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トレーニング・フィットネス

アスリートに役立つサプリメントについて|ビタミンD、鉄、HMB、クレアチン|パフォーマンス向上、疲労回復

サプリメントについて

日常的に何かしらのサプリメントを飲んでいる人も多いのではないでしょうか。
サプリメントとは栄養補助食品のことで、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素を含んだ食品になります。
普段の食事で補うことが難しい栄養素を補うのがサプリメントになります。
必須栄養素以外にもハーブ、健康の維持や増進、スポーツパフォーマンス向上が見込まれる成分などを含む製品もあります。

アスリートは、日々のトレーニングに見合ったエネルギーや各種栄養素を摂取する必要があるので、一般の人よりも多くの栄養素が必要になります。
しかし、運動量の多いアスリートが通常の食事だけで、これらの摂取量を満たすのは難しくあまり現実的でありません。
ですので、状況によって利便性の高いスポーツフーズを使用して、栄養素の摂取目標量を満たすことが必要な場面もあります。

スポーツフーズには、スポーツドリンク、エナジードリンク、スポーツバー、ゼリー、菓子類、電解質サプリメント、プロテインなどがあります。
特に食事で不足しやすいと考えられる栄養素としてはビタミン D、鉄、カルシウムが考えられます。

不足しやすい栄養素について

メディカル

ビタミンD

体内でのビタミンDは、主にカルシウムとリンの吸収と代謝を調整しています。
骨の健康状態を維持する重要な役割をしています。
さらに、怪我の予防・回復、神経筋機能の改善、タイプⅡ繊維(速筋繊維)の肥大、炎症の軽減、疲労骨折のリスク軽減などが報告されています。
これらのことから血中のビタミンD濃度を低下させないことが望ましいです。
多くの研究では80mmol/L(32ng/mL)~125mmol/L(50 ng/mL)を維持することでトレーニング効果を最適化できるとしています。

ビタミンD は、紫外線B(UVB)波によって皮膚で合成することができます。
しかし、南北33°以上の緯度では、UVB波が不十分であるので、皮膚でのビタミンD合成量は少なくなります。
UVB波によるビタミンD供給は90%を占めるので、屋内競技や冬季競技のアスリートではビタミンD欠乏に注意が必要です。

ビタミンDの過剰摂取では、高カルシウム血症、腎結石、腎石灰化などがあります。
高用量のビタミンD(12週間、35,000または70,000IU /週)を投与したアスリートでは、血清25(OH)D 濃度を増加させたが、副甲状腺ホルモンを代償的に減少させたそうです。
サプリメントによるビタミンDの摂取は、1日あたり10,000 IUであれば副作用がみられない耐容上限量であると報告されているようです。

貧血があるかどうかに関わらず、鉄欠乏は筋機能を損なってトレーニングへの適応やパフォーマンスを低下させてしまいます。
アスリートにおける鉄欠乏予防の為の鉄の摂取量(推奨量)は、女性18mg/日以上、男性8mg/日以上とされています。
しかし、ヘモグロビンが12g/dL以下の鉄欠乏性貧血と診断された場合には、高用量の経口鉄サプリメント(100 mg/日)の3ヵ月間の摂取は鉄欠乏性貧血の改善に有効としている報告もあります。
このように、鉄欠乏に該当するアスリートは、定期的な血液検査や食事調査を実施した上で、食事での鉄摂取量を増加させるとともに、高用量の経口鉄サプリメントの補給が必要な場合があります。
ただし、過剰な鉄摂取は、生体内で活性酸素の産生を促し、毒性の強いヒドロキシラジカルを発生させます。
鉄欠乏でない限り、安易に高用量の鉄サプリメントは服用すべきではありません。

カルシウム

カルシウムは骨の形成に欠かせませんが、筋肉の収縮の調節、神経伝達にも特に重要な働きしています。
骨密度の検査は、慢性的なカルシウム摂取不足の指標になりますが、骨密度にはビタミンD欠乏や摂食障害などの他の要因もあります。
食事からビタミンやミネラルの摂取が不足する場合には、サプリメントの使用を考える必要な場合もあります。
しかし、過剰摂取の危険性もあるので注意も必要です。
そのため、定期的に食事調査や臨床評価を行うなど栄養素の過不足をモニタリングし、サプリメント使用の必要性を適切に判断する ことが重要です。

間接的にパフォーマンス改善が期待できるサプリメント

ウエィトリフティングをする男性

クレアチン

クレアチンは、パフォーマンスを直接的に向上させる効果があります。
高強度トレーニングからの回復を促す働きもあります。
また、クレアチンと糖質の同時摂取は、グリコーゲン再合成を高めるので、運動後の疲労回復を促進させてくれます。
脳震盪後には脳クレアチンは減少して代謝が低下した状態になりますが、クレアチン補給によって緩和することができます。
そのため、クレアチンの摂取は、筋だけでなく脳にも有益である可能性が考えられています。
しかし、クレアチン摂取による脳震盪の重篤度の軽減や脳震盪からの回復を向上させるかについての有益性はさらなる研究が必要です。

HMB(ヒドロキβ-メチルブチレート)

