長時間トレーニングはケガのリスク増加!上達する保証もない、休むことが重要
長時間トレーニングは無意味
長時間トレーニング、練習をすればその分、効果も高くなると思われがちかもしれませんが、練習やトレーニングを長時間行ってもメリットはないと言えます。
むしろデメリットしかないと言ってもいいでしょう。
なぜなら長時間トレーニングをすることは数々の弊害があるからです。
生理学的な観点から、長時間身体を動かし続けるということは、当たり前ですがそれだけたくさんのエネルギーを消費することになります。
スポーツには、様々な性質の競技があり、中にはトライアスロンや100kmマラソンといったような長時間行う競技もあります。
しかし、そういのは別として、その競技のもともとの競技時間に対して練習やトレーニングがあまりにも長かった場合、それはそもそも自然の姿だと言えなくなってしまいます。
長時間にわたってエネルギー消費をすれば、それだけ消耗するエネルギーは膨大になります。
そして、余分なエネルギーがあまりにも少ないと骨や血液を作る、あるいは免疫機能など生きる為に必要なエネルギーもなくなってしまいます。
このように生活を支える為のエネルギーが不足している状態のことをスポーツにおける相対的エネルギー不足、RED-Sと言います。
これによって様々な健康問題が引き起こされるとされています。
長時間トレーニングによって膨大なエネルギーを消費し休養時間が少なくなる、あるいは食事の量が不十分になる状態が続けば、生きる為のエネルギーが不足することになり、その結果、免疫、代謝、心血管系、成長・発達などの生理的機能に悪影響をもたらし、ケガが起こりやすくなります。
女子だけでなく男子にも発育に影響がある
気を付けたいのがRED-Sの状態になっても影響が一度で直ぐに出るわけではないということです。
蓄積していくことでホルモンが減って、子供であれば発育に影響が出てくる可能性があります。
特に女性の場合、持久系の競技での長時間トレーニングが続くと、本来増えてくるべき時期に女性ホルモンが増えずに初経が遅れて成長に影響が出たり、骨の量の獲得が少ないまま大人になってしまう、というような弊害があります。
実は、これについては女性だけでなく男性にも同じことが言えます。
男性も長時間トレーニングによって男性ホルモンが増えるべき時期に増えなくなり、本来であればこの時期につくはずだった筋肉がつかなかったり、骨の量が増えなかったりして成長してしまうことになります。
長距離やマラソン選手の中には、骨密度が非常に低い人が男女ともにいるのです。
RED-Sの状態にならないように女子だけでなく男子にも同じように練習量や時間に配慮する必要があります。
オーバーユースによって様々なケガが引き起こされる
通常の競技活動を行っている子供の練習時間とケガとの関係性については様々な調査・研究の結果が発表されています。
中でも練習の時間と内容を定量化しやすい陸上競技において、陸連が行っているジュニアを対象とした調査があります。
この調査では、小中学生ともに練習時間が長かったり休みの日数が少なければ明らかにケガが多くなるという結果がはっきりと出ています。
昔は、週1日休めばいいのではないか、と言われていましたが、最近の調査によると週2日休んでいるほうがケガが少なくなることが分かっています。
週1ではケガは少なくなっていないという結果も出ています。
練習量だけでなく、質も関係をしていると思いますが、相応の休養時間をしっかりと取らなければエネルギーのバランスが正常化されずにケガを引き起こしやすくなるのです。
このぐらい練習したらケガをするというような単純な話ではありませんが、オスグッド病を発症した子とそうではない子とを比較した場合、発症した子のほうが練習時間は長かったということが言えます。
使い過ぎによるオーバーユースは、同じ動作を繰り返すことで起こるので、練習時間の長さが要因の一つになっていることは間違いありません。
オーバーユースによるケガには、野球肩やテニス肘、疲労骨折、関節内遊離体、タナ障害、椎間板ヘルニアなどがあります。
長く行えば上達するという保証はない
長時間トレーニングを行ってきた背景には、様々なことが影響をしているかと思います。
その根底にあるのが、繰り返し練習したほうが技術が身に付くだろうという考え方があるからではないでしょうか。
もちろん繰り返し練習する必要はありますが、繰り返し行う回数が増えれば増えるほど技術が必ず身に付くという保証はありません。
指導者からすれば、練習しなければいけないことがたくさんあるかと思います。
例えば、野球であれば守備の練習も攻撃の練習もあるからやることが多いと聞きます。
もちろん守備も攻撃の練習も必要です。
しかし、それを1日で練習をしなければいけないことなのかということです。
これについては、陸上競技の十種目競技と比較をしてみましょう。
十種目競技は、10の種目を2日間で行い各記録を得点に換算してその合計点で競います。
十種目競技の選手は、毎日十種目練習しているかというとそうではありません。
今日はこれとこれを行おう、というように分けで取り組んでいます。
これを考えると攻撃も守備も全部やらないといけないと考える必要はないのではないでしょうか。
十分な睡眠で動きが身に付く
睡眠は、動きを脳に定着させる時間になります。
脳の働きの中では、単に知識を記録する以外に動きの手順を記録し記憶する働きもあります。
練習をした動きの手順が休養を取っている間に脳の中で整理されて定着すれば、次からそれを発揮しやすくなります。
技術を習得する為には、脳の中に動きの手順を定着させる為の時間が必要になる、ということです。
その為に睡眠時間はとても重要になるのです。
必要な睡眠時間は個人によって変わるので、一概には言えませんが6~8時間程度を目安にすると良いかと思います。
運動でエネルギーを使っていれば、睡眠時間はさらに増やさないといけなくなるので、たくさん身体を動かしている子供は、9~10時間くらい必要になるかもしれません。
長く練習してできるまで続けるよりも、練習したらしっかりと休養、睡眠を取って脳に定着させてあげることが重要になります。
また、過去のオーバートレーニングに関する研究では、練習時間が長いことは重要な要素になりますが、長い練習を起伏なく毎日続けることが最もオーバートレーニングになりやすいと言われています。
練習時間が同じでも1週間の中で練習量が多い日と少ない日を作るとオーバートレーニングになりにくくなります。
練習量の少ない日に身体を回復させる時間に費やすことができます。
このように長時間トレーニングにメリットはほぼありません。
長時間の練習・トレーニングは選手を消耗させて健康状態を悪くすることのほうが問題ではないでしょうか。