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トレーニング・フィットネス

最適なトレーニング頻度はよく分かっていない!女性や高齢者は容量を減らして週4~5回が良いかも

標準的なプログラムでは週2~3回だが、よく分かっていない

トレーニングは一体どのくらいの頻度で行えば効果的なのでしょうか。

標準的なトレーニンググプログラムでは、最適な頻度は週2~3回となっていますが、これに対して「毎日行ってはいけないのか」「体力を消耗するような種目は週1回でも良いのか」など様々な疑問を持たれる人も多いと思います。

一般的なトレーニングであれば、週2~3回で効果が出ると言うことは様々な研究で実証されていますのでこれに沿って行えば大きく間違えることはないと思います。

ですが、トレーニングによる頻度とその効果に関する科学的知見はまだまだ不足しているのが現状です。
つまり、適切な頻度と言うのはよく分かっていないのです。

近年では、レジスタンストレーニングの普及に伴ってトレーニング頻度そのものをテーマにする研究も増えてきていますので、今後の研究報告待ちと言うことになりそうです。
しかし、研究は筋肥大、つまり筋肉量ではなくて、筋力に対する研究が多いようです。
目的的によってトレーニングの仕方は変り、最適な頻度も変わってくることも考えることができます。

超回復は便利な概念

深呼吸している女性

これまで長い間、適切なトレーニング頻度について一般的なストレスに対する生理反応を模したモデルで説明をされてきました。

トレーニング後は、生体には、まずネガティブな方向に向かう応答として疲労が出現します。
疲労は少しずつ回復していき元の状態に戻り、さらに以前の状態を超えていきます。
これが超回復と言われる現象です。

超回復は短期的な適応と見ることができます。
この短期的な適応を累積したものが長期的適応としてのトレーニング効果になると考えることができます。
当然、超回復が起こった状態で次のトレーニングをすることが効果の累積に繋がりますので、適切な間隔を与えることが重要です。
間隔を空け過ぎてしまうと単に疲労と回復の繰り返しになってしまい、累積効果が得られないことになります。
反対に間隔を詰め過ぎてしまうと回復中に次の刺激を受けることによって疲労の累積や能力の低下に繋がります。
疲労の蓄積がいわゆるオーバートレーニングになります。

こうした説明は、視覚的にもとても分かりやすいです。
特に適切な頻度があると言うことについては、説得力が強く、経験則からも週2~3回を適切な頻度とする考え方が自然に定着してきたと考えられます。

超回復を可視化することができれば、簡単に頻度の設定が可能と考えられますが実施することは極めて困難であり、超回復は便利な概念とも言えます。

例えば、10週間20回のトレーニングで筋力が10%向上した場合を考えてみましょう。
筋力はある日突然増加したわけではなく、1回のトレーニングごとに平均0.5%ずつ増えてきたと考えるのが妥当です。
これはほとんどノイズレベルの変化で正確に検出することは現実的ではなく不可能と言えます。
ですが、特殊なトレーニングの場合は、測定することが有用になることもあります。

例えば、高強度の伸張性トレーニング(エキセントリック運動)をすると筋肉に微小損傷が生じて筋力は翌日から2日後にかけて60%程度まで低下します。
そこから完全に回復するまで10日以上かかることもあります。

このように疲労が大きく、その回復に時間がかかるような場合は少なくとも初期のプログラムでは頻度を1~2週に1回程度まで落とす必要があることが示唆されます。

一方、80%1RM×8回×3セットの通常のトレーニングの場合、筋力はトレーニング直後に70%程度まで低下しますが、1時間後には90%程度まで回復します。
多くの場合は、翌日にほぼ完全に回復しますので、これを毎日行うことの是非については結論付けることは難しいと言えるでしょう。

トレーニング容量と頻度の関係

筋トレグッズ

トレーニングの適切な頻度は、トレーニング容量を考えないといけません。
トレーニング容量が頻度と強く関連していると言うことです。
1回のトレーニング内容を同じにして頻度のみを変えてしまうと、結果的にトレーニング容量も変わってしまいます。

例えば、同じトレーニングプログラムを週1回行う場合と週6回行う場合では、週当たりの容量に6倍の差があります。
トレーニングの効果に差が出てもそれが頻度によるものなのか容量によるものなのかが分かりません。
そのような場合、全体の容量を一定にすると言う手はあります。
先ほどの例では、週1回行うプログラムの容量を6分の1にして週6回行い、週1回との間で効果を比べればいいでしょう。

