脳を活性化させて認知機能の低下を防ごう!効果的な5つの取り組み
私たちの脳は成人以降でも成長をしていきます。
ですが、加齢に伴って物忘れの頻度が増えたり運動能力が衰えたりなどの老化現象を避けることはできません。
なぜなら加齢によって神経細胞が減少し脳の容積が減少してしまうからです。
脳の容積が減少することを脳萎縮と言いますが、脳委縮は20歳頃から始まるとされています。
もちろん個人差はありますが、70歳代では20歳の90~95%ほどになり、90歳以降では80%以下になると言われています。
加齢による脳の老化を避けることはできませんが、刺激を与えることで老化の進行を遅らせて認知機能の低下を防ぐことは可能です。
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。
脳を活性化させる生活習慣についてご紹介します。
運動でBONFが分泌し脳が活性化する

運動をすることで脳を活性化させることができるとされています。
これには、BONFが関係していると考えられています。
BONFとは、脳由来神経栄養因子とも呼ばれ細胞の生命維持や成長に関わるタンパク質の総称です。
加齢によって低下する神経細胞の保護機能やシナプスの生まれ変わりを助ける働きをしています。
なので、脳の活性化に関わる重要な物質とも言われています。
BONFは、特にウォーキングやランニングなどの有酸素運動で分泌が促進されることが分かっています。
有酸素運動をすることで筋肉からイリシンというホルモンの分泌が高まり、イリシンが脳に運ばれるとBONFの分泌が促されると考えられています。
BONFは、主に大脳皮質と海馬に多く含まれているので特にこれらの部位が活性化されます。
実際に有酸素運動を行うことで大脳皮質や海馬の脳委縮が改善されただけでなく容積が増えたという報告もあります。
運動強度は、高齢者ではウォーキングなど軽い強度の運動で、比較的若い年代の場合はハイキングや水泳など中程度の運動が効果的とされているようです。
有酸素運動だけではく、筋力トレーニングなどの無酸素運動も脳の活性化に繋がります。
筋力トレーニングは海馬も活性化させるといわれていますが、特に前頭葉の機能を活性化させると言われています。
前頭葉は、計画を立てて行動をしたり、衝動的な感情を抑えたりしてくれ、60代以降で衰えやすいとされています。
筋力トレーニングによって神経伝達物質であるドーパミンが作られ、そのドーパミンが前頭葉を刺激する為とされています。
強度に関しては、それほど強い強度でなくても効果があるとされているので、自分の筋力に合わせた無理のない強度で行うようにしましょう。
BONFの分泌には、有酸素運動の方が適しているとされますが、筋力トレーニングも脳を活性化させる効果があるので組み合わせて行うようにすると良いでしょう。
運動習慣を身に付けることは、脳の老化を促進させるストレスの緩和や生活習慣病の予防になります。
脳の老化は20歳頃から始まっているので若い時から運動習慣を身に付けておけると良いかと思います。
コミュニケーションで脳が活性化する

人と話すことは脳の広範囲を活性化させてくれます。
私たちは普段何気なくコミュニケーションをとっていますが、コミュニケーションは脳の広範囲が連携をして行っているので、とても複雑で高度な行動になります。
相手が発した言葉は側頭葉に伝わり、聴覚情報の処理が行われます。
そして、相手が話している表情やジェスチャーなどの視覚情報の処理は後頭葉で行われます。
この時、脳に入ってくる情報は相手の発した言葉や様子だけでなく、周囲の風景や他の人の話声なども含まれます。
コミュニケーションを円滑に進めるには、相手が発した言葉や様子に注目する必要があり、それらの情報の選択を担うのは視床で必要な情報を大脳皮質に伝えます。
さらに相手の言葉の意味を側頭葉で理解し、それを踏まえて自分が発する言葉を前頭葉で考えます。
そして、言葉を話す為には、声帯や口を動かす必要があります。
それを担うのは前頭葉や小脳になります。
このように非常に複雑なので、健康であっても言い間違いや勘違いが起こったり、長話をした時に疲労を感じることが起こります。
コミュニケーションをしている時は、この一連の情報伝達を瞬時に何度も行っているのです。
コミュニケーションはこのように脳の広範囲に刺激を与えて活性化させるのに効果的なのです。
人と話さなくなるとボケやすくなると聞いたことがあるかと思いますが、これは会話による一連の刺激が減るので脳機能が衰えやすくなるからです。
脳の活性化にはコミュニケーションが適しているということを忘れないようにしましょう。
学習で脳が活性化する

