筋肥大をさせるには「強い力を出すこと」「トレーニング容量を増やこと」が重要、70~80%1RMがちょうどマッチしている
刺激が強いだけでは筋肉は太くならない
筋肉に強い力学的刺激を与えれば、それに対抗して身体は筋肉を強化しようと言う適応反応が起こります。
これは生物として当然起こる適応だと言えます。
強い力が必要であれば、それに耐えられる筋肉を作らないと生き延びていけないと言う身体の反応です。
これが長期的な適応と言う形で筋肉が太くなり、骨を強くすると言う結果が出てくるのです。
それならば、筋肉を大きくするには強い力を発揮すればいいだろうと思うかもしれません。
しかし、実際には筋肉を太くするトレーニングはそんなに単純ではありません。
強い力だけを考えれば、ジャンプのような瞬間的な大きな刺激が加わるトレーニングが良いと言うことになります。
プライオメトリックトレーニングのように高い台から飛び降りたり、反動を利用してジャンプをしたり助走をつけて一気に上に飛び上がったりすると瞬間的な床反力は500~600kg重と言う数値になることもあります。
なので筋肉にかかる負荷は200kgのバーベルを担いだスクワットよりも高くなることになります。
ですが、このようなトレーニングでボディビルダーのように筋肉がどんどん大きくなるのかと言うと決してそうではありません。
筋肉を肥大させるトレーニングには、70%1RM~85%1RM程度の負荷を使い、3セット行うと言うスタンダードがあります。
例えば、95%1RM×2回と言うトレーニングを延々と続けても筋肉を太くする効果はあまり大きくはありません。
これはトレーニング界の常識となっています。
つまり、筋肉を肥大させるには力学的ストレス以外にも重要な刺激があると言うことになります。
では、その刺激とは一体何なのでしょうか。
力発揮の時間が短いと筋肥大は起こりにくい
筋肉を肥大させるには強い力発揮が必要ですが、プライオメトリックトレーニング、バリスティックトレーニングなどは、瞬間的に強い筋力を発揮していますが筋肥大の効果はあまり高くありません。
強い力を出しているのに筋肥大効果が落ちてしまう理由は、力を出している時間が極端に短いからです。
筋力のピークが高くても力発揮の時間が短いと筋肉を太くする反応は起こりにくくなるようです。
筋肉を太くするには、筋肉がどのくらい仕事をしたのかも重要になるのです。
ある重さを一定の距離を上げると筋肉の仕事は、重さ×距離に相当します。
トレーニングでは重さ×回数を容量と表現しますが、これが仕事の目安になります。
例えば100%1RMと言うトレーニングは、反復回数が1回なのでトレーニングの容量は単純計算すると100×1になります。
容量の単位で言うと1セット当たり100%1RMレップと言う値になります。
では80%1RMまで落として8回上げた場合はどうなるでしょうか。
80×8=640なので640%1RMレップと言う容量になります。
重さを20%落とすことによって刺激の強度は0.8倍に下がりますが、1セット当たりのトレーニング容量は6.4倍にもなります。
このように少し重さを下げることでトレーニング容量を大きく増やすことができます。
ですが、強度を落とし過ぎてしまうと今度は力発揮と言う要素が低下してしまいます。
強い力を出すとこととトレーニング容量を増やすことの両方がちょうどマッチしたところが70~80%1RM程度であると考えられます。
ですので、最適な筋力トレーニングは少し負荷を軽くして力を発揮する時間や仕事を増やす為に上げ下ろしに1~2秒かけてゆっくり動作を繰り返しながら十分な容量こなすことが重要となるのです。
トレーニング容量を増やすと何が起こるのか
ではトレーニング容量を増やすことで筋肉にどんな刺激が加わるのでしょうか。
色々なものがある中で、かつて非常に重要とされていたのがトレーニング容量に依存してトレーニング後に筋肉に作用するホルモンの分泌が増えると言う考え方でした。
実際に成長ホルモンは100%1RMを1回上げてもあまり分泌されませんが、80%1RM×8回3セットをすると分泌が高まります。
これについては、データがたくさん出ているのでこの現象については事実であると言えます。
この結果から筋肉を太くするには、成長ホルモンが重要であると考えられてきました。
ですが、これは1980年代後半から2000年代前半頃まで有力であった説になります。
最近の研究では、成長ホルモンは直接筋肥大に関わっていないのではないかと言う考え方が強くなっています。
成長ホルモンによる筋肥大効果は、以前よりも重要視されてはいません。
成長ホルモンが全く意味ないと言うわけではありませんが、ダイレクトに関係があるわけではないのです。
ただ、成長ホルモンが多く分泌されるようなトレーニングは、筋肥大に効果的なトレーニングをしたと言うことになるので、今後のトレーニング効果を推測するのに役立つでしょう。