HMBは、ロイシンの代謝産物で食事から摂取することができます。
サプリメントでの摂取としては、約 3 g/ 日が推奨されています。
HMBは抗異化作用があり、筋損傷や筋タンパク質分解を減少させることによって筋肥大を促すとされています。
Deutz et al.(2013)は、10日間のベッドレストを行う高齢者に対しHMBを摂取させることによって除脂肪体重を維持することに有効であることを示しています。
寝たきりなどの極端な非活動期間のHMB摂取はリハビリテーションに役立つ可能性があります。
HMBはトレーニングによる筋肥大効果を促すとされていますが、それを否定する研究も報告されています。
特にトレーニング初心者に効果が期待できるとされていますが、中級者以上の人では、効果は期待できないとされているようです。

n-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)

n-3多価不飽和脂肪酸は、魚や魚油などの食品に含まれる必須脂肪酸です。
EPA(エイコサペ ンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)になります。
これらは、脳や血管、筋機能、怪我からの回復に及ぼす影響について研究されています。
DHAやEPA摂取後の認知機能改善については、高齢者やアルツハイマー患者などを対象としたいくつかの研究 で報告されています。
しかし、n-3系脂肪酸摂取がアスリートの認知機能やパフォーマ ンスの改善に繋がるのかは不明です。
n-3系脂肪酸は抗炎症作用があり、高強度運動からの回復、特に筋損傷を伴う伸張性収縮運動後には有効である可能性が高いようです。
実際にサプリメント摂取により遅発性筋痛が減少した報告があります。
ですが、一致した研究は得られてはいません。

また、n-3系脂肪酸が不足した場合に欠乏症が生じることを示す十分なデータはありません。
アスリートが食事の代わりにサプリメントからの摂取が必要かどうかについては分かっていません。

ビタミンD

ビタミンDは、骨組織に関わる以外にも上気道感染症の感染リスクを軽減する為に重要な働きをしています。
多くの研究でビタミンDと上気道感染症の発生との間に負の相関を報告しています。
上気道感染症に感染するブレークポイントは~95nmol/Lで、この濃度より低値を示すアスリートは1回またはそれ以上の症状の発症を経験し、血清25(OH)D濃度が高値を示す場合は、1回かそれ以下の症状の発症であったそうです。
持久系競技のアスリートを対象とした同様の研究によると30nmol/L未満の血清 25(OH)D濃度を維持していた選手の多くが、この時点で上気道感染症状を呈していることが報告されているようです。
最も少ない症状は、25(OH)D濃度120 nmol/L以上の被験者で、体内のビタミンD濃度を高めることが、選手のコンディションの維持にも役立つ可能性があるとされています。

プロバイオティクス

腸内の微生物は、胃腸管機能、免疫系、運動に影響を及ぼす代謝産物の産生に様々な影響を与えています。
アスリートに関する研究は、運動中の消化管の問題を予防または軽減、上気道感染症の影響を軽減、持久性パフォーマンスを改善する可能性があります。
アスリートを対象とした臨床研究では、プロバイオティクスとして使用されている様々な細菌が存在し、一般的な摂取方法は、4~21週間、109~4×1010CFUです。
高強度・長時間の運動は消化管にストレスを与え、不快感、腹部痙攣、 胸やけ、吐き気、嘔吐、下痢、内毒素血症などを起こす可能性を高めてしまいパフォーマンスを低下させてしまいます。
消化管の問題を起こしやすいアスリート、または下痢や胃腸感染症が起こりそうな地域へ遠征に場合には、プロ バイオティクスの摂取が役に立つ可能性が高いと考えられます。

ゼラチンとコラーゲン

Shaw et al.(2017)は、健康的な成人男性にゼラチンとビタミンCの混合サプリメント(15gゼラチン+ 50mgビタミンC)を摂取させたところ、コラーゲン産生が増強し血液中のアミノ末端プロペプチド増加を誘引すると報告しています。
また、コラーゲン加水分解物の補給(約10g /日)は、変形性関節症患者において軟骨を厚化させ、アスリートの膝の痛みを軽減することが示唆されています。
これらの研究は、ゼラチンとビタミンCの併用やコラーゲン摂取の有益性を示唆しています。
ですが、パフォーマンスの変化または損傷からの回復などの有益性に関するデータは得られていません。

抗炎症・抗酸化サプリメント

ウコンの成分であるクルクミンサプリメントは、抗炎症効果を目的として約5g /日の用量を摂取されることが多いです。
これは、アスリートの筋損傷または遅発性筋痛を減少させるために有効です。

タルトチェリージュースの摂取により、レジスタンス運動、高強度の伸張性収縮運動、ランニング、自転車運動後の筋損傷・炎症性マーカーが減少することが示されています。

炎症が軽減されることにより、トレーニングへの適応反応が損われる恐れも指摘されていますが、短期間で複数の試合が行われるような場合には、適応反応よりも早期の回復と痛みの軽減が優先されます。
なので、クルクミンとタルトチェリージュースの摂取は、一部の競技では有益である可能性が考えられています。

抗酸化ビタミン(ビタミン C、E)の長期間摂取は、トレーニングにより生じた炎症及び酸化ストレスを減弱させます。
その一方でトレーニング適応を低下させて望ましいトレーニング効果を得られない可能性が示唆されています。

この様にサプリメントはいつどのように使われるかによって得られる効果が異なるので、目的に応じて適切に使用することが望ましいと考えられます。

参考・引用元⇒間接的にパフォーマンス向上に関わるサプリメントの科学的根拠