アスリートにとっても腸内環境は重要!腸は筋発達にも関係がある
過剰なタンパク質が腸内環境を悪化させるかも
日々トレーニングに励んでいる人たちは、高タンパク質食を意識しているかと思います。
中でもアスリートやボディビルダーは高タンパク質食を好んで食べています。
ボディビルダーとマラソンランナーの腸内を比較するとボディビルダーは短鎖脂肪酸の生成に関わる腸内細菌が著しく少ないようです。
この理由として考えられるのが、ボディビルダーの食事は超高タンパク質で低脂肪、食物繊維の摂取量が少ない傾向があるからです。
人によっては低炭水化物食の人もいるかと思います。
食物繊維は、腸内環境を整えてくれるので、摂取量が少ないと腸に悪影響を及ぼします。
では、高タンパク質食を続けると腸内に何かしらの影響があるのでしょうか。
特に減量中は、炭水化物を減らす傾向があるのでそれに応じて食物繊維の摂取量も減りやすいと言えます。
減量時のボディビルダーの食事内容を見ると腸内環境が乱れることが予想できるのですが、実際はどうなのでしょうか。
摂取したタンパク質が体内でアミン酸に分解される際に副産物としてアンモニアが作られます。
アンモニアは、身体にとって有害でありこれが腸内の内皮にダメージを与えて、悪玉菌が作り出す有害な副産物が腸の外に漏れ出す可能性が高まってしまいます。
漏れ出した有害な物質が血液中に溶け込んでしまうと身体のあちこちに炎症が起き始めてしまいます。
このような全身性の炎症は、様々な病気の原因になることもあります。
では、ボディビルダーの身体にこのようなことが起こっているのでしょうか。
研究によると、最悪の事態になるのは、かなりの量のタンパク質を摂取した場合に限られるようです。
常識を超えて大量のタンパク質を摂らない限り問題はないと言えますが、長期に渡って高タンパク質食をし続けた場合に何かしらの問題が出る可能性がないわけでもないので注意は必要かと思います。
高タンパク質食が腎臓の機能を低下させると言われていたりもしますが、これは今では否定されているようです。
腎機能が低下している人は、タンパク質の制限があります。
健康な人であれば、あまりにも常識の範囲を超えて大量に摂らなければ問題ないのではないでしょうか。
では、必要量を超えるほどのタンパク質は一体どれくらいなのでしょうか。
タンパク質は大量に摂れば摂るほど筋肉がつくわけではありません。
必要量を超えて摂っても無駄になってしまいます。
タンパク質の摂取量は、体重1kgあたり2gまでです。
それ以上に摂取しても体内のタンパク質合成率自体が頭落ちになってしまうことが研究で分かっています。
もちろん、個人差はあるかと思いますが2gを上限の目安にすると良いのではないでしょうか。
プロテインの腸への影響
プロテインが腸内細菌叢にどう影響するのかについて調査した実験があります。
被験者は、クロスカントリーのアスリートたちで二つのグループに分けて10週間にわたって行われました。
グループ1は、ホエイアイソレート10gとビーフプロテイン10gを混合したものを摂取。
グループ2は、炭水化物のマルトデキストリン。
実験の結果、プロテインを摂取したグループ1の被験者たちの腸内では、8種類の腸内細菌の数が減少したことが分かりました。
ただ、短鎖脂肪酸の生成に関わるバクテロイデーテスの数は増加していました。
過去の研究では、バクテロイデーテスの数が減少すると太りやすいことが分かっているようです。
また、炭水化物の消化を助け脂肪に変わるのを抑制してくれる作用があるとされています。
このバクテロイデーテスが増えるのはプロテインのメリットと言えるかもしれません。
しかし、問題なのは8種類の腸内細菌が減少し腸内環境の多様性が低下してしまっていることです。
この解決策としては、食物繊維をしっかりと摂ることです。
プロテインを摂取し続けるのであれば、食物繊維を特に意識した方が良いかと思います。