学習の意欲になっているのが知的好奇心です。
知的好奇心とは、新しい知識や情報を求めることや、それらを理解しようとすることです。
知的好奇心を持つことでシナプスの生まれ変わりを促進してくれます。
それだけでなく既存のシナプスが強化されます。
新しい知識を理解する為に前頭葉や側頭葉が働くのでそれらを中心に活性化されます。
また、新しいことを知った時や今まで分からなかったことを理解できるようになると私たちは面白いと感じます。
これは報酬系と言われる神経伝達物質であるドーパミンが分泌されるからです。
ドーパミンは意欲に関わることから、分泌されるともっと知りたいと思うようになります。
するとさらに知的好奇心が湧いて脳の活性化に繋がります。
脳を活性化させるのにおススメなのが学んだことを伝えるアウトプットです。
得た情報を相手にどう伝えるかを考えることで脳の広範囲を活性化させることができます。
話すことで伝えることも良いのですが、ブログなどに自分なりに文字にして文章にすることもアウトプットになります。
そして、自分が伝えたことで相手に認められたり、達成感を感じたりすることでもドーパミンが分泌されます。
それによってさらに学びたい、伝えたいという意欲が生まれて知的好奇心も高まってより脳が活性化されます。
大人になってから学習を怠らないようにしたいものです。
脳の為に栄養素をしっかりと摂ろう
脳の主なエネルギー源はブドウ糖ですが、脳の主成分は脂質なので、認知機能の維持には脂質が不可欠になります。
特に脳に良いとされる脂質はn-3系の脂肪酸と言われています。
その中でも有名なのがDHA、EPAですが、脳の活性化に関わっているのはDHAのみと考えられています。
脳には、血液脳関門という毛細血管でできたバリアがあります。
大切な脳を守る為に脳内への物質の出入りを制限しています。
DHAとEPAは、化学構造が異なるので、DHAのみ血液脳関門を通過することができます。
このことからDHAが脳の活性化に関わっているとされています。
DHAは、神経細胞膜に含まれている脂質と結合をすることで神経細胞膜を安定化させることができるとされています。
そして、神経細胞の機能の維持やシナプスの生まれ変わりの促進に関わっていると言われています。
実際に魚の摂取頻度が多い、または血中の不飽和脂肪酸の量が多い人は、少ない人と比較して脳委縮が少ないという報告があります。
しかし、DHAを摂れば摂るほど脳の老化を防ぐわけではありません。
もともと不足していた人が十分に摂取することで認知機能の低下の軽減に繋がったという報告が多くあります。
DHAが不足しないような食生活を送ることが大切かと思います。
青魚に多く含まれていますので、肉に偏った食生活ではなく魚を選ぶようにしてみましょう。
脳を休ませる為に十分な睡眠を取ろう

脳を活性化させる為には、大前提として脳が健康でないといけません。
そこで欠かせないのが脳を休ませる為の睡眠です。
私たちは眠っている時、浅い眠りであるレム睡眠と深い眠りであるノンレム睡眠を繰り返しています。
レム睡眠中は、主に身体が休む時間で脳の一部は働いています。
この時に大脳や海馬は起きている時と同等に働いていて、記憶の整理をしています。
脳に蓄えておくことができる情報の上限があるので、不要な情報を捨てて、記憶の定着させる為の神経回路が作られていきます。
深い眠りであるノンレム睡眠では、脳のほとんどが休んでいる時間帯です。
この時、神経細胞の修復やシナプスの再生が行われています。
日中に刺激を与えた部分のシナプスのネットワークの強化なども行われています。
なので、脳をしっかりと休ませる為にはノンレム睡眠が重要になります。
必要な睡眠時間は個人差があり遺伝子で決まっているので一概には言えませんが、6時間半~7時間睡眠が最も認知症になりづらいとされています。
睡眠不足の人は、認知症のリスクが2倍高いといわれているので、自分にとって最適な睡眠時間を確保することは脳の健康に不可欠です。
質の良い睡眠を取るには、日中に活動をして交感神経を優位にさせて、夜はゆっくりして副交感神経を優位にさせることが大切です。
私たちは一旦上がった身体の中心温度である深部体温が下がる時に眠くなるので、就寝時間の1~2時間前に入浴することや寝る前に軽くストレッチをするのもおススメです。
部屋を暗くしてスマホやPCなどの画面を見ないようにして寝る準備をすることも大切です。