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ガン検査はむやみに受けるべきではない|負担を減らすために適切な判断が重要

大腸ガン検査を受けても意味なし

厚労省は、大腸ガン、胃ガン、肺ガン、乳ガン、子宮頸ガンの検診を推奨しています。
最近話題なのが、線虫という小さな虫に人間の尿の臭いをかがせて、何種類ものガンを見分ける線虫ガン検査です。
ですが、検査精度がかなり低いということもあり効果に期待は持てないようです。

厚労省が推奨しているガン検査には根拠となるエビデンスがありますが、それ以外のガン検査が有効だというエビデンスはありません。
極端なことを言えば、無駄な検査があるということなのです。

世界的に検査の無駄が問題視されているのが、甲状腺ガン検診です。
韓国では、1990年代以降に検査が急増して2011年に甲状腺ガンと診断された人は、93年に比べて15倍に増えました。
しかし、甲状腺ガンで亡くなった人は、変わらなく増えも減りもしませんでした。
これは、検査が無駄だったということを意味しているのではないでしょうか。

医師は、検査による害を知っているので、検査をむやみにしません。
それなのに無駄な検査をしたばかりに治療をしなくても問題ないガンが見つかり、無駄な手術や無駄な抗ガン剤を投与したりして合併症や薬の副作用で亡くなってしまったりしたら検査の意味がありません。
そもそも何の症状もない人にガンが隠れている可能性は極めて低いです。

また、早期治療が有効なガンでちょうど良いタイミングで見つけることができる可能性はさらに低くなります。
身体に害をもたらすガンを見つけても、凶悪過ぎて治療ができないガンを見つけても無駄になる可能性が高いと言えるのです。
検診の問題は、無駄が多過ぎてデメリットがメリットを上回ってしまうことです。
病気で困っていない人が推奨されている検査を受けるのはあまりおススメしません。

そんな中でも有効な検診として代表的なのが大腸ガン検診です。
とは言っても検査を受けても99%以上の人には影響がないというのも事実なのです。

内視鏡で大腸ガンを探す検診を一度だけ行ったグループとそうでないグループでは、どのくらい大腸ガンによる死亡が減るかを調査したデータがあります。
検査をしなかったグループでは、11万人中996人で0.9%が大腸ガンで亡くなりました。
検査を行ったグループでは、5万7000人中353人で0.6%です。
0.3%減ったことになりますが、残りの99.7%の人は検診を受けようが受けまいが関係がなかったことになります。
この差が大きいと感じるのか小さいと感じるのかは、個人の判断によるかと思います。

また、検診によって大腸ガンの死亡を0.3%防げたとしてもそれによって長生きできるかどうかは分かりません。
なぜならガンになるくらいの年齢になれば、脳卒中や心筋梗塞、肺炎のリスクも高まります。
このような死因も含めるとガン検診で長生きできるかどうかのエビデンスはないのです。

非喫煙者なら肺ガン検査は意味なし

肺ガン検診に関して厚労省は、レントゲンと喀痰検査を推奨しています。
アメリカの予防医学作業部会は、ヘビースモーカーを対象に絞って低線量CT検査を推奨しています。
高リスクの人に絞るのは理解することができます。

タバコは肺ガンの唯一の原因ではありませんが、肺ガンの発生率が高くなります。
非喫煙者に比べて喫煙者の肺ガンリスクは、6~10倍になるというデータもあります。
それだけ高リスクなら検診のメリットもありそうなのですが、感度の低いレントゲンの検診というのはデータからも支持できません。

喫煙歴がない、受動喫煙もしていない人は、肺ガン検診を受ける必要はないと思われます。

乳ガン検査は日本人に効果が小さい

白衣を着ている男性困る

乳ガンは女性の死因の上位に入ります。
乳ガン検診を誰に行うべきかで世界的な論争になっているようです。
1980年代くらいまでのデータを見ると、乳ガン検診によって死亡者は多少減っているようです。
ただ乳ガン検診を反対している医師は次のように主張しています。

「80年代と現代では時代が違う。手術の技術や薬の開発も進んでいるので乳ガンの死亡率は下がっている。なので検査は必要ない。」と。

また、日本人特有の事情もあります。
欧米では、日本よりも乳ガンで死亡する割合が高いです。
このような影響でマンモグラフィーの研究のほとんどが欧米で行われています。
日本とアメリカを比較すると人口10万人あたりの乳ガンによると死亡者数は倍近くの差があります。
このようなことから日本で乳ガン検査の効果はかなり小さくなるのではないでしょうか。

