ツボ刺激は中枢神経にも作用する|反応、診断、治療を同時に行えるツボ刺激
ツボは気の出入り口
ツボは、鍼灸の治療で使われ、エネルギーの出入り口にとされています。
的確にツボを刺激することができれば、身体の不調を改善させることができます。
東洋医学では、身体に「気」や「血」といったエネルギーが巡っていると考えられています。
その通り道が、全身に14本ある経絡というエネルギーラインになります。
肝、心、脾、肺、腎といった臓器に関わる経絡12本に加えて身体の中心線にある督脈と任脈を合わせて14本、この経絡上にほとんどのツボ=経穴が存在し、経絡は互いに繋がっています。
気や血のめぐりの不具合が臓器やメンタルの不調、不定愁訴の原因になっています。
西洋医学では、反応、診断、治療をそれぞれのフェーズが時系列上で展開しています。
一方で東洋医学では、この三つを同時に行うことができます。
例えば、朝起きたら熱があって喉が痛かった場合、風邪の初期症状に対応するツボを押すと圧痛を感じる「反応」があり、痛いということは風邪だと「診断」がつき、その刺激によって風邪の初期症状の改善が見られる「治療」が成立します。
ツボは「反応点」「診断点」「治療点」を同時に行うことができます。
70年代に世界が注目するようになった
1971年、ニューヨークタイムズの記者が虫垂炎を発症し、旅先で西洋医学の手術を受けたものの予後が悪く痛みや不快感を訴えました。
そこで鍼治療をうけたところ、見事に不調が改善したそうです。
帰国後、記者はこの経験をニューヨークタイムズで紹介しました。
この後、中国では麻酔薬を使わずに鍼で麻酔をかけるという例も珍しくないという情報も発信しました。
西洋医学一辺倒だったアメリカ人にとってツボを鍼で刺激するだけで外科的な処置ができることに驚愕をしました。
この出来事をきっかけに欧米では鍼灸やツボの医療効果が認められました。
2000年代に入るとWHO(世界保健機関)で361個のツボが正式に認定されました。
ツボ押しの効果とは?
ツボ押しの効果は、血流が増して痛み物質を流してくれることです。
ツボを刺激すると、周辺の血管が拡張して血流量が増加します。
血流が改善することで痛み物質が流されて、筋肉がほぐれていきます。
その結果、肩こりや腰痛などの症状を緩和させることができます。
これがツボ刺激による局所効果です。
そして、ツボの刺激によって得られる効果は局所的だけではありません。
中枢神経にも働きかけてくれます。
例えば、手の親指と人差し指の間にある合谷というツボがあります。
このツボは、万能ツボとして有名で主に上半身の痛み全般に効果があると言われています。
実際に合谷を刺激した時の脳の状態をMRIで調べた実験があります。
その結果、ツボを刺激したら脳の血流量が増やすことが分かったそうです。
この時、脳内で痛みを和らげる鎮痛物質が分泌されていることが明からになっています。
東洋医学のツボ刺激は、その効果はある程度科学的に証明されています。
向う脛には、足三里というツボがあります。
このツボは、疲労回復という局所的効果と胃の不調の改善効果があるとされています。
脛に刺激は、脊髄から脳に至り、脳がオピオイドと呼ばれる鎮痛物質を分泌して胃の不調を改善すると考えられています。
一方で同じように胃の不調改善に有効とされている胃兪というツボが腰の部分にあります。
このツボを刺激すると脊髄からの反射で胃の働きがコントロールされます。
同じ中枢神経の作用でも体幹近くでは、主に脊髄経由、手や足など末端に行くほど脳経由で身体の不具合が調整されます。
古代中国の高貴な人々は、服を脱がずして手先足先の刺激で体調管理をしていたと言われているそうです。
西洋医学では対応できない痛みに対応
一言に痛みと言っても様々あります。
侵害受容器が感じるあらゆる痛み、帯状疱疹などピリピリする神経性の痛みがあります。
さらに機能障害や炎症など原因がないのに生じる第三の痛みがあります。
これは、ストレス、不安、絶望感などから何の変調もない部位に痛みを感じ取る、いわゆる慢性痛です。
本来、痛み情報が脳に伝わると脳からドーパミン経由の指令でセロトニンなどの鎮痛物質が分泌され痛みが和らぐという仕組みです。
ストレスや不安でこの働きが鈍った状態が続くと慢性痛である第三の痛みが出てきます。
ツボ刺激は、脳に働きかけて痛みを和らげる身体の反応を強化する作用があります。
実際にツボ刺激でセロトニンが分泌されるので、痛みが軽減する効果が期待できます。
原因不明の慢性痛は、東洋医学のツボ刺激が効果的かもしれません。
西洋医学と東洋医学の両方を上手く取り入れることが良いのではないでしょうか。