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私たちの心とは何?大脳辺縁系・大脳皮質で生まれる、心を豊かにする6つのアプローチ

みなさんは日々の忙しさや人間関係などのストレスで精神的に疲れてはいないでしょうか。
現代は、これだけ生活が豊かになり飢餓に苦しむこともほとんどなく、暑さや寒さをしのいで快適に暮らせるようになりましたし、ネットで世界中の娯楽と知識が手に入るようになったにも関わらず多くの人は心を病んでいるのです。
WHO(世界保健機関)によると2023年現在、世界で約2億8000万人がうつ病で苦しんでいると推計しています。
そもそも私たちの心とは何なのでしょうか。
私たちの中で生まれる感情について知っておきましょう。

私たちの心(感情)は進化の過程で生まれてきた

感情

私たちには、喜び、不安、怒り、悲しみなど様々な感情があります。
感情があることによって友人との会話を楽しんだり、旅行の計画を立ててわくわくしたり、仕事で評価されれば嬉しくなりもっと頑張ろうと思えたりして人生を豊かにしてくれます。

その一方で人間関係や経済情勢などで不安を感じて心を病んでしまう場合もあります。
中にはポジティブな感情だけが湧いてくれば良いと思うかもしれませんが、私たちはロボットのように淡々と生きらません。
なぜ私たちは不安や喜び、怒り、悲しみなどの感情に左右されてしまうのでしょうか。
感情を知る為には、私たちの進化の歴史を知る必要があります。

私たち人間の身体は1~2万年前の狩猟採集民族であった状態からあまり変わっていないとされています。
ある種に大きな変化が生じるには何万年、何十万年とかかるからです。
狩猟採集民族にとって生きることの理由は「生き残って子孫を残すこと」です。
その為に身体や脳が進化してきました。
大前提として脳が最優先してきたことは、幸福を感じる為ではなく生き延びることです。

生き延びるには、飢餓を乗り越えて野生動物などから身を守っていく必要があります。
その為、身に及ぶ危険に対して著しく反応をする人は、生き延びる確率が高かったと言えます。

例えば、草むらでガサガサと音がしたら野獣が潜んでいるかもしれないと警戒をする、そうやって生き残った人々の子孫である私たちには強い警戒心が根強く備わっています。

私たちは、進化の過程で命を繋いでいく為に、不安や恐怖という感情を持つようにプログラミングされてきたわけです。

また、木にたくさんのバナナが実っていたとします。
エネルギーが早急に必要であれば、空腹感と勇気が湧いて高い木を必死に登ろうとするのではないでしょうか。
エネルギーが満たされているのであれば、ケガをする危険性があるので、恐怖や満腹といった感情が脳内で湧いて木には登らないという決断になります。
危険を冒してしまうと転落死などのリスクがありますが、過剰なまでに慎重になってしまっては今度は飢え死にしてしまいます。
食事をするという行為一つにおいても、生き延びる為に選択を誤らないように状況に応じて様々な感情が湧き立つようになっているのです。

その他、狩猟採集民族であった私たちは、集団で行動をしていたので集団から外れてしまうと食料の確保ができなくなり生命の危機に繋がってしまう可能性が高まります。
なので集団から外れる孤独への恐怖、不安、悲しみ、仲間と一緒にいられる喜び、安心感、幸せなども強く感じるようになっています。

感情は無い方がむしろ楽だと思うこともあるかもしれませんが、生き延びていく為に脳が感情を使ってその人の行動を指揮し、背中を押していると言えます。
心は私たちの子孫が遺伝子として残してくれた命を繋ぐ為の大事な生命線と言えます。

人間の持つ2つの心

私たちは嗅覚、視覚、聴覚、触覚、痛覚、平衡感覚といった感覚系を介して、外界の情報を感知し、自らがどのような状態にあるかをモニターしています。
各感覚器官より得られた感覚情報は、脳の各領域に伝わり処理されていきます。
脳内に伝わった感覚情報は、視床を介して脳の奥にある大脳辺縁系へ伝わり、それと並行するかたちで脳の外側に存在する大脳皮質へと伝わります。

感覚情報が脳に伝わる⇒大脳辺縁系・大脳皮質に伝わる

大脳辺縁系で生まれる心(情動)

心は大脳辺縁系で生まれます。
感覚情報をもとに大脳辺縁系の偏桃体では、本能的に瞬時に湧き起こる恐怖、怒り、悲しみ、喜びなどの情動が生まれます。

例えば、狩猟採集民族時代で言えば、猛獣に出くわした際に視覚情報などが大脳辺縁系に届けられ偏桃体で瞬時に恐怖という心が湧いてきます。
こうした情動が本能的に湧いてくることで生命維持の為に適切に逃げるという行動を起こすことができます。
現在では脳は狩猟採集民族の頃から変化していませんので、試験前やプレゼン前などの張り詰めた雰囲気や人前で話す状況から生命に直結はしませんが不安や緊張という情動が生まれます。
また、強い情動は記憶を司る海馬において、記憶を強く刻むように作用し長期記憶へと変わっていきます。
これによって、また似た状況に直面した時に瞬時に対処法を決定することができます。
このような経験の積み重ねによって行動の選択の精度を高めて生存確率を高めてきたと言えます。

