健康情報館

ヘルス&フィットネス~日々の健康・身体作りに役立つ知っておきたいこと~

健康情報館
トレーニング・フィットネス健康

脚気はビタミンB1不足で起る|運動量の多いアスリートは多めに摂取しよう

ビタミンは微量だが生命活動に必須な栄養素

ビタミンの摂取量は、mg、㎍単位になります。
三大栄養素である炭水化物、脂質、タンパク質と比べるとごく微量です。
ところが身体のエネルギー代謝反応をはじめとする各種の生理的機能を円滑に進行させ、正常な成長や生命活動を維持する健康維持に必須の栄養素です。

ビタミンは、体内でほとんど合成することができませんので、食べ物から意識して摂取する必要があります。
慢性的にビタミンの摂取量が不足してしまうと体調不良になってしまい病気や命の危険にも繋がってしまいます。

ビタミンは、有機化合物であり、水に溶けやすい水溶性ビタミンと脂に溶けやすい脂溶性ビタミンがあります。
水溶性ビタミンは9種類で、ビタミンC、B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、葉酸、B12があります。
脂溶性ビタミンは4種類で、ビタミンA、D、E、Kがあります。

ビタミンは、基本的にはその国や地域の伝統的な食事をしていれば必要量を摂取することができます。
しかし、何かの理由でその食文化を捻じ曲げてしまったり、特殊な環境で特定の食品に偏ってしまったりすると不足してしまいます。

ビタミンB1不足で起る脚気の流行

悩むイメージ

脚気(かっけ)という病気があります。
英語ではベリベリ病と呼ばれています。
これは、神経の病気で全身の倦怠感、食欲の低下や手足のしびれなどが起きます。
足元がおぼつかなくなってよろよろと歩くので、脚の病気ということで脚気と名付けられました。
脚気になると膝の下を叩くとみられる膝蓋腱反射が見られなくなり、重症化すると心不全を起こしてしまいます。

脚気は古代から文献で見られるようですが、流行が見られるようになったのは江戸時代の江戸です。
江戸の武士や庶民に多く見られるようになり、また参勤交代の地方武士も江戸勤番になると脚気になり、出稼ぎにきた庶民も脚気になり、江戸から地方に戻ると治るので江戸わずらいと呼ばれていたそうです。
これは、江戸で白米食が流行していたことが原因です。
玄米や麦飯を食べていると脚気にはなりません。

玄米を精米した白米を珍重し白米を白いおまんまとか銀シャリと呼んで、おかずを食べずに白米ばかり食べていると脚気になるとされています。
蕎麦を食べると治るので蕎麦は人気が高かったようです。

また、大阪や京都などの都市部でも流行するようになり、明治時代になると脚気による死者は年間1~3万人ほど見積もられました。
脚気は、他の病気と異なり子供や高齢者よりも若い男性が罹りやすい病気でした。
食欲旺盛な人が罹り粗食な人に患者が少ないというのが医師たちを困惑させた点です。

このような状況だと栄養に原因があるとはなかなか気づくことができないものです。
西洋医学には、白米を食べる習慣がないので脚気の対策がそもそもありませんでした。

ビタミンB1は米ぬかからの発見

脚気は欧米でも研究がされていました。
オランダのクリスティアーン・エイクマンは、脚気の研究の為インドネシアに行き、研究室で飼育していたニワトリのエサを変えてみたところ、白米では脚気に似た多発性神経炎を催し玄米にする治療することを発見しました。
これが、1896年のことです。

1901年エイクマンの弟子のゲット・グラインスは、玄米のぬかの部分に健康に必須の大事な物質があることを発表しました。

ラットは、カゼイン、脂肪、炭水化物、塩類を人工的に混合したエサを摂取させても生存できなくなるのですが、そこに新鮮な牛乳を加えると生存できるようになることを1906年イギリスのフレデリック・ホプキンスが報告しました。
これもビタミンという未知の栄養素の発見に繋がる研究となりました。

マレーシアで脚気を研究していたイギリス人のヘンリー・フレイザーとAT・スタントンは、1906年に米ぬかに脚気の治療効果があることを発見しました。

1910年6月14日に東京大学農学部の鈴木梅太郎氏が、東京化学会において白米の食品としての価値並に動物の脚気様疾病に関する研究と題して報告をしています。
米ぬかから有効な成分の抽出に成功しこれをアベリ酸と名付けて同年12月13日の東京化学会で報告しました。
論文としては、1911年1月の東京化学会誌に「糖中の一有効成分に就て」が掲載されました。

しかし、国際雑誌への投稿に手間取っている間にポーランドの生化学者カシミール・フンクが1911年に同様の論文を発表してしまいました。
脚気因子にVitamineと名称を付け1914年にビタミンという書籍も発刊したので、国際的にはフンクがビタミンB1の発見者として有名になりました。

スポーツ選手はビタミンB1を多めに摂取しよう

ダッシュ

ビタミンB1は、糖質を分解して成長・神経伝達・筋肉の収縮に使うエネルギーを生産する為の補酵素になります。
米の発芽や発根と成長に必要なので、胚乳のでんぷんとともにぬかや胚芽に存在しています。
なので、白米ででんぷんだけ摂ってもダメということです。
ビタミンB1不足で脚気が起こるのは当然だったのです。
エネルギーレベルが低下し神経に影響を与え筋肉の消耗を引き起こしてしまうのです。

現在では、脚気の患者は少なくなり、過去の病気となっています。
ですが、運動量の多いアスリートが白米、白い食パン、うどんなどばかり食べていると脚気のような症状が出る可能性はあります。

日本体育協会のプロジェクト研究で国立健康・栄養研究所との共同研究で柔道選手の血中ビタミン濃度を調べたところ、ビタミンB1については、一般人のカロリーあたりのビタミンB1必要量の2倍以上のビタミンB1摂取をしていても血中のビタミンB1濃度が欠乏状態であることを報告しました。

運動量の多いアスリートの場合、一般の人よりも多めに摂取したほうがいいでしょう。
食事から摂取するのが理想ですが、食事で摂取しにくいビタミンでもあるのでサプリメントを利用するのも考えたほうが良いかと思います。
実際、1964年の東京オリンピックでは全候補選手に総合ビタミンを配布したと記述も残っています。
ビタミンB1は、水溶性なので尿や汗で排泄されやすいので過剰症はそれほど心配する必要はありません。