しかし、週1回では刺激が不十分でないのかと言う問題も出てきますが、ある研究によると週あたりのトレーニング容量が同じであれば、トレーニング効果は同じと言う報告もあるようです。
この研究報告からすると同じことをするなら週1でも週6でもその効果は変わらないのかもしれません。

トレーニング頻度に関しては、何をどのくらいしたのかトレーニング内容によって考慮する必要があると言えそうです。

研究は増えたが結果はまだ不明

2010年以降には、人間を対象としたトレーニングの頻度と長期効果の関係を調べる研究が増えてきています。
Grgic(2018年)には、研究論文の中から22編をピックアップし、男女、種目、年代などの様々な条件ごとにメタ解析を行っています。

全研究を対象とした場合、効果はトレーニング頻度とともに増加し、週4回以上(4~6)で最大になりました。
このことから週2~3回が最適な頻度とする標準的なプログラムとは相反するように見ることができます。
ですが、トレーニング内容を細かく見ると、強度や容量が不足気味になっているようです。

また、対象者はトレーニング未経験者で若者から高齢者まで幅広いです。
特に有意な頻度の効果が認められたのは女性と高齢者が対象となる研究のようです。
これらが全体の結果を引っ張っている可能性があります。

こうした理由から頻度が高いと効果が高いのは、トレーニング容量が増加したからではないかと考えることができます。

一方で容量を一定にして頻度を変えた研究についての結果です。
この場合は、筋力増強効果はトレーニング頻度に有意に依存しないと言う結果になりますが、週2回が最適と言う傾向が見られました。

分析対象の研究が増えれば、この点について明確になってくるかと思います。
筋肥大効果については、残念ながらまだまだ研究が少ないのが現状です。

また、トレーニング実践者を対象とした研究もいくつか行われていて、容量一定の条件では週1回、2回、3回、6回の頻度の間で筋肥大効果に有意差は認められないようです。
ただし上腕三頭筋については、週3回の効果が週6回に比べて高かったとされています。

トレーニング頻度とタンパク質合成

マウスを使った実験になりますが、トレーニング間隔と筋タンパク質合成反応の関係を調べた実験があります。
対象は腓腹筋で等尺性最大収縮3秒×10回×5セットのトレーニングを8時間後、24時間後、72時間後の間隔で行いました。

その結果によると間隔を短縮するほど筋繊維内でのタンパク質合成を指令する反応mTORシグナル伝達系は、強く活性化しました。
ですが、リボソームにおけるタンパク質合成自体は反応せず、むしろ抑制されました。

その為、8時間、24時間、72時間の三者では72時間が筋肥大の為に最適な間隔と考えることができるようです。
同様の条件で長期効果も調べた結果によると筋肥大の程度は確かに72時間で最も大きくなり、8時間では筋委縮が起こりました。
8時間では、タンパク質分解系が強くなったと言うことです。

これはあくまでマウスを使った実験であり、人間でも同じようなことになるとは必ずしも言えませんが、少なくとも間隔を詰め過ぎてしまうと筋委縮が強く起こり逆効果になってしまうと考えられます。
マウスより人間の回復速度が速い可能性は低いのではないでしょうか。

トレーニングの刺激が十分に強い場合、週2~3回の頻度が適切ではないかと考えられます。

女性や高齢者の場合、容量を減らして頻度を増やす

バーベルスクワットをする女性

トレーニング頻度に関しては、まだまだ不明な点が多くあります。

トレーニング実践者の場合、スプリットルーティンを用いてプログラムの内容が多様になるかと思います。
なので一概に最適な頻度を決めるのは、とても難しいですし不可能かもしれません。

その一方で最近の研究から高齢者や女性の場合は、1回のトレーニング容量を減らして週4~5回まで頻度を高めると言う方法の有効性が認められています。

例えば、スクワットを1日1セット、週5回などのようなプログラムも良いかと思います。
このようなプログラムであれば、心理的なストレスが小さくなり継続もしやすくなるのではないでしょうか。

運動は継続させることが最も大切なので、習慣化する為にもⅠ回のトレーニング容量を減らすのは有効な方法かと思います。
特に女性や高齢者の人は、このような方法で行ってみてはいかがでしょうか。