大脳皮質で生まれる心(感情)

人間らしい感情は大脳皮質でコントロールされています。
大脳皮質では、より精密に感覚情報が処理され正確で冷静な判断が大脳辺縁系で生まれた心を修正していきます。
大脳皮質の中でも前頭葉に位置す前頭前野は偏桃体をコントロールするという大切な役割を担っています。

例えば、偏桃体で生まれた怒りに対して「今は怒るような状況でないから抑制しよう」と判断し、偏桃体で生まれた心(情動)を受け流します。
あるいは、その怒りを客観的にとらえ「私は今怒っているけど何に対して怒っているのだろう」と根本的な原因や打開策を分析することで怒りをスムーズに処理するなどを行っています。
大脳辺縁系で生まれた情動を大脳皮質では、より人間的な理性の心に変化させています。
発生した感情をどう捉えて対処するかは、その人の前頭前野の発達具合によって異なると考えられています。

人間は、人間社会の構図に対応をする為に大脳皮質を進化させて他の動物にはない人間らしい感情を作り上げてきたと言えます。

大脳辺縁系・大脳皮質を活性化させるアプローチ

脳伝達イメージ

共感

性格は半分が遺伝で決まっているとされています。
表面的な性格を変えることはできても根本的な性格はあまり変化しないと言われています。

しかし、様々な心の体験をすることで大脳辺縁系で生まれる心も少しずつアップデートされていきます。
ですので、様々な心の体験、喜び、幸福感、怒り、恐怖、悲しみなどを体験することが大切になります。
自分自身で体験することも重要ですが、共感することでも大脳辺縁系・大脳皮質を活性化していくことができます。

共感には、情動的共感と認知的共感があります。
情動的共感は、誰かが悲しみ涙を流している姿を見て、自分まで悲しくなるという他者の感情を共有することを言います。

認知的共感は、相手と同じような感情を抱くのではなく、相手は悲しんでいると他者の心を理解するプロセスを指します。

様々な経験

前頭前野の発達具合は、その人の育った環境によって大きく左右されることが分かっています。
これは、裕福な家庭とかではなく、いかに多くの経験をしたかどうかということです。
豊かな自然環境で育ったり、スポーツに打ち込んだり、多くの芸術作品に触れる機会に恵まれていたりすると様々な心のコントロールをしやすくなる傾向がみられます。
このような経験の豊かさによって世の中には多様な人がいて人生には様々な出来事が起こり得るなど前頭前野が学習を積み重ねていくことができます。

運動

近年の研究で運動をすることでも大脳皮質の前頭前野が活性化されることが分かっています。
運動をすると脳への血流が増えて前頭前野の血流も増加して働きが良くなります。
長期的に運動を行うことで前頭前野に新しい血管が作られ、血液や酸素の供給量が増えて老廃物の除去も促され機能が促進すると考えられています。
また、定期的に運動をすることで前頭前野と偏桃体のネットワークが強化されて、効率よく前頭前野が偏桃体を制御できるようになります。

セルフコンパッション

自分を労わることを指します。
近年の心理学研究でも注目されています。
セルフコンパッションにおける自分への思いやりには3つの基本要素があります。

自分へのやさしさ
自分が困っている時も優しく労わるような気持ちで意識的に自分を癒そうとする心です。

他者と共通の人間性
辛いのは自分だけでなく、他者も同じような失敗や経験をしています。
決して自分だけではないということを再認識する心です。

マインドフルネス
今自分が感じていることや考えていることに集中して受け入れることです。
良い、悪いという評価ではなく、そのままの状態を受け入れてあげる心です。

人・動物との繋がり

心に安らぎを与えて豊かにしてくれる物質としてオキシトシンがあります。
親子や恋人など親しい人間関係でのスキンシップで分泌されて、愛情や信頼感が増して絆が深まることが分かっています。
人と動物が触れ合うことでもオキシトシンが分泌されます。
ペットを飼えなくても動物と触れ合える場所に行き、見る、触るなどの行動でオキシトシンは出ると言われていますので心を癒す為に動物と触れ合ってみるのも良いでしょう。

推し活

推しとは、他人に勧めたいほど気に入っているものになります。
強い支持、憧れの気持ちを表現する言葉として若者を中心に広がっています。
実際に推しがいることで人生の幸福度が上がることが分かっています。
推しというと、アイドルやアニメキャラクターのイメージが強いかもしれませんが、スポーツチームや特定のブランド、動物、植物なども入ります。
強く心を引き付けられるものであれば、それが推しと言えます。

アイドルを推している人が多いのにも実は理由があります。
人間の脳は、踊っている人の姿を見ているだけで脳内でセロトニン、ドーパミン、エンドルフィンなどの幸福感を感じさせる神経伝達物質が分泌されるからです。
さらに動きが揃ったダンスパフォーマンスは、見る側の脳にさらなる快感をもたらしてくれます。

これらの刺激によって心が豊かになっていきます。
毎日の生活の中で脳へアプローチをして自分自身の心を豊かにしていきましょう。