健康

加齢と肥満「代謝低下=太る」は間違いかもしれない|中年でも代謝率はさほど変わらない

中年太りは代謝の低下が原因はウソかも

一般的に中年になると太りやすくなり、お腹もぽっこりでてしまう人が多くるとされています。
その原因は、歳を重ねるごとに代謝が低下してしまうこととされていますが、これまで代謝率が年齢ごとにどう増減するかということはほとんど分かっていませんでした。

人間の1日の消費エネルギーは、基礎代謝量と食事誘発性熱産生、身体活動によるエネルギー消費量に分けることができます。
私たちが中年以降に落ちてくると思っている代謝とは基礎代謝量になります。
基礎代謝量は、簡単にいうと何もしなくても消費するエネルギー量になります。
これは、生きる為に必要最低限のエネルギーです。

では、この代謝率は年齢とともにどのように変化していくのでしょうか。

アメリカ・デューク大学の研究チームは、29カ国を対象に生後8日~95歳までの人、計6,421名の膨大なデータを収集し分析をしました。
1日の総エネルギー消費量を測定する為に、対象者にDLW法を用いています。

DLW法は、自然界に多く存在する水素と酸素とは少しだけ形が違う水素と酸素から作った二重標識水を飲んでもらい、それがどれだけ早く尿や呼気から排出されるかを調べることで身体が消費する1日のエネルギー量を測定する方法です。
これによって生きるのに必要なエネルギー量を測定することができます。
分析の結果、人の代謝率は乳幼児期にピークを迎え20代くらいまでに約3%低下することが分かりました。

10代は、成長期になりますが思春期の体重当たりの必要なカロリーの増加はなく、代謝の急上昇も見られませんでした。
一般的に成長期はたくさん食べて代謝するというようなイメージかと思いますが、実際は基礎代謝量の増加を見ることができなかったのです。
代謝率が最も大きく変化をするのは、生後1年間の間です。
1歳児は、大人と比べると体格比で約50%も多くエネルギーを消費しているようです。
20~50代では、代謝率が最も安定していて、ほぼ低下することなく横ばいになっています。

また、男性と女性の代謝率の変化についても実質的な違いはありませんでした。
このことから代謝の低下が中年太りの原因ではないと考えることできそうです。

代謝が明確に落ち始めるのは60歳以降

燃えるイメージ

代謝率の研究結果を分析すると代謝率が明確に低下してくるのが60歳以降です。
60代になると代謝は、1年ごとに0.7%ほど低下するようです。
それでも低下率は大きいわけではありませんが、90代に入ると1日に必要なエネルギー量は中年層に比べて平均26%少なくなっていました。
これは、筋肉量が少なくなるだけでなく、細胞の働きが鈍くなってくる為です。
ですが、実際に中年以降に体重が増えてくる傾向があるのは事実です。

では、なぜ中年になると太りだしてしまうのでしょうか。

これについては、まだ明確に分かっているわけではないようです。
原因として考えることができるのは年齢によって生活習慣が変わり、若い頃と比べると運動量が少なくなってくることがあります。
社会人になってから太ってしまった人も多いのではないでしょうか。
定期的に運動をする時間を作って普段から歩く、階段を使うなどして少しでも運動量を増やすことが肥満の防止に繋がるかと思います。
「基礎代謝量は、年齢を重ねても思ったほど低下しない」のですから。

水を飲むだけで肥満予防になる

水を注ぐ

水を飲むだけで肥満を予防することができるようです。
糖尿病治療の基本は、ご飯やパン、麺類などに多く含まれる糖分の摂取を控えることです。

しかし、これらの食べ物は簡単に食べることができ、その誘惑も至るところにあります。
なのでメタボリックシンドロームや肥満、糖尿病の予防は簡単ではないかと思います。

近年の研究では、水を飲んだ時に出るバゾプレッシンというホルモンを調整することが肥満の予防、治療に繋がる可能性があることが分かったそうです。
バゾプレッシンは抗利尿ホルモンと呼ばれ腎臓で働くことで本来、尿で排泄される水を再吸収して排尿量を減らし体内の適度な水分量を維持する働きがあります。
逆にバゾプレッシンが分泌されないと尿崩症といって薄い尿が限りなく出てしまい、脱水状態になってしまいます

コロラド大学のマウスを使った研究によると砂糖水を与えると脳のある部分が刺激されてバゾプレッシンが放出されるということを発見しました。
そして、バゾプレッシンは再吸収した体内の水分を脂肪として蓄積させ始めました。
以前から肥満の人や糖尿病の患者の体内ではバゾプレッシンの値が高いことが知られていたのですが、遺伝的にV1bを持たないマウスで同じことを試してみると脂肪の蓄積が起こりませんでした。

これらの結果から肥満や糖尿病にバゾプレッシンが関わっていることが明らかになったのです。
研究チームは「バゾプレッシンを出さないようにすれば、肥満や糖尿病の治療や予防になる」と考えました。
身体の水分を維持できていればバゾプレッシンの助けがなくてもいいので、水を飲めばバゾプレッシンの分泌を抑えられると考えたのです。
そこで研究チームは、マウスに水を十分に補給する水治療法を試してみたところ、メタボリックシンドロームから効果的にマウスを保護することができたのです。
この研究の結果、砂糖、特に果糖の摂取がバゾプレッシンを活性化させ体内の水分を貯蔵する為に脂肪生成を促進させるということが分かりました。
こうなると水分が再吸収される為、脱水症状が進んでバゾプレッシンはさらに活性化します。

また、バゾプレッシンには血管を収縮させ血圧を上げる作用もあるのでバゾプレッシンが出ている状態はまさにメタボリックシンドロームまっしぐらな状態だと言えます。
バゾプレッシンをブロックする最も良い方法は「水を飲むことである」と研究チームは結論づけています。
この研究は、マウスを使った結果なので人間でも同じようなことが起こるとは限らないのですが、同じようなことが起きる可能性もあります。

スウェーデンで行われた実験では、31人の健康な成人を対象に他の食事を一切変えずに飲み水だけを0.43ℓから1.35ℓに増やすだけで血糖値が下がり、バゾプレッシンの値を反映する数値が減少することが分かりました。
水分の十分な摂取は、バゾプレッシンを抑制しメタボリックシンドロームの予防と治療、両方に効果がある可能性があります。
肥満が気になる人は、水を多めに飲むように意識をしてみるといいかもしれません。

ですが、心不全のリスクがある人や腎臓が悪い人は水を飲み過ぎると体調が悪化してしまうことがあるのでかかりつけ医とよく相談をするようにしましょう。

参考雑誌⇒プレジデント2024年12/13号 間違いだらけの健康常識