健康情報館

ヘルス&フィットネス~日々の健康・身体作りに役立つ知っておきたいこと~

健康情報館
トレーニング・フィットネス

最大筋力=1RM?速度が速いと発揮筋力は大きくなる|ウェイトトレーニングのパラダイムシフト

最大筋力=1RM?

ウェイトトレーニングの強度設定は1RMのパーセンテージで設定するのが常識とされています。
今でも多くのテキストにも記載されているかと思います。

これは一体なぜなのでしょうか。

それは、実際のウェイトトレーニングでの現場では挙上速度を測定することができないからです。
ですが、今では誰でも簡単に挙上速度を測定することができるようになっています。
ウェイトトレーニングの世界にはパラダイムシフトが起こりつつあると言えます。

パラダイムシフトとは、ある分野の科学者や専門家集団において、歴史上の一時期には当然のことと考えられていた認識や問題に対するアプローチが技術革新や価値観の変化によって劇的に変化し新たなモデルや枠組みに取って代わられることを意味します。

1回の反復動作で発揮される力は、ウェイトの質量と発生した加速度との掛け算で決まります。
質量は見れば分かるので動作中の加速度が分かれば実際に発揮した力が分かります。

加速度とは、速度の変化率です。
挙上動作を開始してからどれだけ大きな速度に到達できるかが、対象となるウェイトに対して発揮した筋力の大きさを決めます。

例えば、仮に1RMが同じ人がいたとします。
1RMは同じ、つまり挙上重量が同じであっても出せる速度が違うのであれば、発揮されている筋力が異なるということです。

しかし、ウェイトトレーニングでの強度設定は1RMでのパーセンテージで設定するのが常識になっているかと思います。
これは実際の現場では速度を測定することができない時代が長く続いたからです。
持ち上げることができる最大の重さを最大筋力として仮定して強度を設定するしかなかったのです。
このような時代が100年以上も続いた結果、1RMが最大筋力であるとの誤解と強度は1RMのパーセンテージまたはRMで設定するものという常識が出来上がっていったのです。

現代では挙上速度を測定するデバイスがあります。
高価なので手軽にというわけにはいきませんが、このデバイスを使えば誰でも簡単に挙上速度を測定することができます。
挙上速度によってトレーニングの強度を客観的に設定することができます。
トレーニングは力学に基づいて行っていく必要があるでしょう。

遅くても速度を意識することが重要

デッドリフトをする男性

1RMの大きさで、発揮可能な筋力を評価するという習慣が長く続きました。
これによって大きな力は、遅い速度でしか発揮されないという感覚から抜け出すのが難しくなっているのではないでしょうか。

しかし、軽い重さであっても少しでも早く挙上させれば発揮される筋力は大きくなります。
その筋力を大きくすることがパフォーマンス向上にはとても重要です。
実際に軽い重さで挙上速度を比較すると、1RMが同じ、あるいは大きい選手よりも、より速く挙上できる選手のほうが競技パフォーマンスに優れています。

「一定の重さに対して発揮可能な筋力の最大値」と「どれだけ重たいものを持ち上げることができるのか」は全く異なるのです。

どんな速度でも、少しでもより速く挙上しようとすれば大きな筋力が発揮されます。
速く挙上させようとすれば特に速筋繊維であるタイプⅡ繊維がより多く動員されます。
筋繊維に対する機械的刺激も高くなるので、このことが筋肥大に対して効果的に働きます。
ボディビルダーの間でも挙上速度を追求することが注目され始めているようです。
速度を意識して少しでも速く挙上することを意識するようにすることが重要と言えそうです。

また、これとは全くの反対の意図的にゆっくりと動作することが必要なウェイトを下ろす局面であるエキセントリック運動も客観的な速度計測が役に立ちます。

トレーニングの質を高く維持

ダンベルトレーニング

1回ごとに最大速度を発揮しようと全力で反復をすると挙上速度は明らかに落ちていきます。
これは実際に発揮されている筋力が小さくなっているからです。
大きな力を高速で発揮するのに適したタイプの運動単位は徐々に動員されなくなっていきます。
この状態で反復回数を繰り返しても、そのウェイトに対して発揮できる筋力向上にはあまり意味がなくなってしまいます。
これは、最大疾走速度を向上させる為のトレーニングで最大スピードがどんどん低下しているのに走り続けるのと同じです。
最大速度をできるかぎり維持するトレーニングであれば良いですが、最大速度の向上であれば目的が変わってしまいます。

疲労の進行状況は個人によって変わります。
速度を意識したトレーニングでは、客観的に挙上速度を測定し一定のレベルまで速度が低下したら、それ以上の反復をやめて十分な休息の後、再び全力で挙上するというセット法が有効ではないかと考えられています。
これはVLCという疲労の客観的なコントロール法になります。
VLCが日本人に対しても有効であることは、複数の研究で確かめられているようです。

この方法によってトレーニング総量を低く抑えてもトレーニング効果は同じ、爆発的パワー発揮能力はむしろ大きくなることが示されています。
一定の質量に対して発揮可能な速度を追求することは、筋力向上を追求することと同じです。
発揮できる速度が速くなれば、それは発揮している筋力が強くなったことを意味します。
現場で挙上速度を測定することができるようになった現代では、パラダイムシフトが起こりつつあると言えるかもしれません。

しかし、一般の方が健康の為に行うウェイトトレーニングであれば従来通りのゆっくり行うのが安全で良いかとは思います。
個人によってもちろん変わりますので、目的や身体の状態などによってトレーニングは変えていくべきでしょう。