どんなトレーニングをしても筋肉は遅筋化する、サボると速筋繊維が増える
筋繊維はトレーニングをすると遅筋化する
筋繊維には、大きく分けると瞬発力に優れた速筋繊維と持久力に優れた遅筋繊維があります。
これらの筋繊維の割合は個人個人で異なり遺伝的要因が強いとされていますが、トレーニングをしても筋繊維の変化は起こります。
速筋繊維の中にもより瞬発力に優れたタイプⅡxは、持久的なトレーニングをするとより遅筋繊維に近いタイプⅡaにシフトしていきます。
人間の場合、そこから遅筋繊維であるタイプⅠにシフトすると言う報告はないようですが、動物では遅筋繊維であるタイプⅠに変わってしまうことが分かっています。
動物で変化が起ると言うことは、人間でも同じようなことが起こる可能性があると考えることができるでしょう。
では、持久的なトレーニングではなくて、筋力や瞬発的な能力を高めるトレーニングをした場合はどうなるのでしょうか。
例えば、ウエイトトレーニングで大きな筋力を発揮し筋肉を大きくするようなトレーニングを繰り返した場合、遅筋繊維が速筋繊維に変化することがあるのでしょうか。
結論からすると、それは残念ながら起こりません。
動物にレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)をさせることは難しいので、人間の筋肉を採取して調べられた研究がいくつかあります。
そして、そのほとんどがタイプⅡxからタイプⅡaに移行すると言う結果が出ています。
つまり持久的なトレーニングをした時と同じような変化が起こると言うことなのです。
アメリカのある研究報告によると投てきなどのパワー系のアスリート、それもオリンピックレベルのトップ選手の筋肉を調べたところ、タイプⅡxに分類される筋肉がほとんどなく、ほぼ全てがタイプⅡaになってしまっていたそうです。
一般の人の場合、タイプⅡxとⅡaの比率は1:1~1:2と言われていますが、トップアスリートになるとⅡxがほぼゼロに近いと言うことです。
それくらいトレーニングをすることで持久力のあるタイプⅡaに変わってしまっていると言うことです。
このことから筋肉の筋繊維は、どんなトレーニングをしてもよりスタミナのある筋繊維に変わっていくと考えて良いでしょう。
ではなぜパワー系のトレーニングをしても持久力のある筋繊維に変わっていくのでしょうか。
理由として考えられるのは、トレーニングの量です。
パワー型のアスリートもスプリンターも長時間のトレーニングをしないといけません。
たくさん走り、たくさんジャンプをし、たくさん投げる、これらをしないと競技に勝てるようになりません。
1回1回の動作は瞬発系ですが、何度も繰り返すと言うことは結果的に持久能力も必要になってきます。
また、ある程度のスタミナがないと、試合で勝ちぬくこともできません。
なので、筋肉の持久性は自然と高まってくると考えることができます。
ボディビルのように筋肉を鍛えて太くする場合も普段のトレーニングで筋肉をいかに疲労困憊まで追い込むかと言うことが重要なファクターとなります。
すると当然、筋肉は太くなりながらもスタミナも併せ持つ筋肉へと変わっていきます。
どんなトレーニングをしても筋繊維は遅筋化が起こります。
筋肉を使わなければ速筋化が起こる
トレーニングをすることで筋繊維は、より持久力のある筋繊維に変化をしていきます。
では、持久力のある筋肉を瞬発力のある筋肉に変化させることはできないのでしょうか。
遅筋繊維を速筋繊維にすることはできるのでしょうか。
実は、その方法がないわけでもないのです。
それは、筋肉を極力使わない、何もしないと言う方法です。
筋肉を使わなければ、タイプⅡxが増えていくと言うことは実験によって証明されています。
宇宙飛行士が無重力空間で筋肉を使わない状況になったり、骨折などのケガで長期間ギブス固定していたりするだけでも筋肉の中では、タイプⅡaが減ってⅡxが増えると言う変化が起こります。
瞬発力のあるタイプⅡxを増やしたいなら基本的に怠ければ良いと言うことになります。
タイプⅡaよりもⅡxの方がよりスピードが速いのでスピードを追求したい場合、トレーニングをサボることが最良の選択と言えるかもしれません。
ですが、サボり過ぎてしまうと筋肉は委縮し筋力も低下してしまうので弱くなってしまいます。
筋力が弱くなってしまっては、結果的にマイナスになってしまうでしょう。
それを注意しながら、ちょうどいいタイミングでトレーニングをすると一番良い状態にもっていくことができるかと思いますが、これは現実的ではありませんし問題もあります。
なぜならスポーツは1回の力発揮で勝負するわけではありません。
仮にⅡxが増えて瞬発力が高まってもそれを維持する持久力が落ちてしまうと結果的にマイナスになってしまうことでしょう。
スポーツでは、高い力を持続的に発揮できる能力がとても重要な要素になります。
タイプⅡxだけ増やしても実際のスポーツパフォーマンスが高まるわけではありません。
力もあってスピードもあり尚且つ、持久力もある程度あると言うのがスポーツの現場では重要になってきます。
2週間で筋繊維は変化する
トレーニングをしてどのくらいで筋繊維に変化が起こるのか調べた実験があります。
それによると2週間くらいで変化が起こったそうです。
全てが一気に変わるわけではありませんが、割と早い段階で変わり始めるようです。
これはタイプⅡaからⅡxへの変化も同じだと考えられます。
筋肉の中では、2週間ほどで代謝的な対応が起こって筋繊維の性質そのものを変化させると言う仕組みがあるのではないでしょうか。
時間が取れなくて1週間ほどトレーニングができなくなると言うこともあると思います。
そして、トレーニングを再開した時に回数ができなくなってしまったと言う経験もしたことがある人も多いのではないでしょうか。
軽かったバーベルが重たくなるわけではありませんが、例えば5回できたものが3回しかできなかったと言うようなことです。
これは筋力の問題ではなくて、筋繊維のタイプの変化が起こってできなくなってしまったのかもしれません。