下げる為にもデフォルトモード・ネットワークを起動させる時間が大切です。

散歩やサイクリングなどでセロトニンが分泌、マルチタスクはNG

脳過労を回復させるには、ぼんやりする時間を作ることが大切です。
ですが、ただぼんやりするというのはなかなか難しいものでもあります。
ちょっとした空き時間があるとついスマホを触ってしまうのではないでしょうか。

それでおススメなのが一定のリズムで身体を動かすリズム運動です。
散歩や水泳、サイクリングなどの単調な動作を繰り返すと脳をリラックスさせぼんやりした状態を作ることができ、セロトニンの分泌も促してくれます。
始めて5分程度でセロトニンの分泌が促進され20~30分ほどでピークになります。
1回15分~30分程度の運動を週2~3回行うと良いかと思います。
座禅を組んで呼吸を意識するのも一種のリズム運動と言えます。

また、脳過労を避けるには、仕事の仕方にも気を付ける必要があります。
忙しいビジネスパーソンはマルチタスクをこなそうとしますが、これは脳過労の原因になります。
本来、私たちの脳はシングルタスク、一つの作業しかできないように設計されているのです。
なので複数の作業を同時に行うことは脳に過度な負担をかけ情報処理能力を低下させてしまうのです。
マルチタスクができているように見える人も実際は、複数の作業を同時にしているのではなく、一つずつ順番に手際よく処理をしているだけなのです。
脳への負担を減らすには、作業の優先順位をつけて一つ一つ集中して取り組むようにすると良いかと思います。

脳過労を防ぐには、スマホを使わないことが効果的ですが、現代社会においてスマホを使わないで生活するのはあまり現実的ではありません。
問題は明確な目的もないのにスマホをだらだらと使い続けることです。
必要がない時は、スマホを見ないでぼんやりする時間を作り、脳を休ませるほうが良いでしょう。

参考雑誌→プレジデント2025年4/4号 スマホが危ない