インスリン抵抗性はタンパク質、糖質、脂質の三大栄養素のどれでも生じる
タンパク質、糖質、脂質はどれも過剰分は脂肪になる
糖尿病は、血糖値を下げるインスリンが効かなくなって起こります。
インスリンの作用が十分に発揮できない状態をインスリン抵抗性と言います。
では、このインスリン抵抗性はどのようにして生まれるのでしょうか。
インスリンは食後、血糖値が上昇した時に膵臓から分泌されます。
この為、糖質の代謝においてのみ働くと言うイメージがあるかもしれませんが、タンパク質、糖質、脂質の三大栄養素の全ての代謝に実は関わっています。
三大栄養素は、それぞれ体内で重要な役割を果たしていますが、代謝の過程でどれもアセチルCoA(コエンザイムA)と言う物質に変わります。
そして、体内にエネルギーが不足している時は、さらに分解されて炭酸ガスと水になりエネルギー源であるATPを生成します。
ですが、体内にエネルギーが余っている時は、アセチルCoAは分解されず脂肪酸を合成し中性脂肪となって体内に蓄えられていきます。
タンパク質、糖質、脂質はどれも必要以上に摂取してしまうと脂肪に変換して肝臓や皮下、腸間膜や内臓、もしくは筋肉細胞の間に貯蔵されます。
こうして、人や動物から酵母菌に至るまで、それぞれの進化の過程で脂肪を蓄積すると言う能力を獲得し、環境変化によってもたらされる飢餓を乗り切ってきたのです。
人間で言えば、10kgほどの脂肪を貯蔵すると約2ヶ月分の基礎代謝を賄うことができると考えられています。
日本人の標準的な体脂肪率は男性10~19%、女性20~29%です。
いかに飢餓に対応することができるのか分かるかと思います。
また、小腸で分解されたブドウ糖の一部は、肝臓や筋肉でグリコーゲンとして蓄えられますが、その量は限りがあります。
通常1000kcal未満とされていて、基礎代謝量に足りません。
ブドウ糖が足りないとアミノ酸や脂肪から作られる
三大栄養素のうちタンパク質と脂質は、体内で合成することができない必須アミノ酸と必須脂肪酸あります。
これらの必須栄養素は、食事から摂らなければいけません。
ですが、糖質はブドウ糖こそ脳や赤血球のエネルギー源として必要ですが、必ずしも食事で摂る必要はないとも言えます。
なぜならブドウ糖は、体内で合成することができるからです。
血糖値が下がりブドウ糖が不足すると、ホルモンによって肝臓や筋肉に蓄えてあったグリコーゲンからブドウ糖を作ります。
それでも足りなければ、肝臓がタンパク質や脂肪の一部からブドウ糖を作り出します。
これは糖新生と呼ばれます。
脂肪は、グリセロールと脂肪酸がくっついた構造をしていますが、このうち糖新生の材料になるのはグリセロールになります。
脂肪酸は、糖新生の材料になりません。
タンパク質、糖質、脂質は、どれも余分な分は体脂肪となり、糖質が足りなければタンパク質(ほとんどのアミノ酸)、脂質がカバーをしています。
三大栄養素は、代謝のうえでは繋がっていると言うことです。
その為、それぞれの摂取量が多少偏ることがあっても体内で十分に補い合うので、大きな不具合が起こることはまずありません。
三大栄養素は、どれも余剰分は脂肪として体内に蓄えられますが、その時に働くのがインスリンです。
ただし、インスリンが脂肪合成を促進させよとしても、それを貯蔵する場所がないと身体は困ってしまうと言うことが生じます。
三大栄養素はインスリン抵抗性を起こしうる
インスリン抵抗性とは、インスリンの感受性が低下してインスリンの作用が十分に発揮できなくなる状態です。
インスリンが脂肪合成を促しても貯蔵する場所がないとインスリン抵抗性を生じてしまいます。
タンパク質や脂質も同様です。
脂肪酸を作り、貯蔵しようとしているにも関わらず貯蔵場所がないならどうしたらよいか。
この状態が長く続くと、身体は水に溶けやすい糖を尿中に排泄して「糖尿」を作ります。
その一方で水に溶けにくい脂肪酸を分解して水溶性のケトン体を作り、多くの組織でエネルギー源として使うことで対処します。
ブドウ糖が唯一のエネルギー源と言われてきた脳でさえも、このケトン体によって活動をすることができます。
また、ケトン体の一部は尿中や皮膚、呼気から排泄されます。
厳しい糖質制限をある程度の期間行うと、エネルギー源がもっぱらケトン体になり、インスリン抵抗性が長期間続くことになります。
ケトン体は特有の臭いがあるので、糖尿病を発症した人が特有の臭いがするのは、このケトン体によるものです。
糖質に限らずタンパク質と脂質、三大栄養素全ては、インスリン抵抗性を生じてしまいます。
参考書籍⇒糖尿病は、体にいいはずの油が原因だった