トレーニング・フィットネス

筋肉は生命の危機に遭遇した時、とんでもない力を発揮する|火事場の馬鹿力

筋肉は100%の力が出ないようになっている

人体には約600もの筋肉があります。
ですが、それらの筋肉が100%働くと筋肉や腱、骨が壊れてしまうので100%の力が発揮できないように脳がリミッターをかけて制御しています。
これは、自分の身体を守る安全装置のようなものです。
自分では100%の力を発揮しているつもりでも生理的に100%ではありません。

筋活動は、大脳からの指令が脊髄を経由して筋に達します。
筋や腱にある感覚受容器が身体の安全を制御するセンサーで、身体の抑制機構が100%の力が出ないように制御しています。

人が発揮できる筋力は筋の横断面積から計算することができます。
最大筋力は筋横断面積(筋の太さ)に比例します。
通常発揮できる筋力は最大筋力の約70%程度と言われています。

火事場の馬鹿力はリミッターが外れている状態

脳伝達イメージ

筋肉は普段、100%の力が発揮できないように制御されています。
ですが、普段であれば制御されている安全装置も場合によっては外れることもあります。
これが、俗にいう火事場の馬鹿力です。
人は生命にかかわるような危険に遭遇した場合、普段では想像もつかない力を発揮することがあります。
このような状況では、脳の興奮レベルが高まってリミッターが外れます。

火事場の馬鹿力とは、筋肉のリミッターが外れた状態のことです。

通常の日常生活では約20%程度の筋力を使っていますが、スポーツ活動などでは70%位の筋力が使われるといわれています。
しかし、スポーツでも、ここ一番大きな力を必要とする場面では70%を超える大きな力を発揮できます。

筋力は大脳からの指令でα運動ニューロンの動員数と興奮レベルによってコントロールされています。
抑制機構はα運動ニューロンがすべて発揮しないように制御していて100%の力が出ないようにしていますが、70%を超える筋力発揮では抑制機構のリミッターが外れ、興奮レベルが高まり、α運動ニューロンの動員数が増えて最大筋力に近い筋力が発揮されます。

自己暗示やかけ声などで脳の興奮レベルを高めることもできます。
筋力の大きさは興奮レベルとα運動ニューロンの動員数で決まり、脳の興奮レベルとはインパルスの頻度になります。 

脳の覚醒レベルに関与するホルモン

ウエィトリフティングをする男性

脳の覚醒レベルをコントロールする因子にはノルアドレナリン、セロトニン、オレキシンなどがあります。
これらが分泌されて脳の覚醒レベルを高めることで通常以上の力を発揮することが可能となります。
この中でも「オレキシン」というホルモンは運動ニューロンの動員数と発火頻度の増加に大きくかかわっているといわれています。

アドレナリンとノルアドレナリンは同じようなホルモン、中には同じホルモンと思っている人もいるかもしれません。
スポーツ中継の解説などで「アドレナリンが出ています。」という言葉を聞くことがあると思います。

ではアドレナリンとノルアドレナリンの違いは何なのでしょうか。

それは神経伝達物質かどうかです。

ノルアドレナリンは脳内では神経伝達物質として分泌されます。
神経伝達物質なのでノルアドレナリンには精神的作用があります。
反対にアドレナリンは副腎髄質から分泌されます。
脳内からはほとんど分泌されないので精神的な作用はありません。

ノルアドレナリンは神経伝達物質で精神的作用もありますが、アドレナリンは副腎髄質ホルモンで精神的作用はありません。

スポーツにおいては、脳の覚醒レベルを高めておくとパフォーマンスが向上します。
最高のパフォーマンスを発揮するには、脳の覚醒レベルを高めておくことが重要です。
100%の力を発揮できるようにはなるわけではないですが、なるべく100%に近い力を発揮できるようになれると良いのではないでしょうか。
その為には、日頃のトレーニングで生理的限界を高めておくことが重要です。
自己暗示でモチベーションを高めること、かけ声によって瞬間的に力を増大させることなどがあります。
普段のトレーニングから、自己暗示、声などで脳の興奮レベルを高めるようにしておくと良いでしょう。