一般的に検診は、異変の見逃しをなくせるように感度の高い方法が選ばれます。
マンモグラフィーもそうです。
見つかるのは悪性の乳ガンだけではありません。
放っておいても悪影響がない良性の繊維腫なども検知します。

日本では、40歳くらいからマンモグラフィーを使った乳ガン検査を受ける人が多いですが、世界的には50代以降からが主流です。
20代、30代の症状がない女性が検査をする場合、社会的なリスクを考慮すべきでしょう。
もし、未婚の女性にガンがみつかったとしたら、治療する必要のないガンだったとしても結婚や就職などの選択に影響を及ぼすかもしれません。

胃ガンの検査も今では必要ない

日本人にとって大腸ガンと肺ガンに並んで死亡者が多いのが胃ガンです。
実は胃ガン検診の効果は、検証されていないにもかかわらず検査を受けることが定着してしまいました。
胃ガン検診によって死亡率がどの程度下がったのか、もしくは変わらないのか、検証を今からすることができません。

胃ガンは東アジアに集中しています。
原因は、ピロリ菌とされているのでピロリ菌感染率の高さかもしれません。
欧米ではそもそも胃ガンが少ないので検診をしようという発想もありません。
なので胃ガン検診の研究もほとんどないのです。

最近では、日本でもピロリ菌感染率が下がって胃ガンの死亡率も減る傾向にありますので、胃ガン検診もあまりおススメはできないかと思います。

子宮頸ガンは死亡者が少ない

データ分析イメージ

胃ガン検診と似た状況なのが、子宮頸ガン検診です。
欧米では、40年代から50年代に子宮頸ガン検診が普及しました。
日本における胃ガン検診同様で検診で死亡者が減るのかどうかを検証することができないほど定着をしてしまいました。

注目したいのが、日本が行っている細胞診検査による子宮頸ガン検診で死亡者は減らないというインドの研究報告です。
子宮の入り口の細胞から顕微鏡でガン細胞を見つけるのが細胞診検査です。
子宮頸ガンの原因として考えられているのが、ヒトパピローマウイルス(HPV)です。

インドの研究では、細胞診検査よりもこのウイルスに感染しているのかを調べる検査のほうが子宮頸ガンによる死亡を減らせると指摘しています。

ですが、研究はこの1件だけでしかもHPVの感染率が高いインドでの研究なので、日本でもウイルス検査が有効なのかは考える必要があるでしょう。

また、日本でHPVワクチンの積極的な勧奨が再開されています。
ワクチンで子宮頸ガンを減らせるのか、この議論もまだ決着がついていません。
そもそも日本では子宮頸ガンによる死亡者は少ないです。
子宮頸ガンは若い人にもあると言われていますが、人数で言えばごく少数です。
若い世代がガン検診を受けようと思うのであれば、注意してもらいたいことがあります。

ガン検診は、そのガンに罹患しやすい年齢の人を対象にしています。
症状のない若い世代にガンが隠れていることは、ゼロではありませんが極めて稀でほぼありません。
検査したからといって効率よくガンを発見できるとは限りません。
それなら優れた検査を受ければいい、複数の検査を受ければいいと思う人もいるかもしれません。

しかし、その考えの前提にあるのが「検査は悪いものではない」という思い込みです。
現実には、優れた検査は極めて稀なのです。
反対に余計なものを見つけてしまい、人生の足かせになってしまうこともあるのです。
むやみに検査を受けないほうがいいかと思います。

CTやMRIが優秀とは限らない

検診でCT検査やMRI検査をやるべきかについては、目的を決めないと良いのか悪いのかを決めることができません。
肺ガン検診で低酸素量CTを使うのはいいかもしれません。
ですが、他の病気についてはまったく別の議論が必要になります。
そもそも検査に優劣があるという考え方自体が問題なのです。
調べたい病気に対する感度と特異度を知ったうえで検査の特徴が目的にかなうように使い分けないといけません。

感度とは、疾患を持った人で陽性になる人の割合で、特異度は疾患を持たない人のうち陰性となる人の割合です。
ガン検査は、感度が高い検査が選ばれることが多いですが、ガンがなくても引っ掛かりやすく社会的リスクを伴う可能性があります。
そんなことを考えるのが面倒な人が自治体から案内がくる検査だけ受けて、何か症状が出た時だけ病院に行くのが良いかと思います。

参考雑誌⇒PRESIDENT 健康診断のウラ側