腸内細菌がアミン酸の吸収を促す
筋肉を発達させるには、摂取したタンパク質が効率よく吸収されるのが理想です。
腸内細菌がタンパク質の吸収に関係していることを示す実験結果がいくつかあります。
腸内細菌叢は筋肉へのタンパク同化を促す働きを持っていると考えることができます。
ある実験では、ラクトバチルス・パラカゼイという細菌を供給すると体内での植物性タンパク質の利用効率が高まるという結果が得られているようです。
植物性タンパク質の中に含まれる必須アミノ酸やBCAAの利用効率を動物性タンパク質レベルまで引き上げてくれるようです。
ラクトバチルス・パラカゼイは乳酸菌であり様々な発酵食品に含まれています。
実験結果が正しいとするならベジタリアンやビーガンのアスリートにとって腸内細菌はとても重要になると言えそうです。
別の研究によるとタンパク質とプロバイオティクスの一つであるバチルス・コアギュランスを一緒に摂取すると上皮細胞の炎症が抑制され栄養吸収の働きが改善されたそうです。
また、ヒトを対象にしたバチルス・コアギュランスを使った実験では、タンパク質の消化酵素であるプロテアーゼが増加しアミノ酸の吸収が高まったそうです。
トレーニング後にプロテインとバチルス・コアギュランスを組み合わせて摂取すれば、アミノ酸の吸収力が高まり筋肉のダメージが修復されやすくなると考えられます。
腸内環境を整えることはアスリートにとって重要と言えそうです。
高脂肪食は腸内環境を悪化させる
欧米地域の食事は脂肪分が多く、中でも飽和脂肪酸の占める割合が多い傾向があります。
研究によるとこのような食事は、マイクロバイオームの環境を変えてしまいファーミキューテスとバクテロイデーテスの比率を崩してしまう可能性が高くなるそうです。
高脂肪食が腸内環境に悪影響を与えるのは、食物繊維が十分に含まれていないからです。
腸内環境や健康を考えるなら食物繊維を加えると良いでしょう。
エキストラバージンオイルなどは健康的な油とされています。
しかし、健康的な油と呼ばれていても腸内環境を変化させ全身性の炎症を引き起こすような物質のレベルを高めてしまうことが研究で明らかになっています。
では、魚油などに含まれる多価不飽和脂肪酸ではどうなのでしょうか。
研究によると腸内環境を変えてしまうことはなく、健康に有用とされる腸内細菌が減少することもないようです。
オメガ3脂肪酸などは短鎖脂肪酸を増やす腸内細菌を活性化し、血中に有毒な物質が流れ込んでしまうのを抑制してくれます。
魚油は、全身性の炎症を予防するのに役立ち、腸と脳の連動性を高めてくれることが研究で示されています。
ボディビルダーには食物繊維必須
理想的な腸内環境を作り維持するには、食物繊維が重要です。
食物繊維を摂取すればビフィズス菌の数を増やすことができます。
ボディビルダーの場合、腸内細菌叢の多様性が低くなっているという研究結果が出ています。
ボディビルダーの典型的な食事は、腸内環境にマイナスになっているかもしれませんが、運動はプラスの影響を与えているはずです。
それにも関わらず運動を行わない一般の人と同じレベルの腸内環境になっているのです。
それだけ食物繊維の摂取量が腸内環境に影響を与えているのかもしれません。
食物繊維が不足している状態で、いくらトレーニングをしても、そのマイナスを補うことが難しいということかもしれません。
ボディビルダーであれば、1000kcalごとに14g程度の食物繊維を目安に摂るようにしてみましょう。
それにより健全なマイクロバイオームを作ることになり腸の健康にプラスになるかと思います。
食物繊維が不足してしまうと腸内環境が乱れてしまい、短鎖脂肪酸の生成が抑えられてしまいます。
そのことが筋繊維の低下やグリコーゲン合成の低下を招くことになります。
食物繊維は、特に意識して摂取しておきたいものです。