妄想障害(妄想性障害)とは?現実と異なる確信を持ち続ける精神疾患の症状・診断・治療
💡 妄想障害の定義と特徴
妄想障害(Delusional Disorder)、または妄想性障害とは、現実にはありえない、あるいは根拠がないにもかかわらず、本人が揺るぎない確信を持ち続ける「妄想」が中核症状として持続する精神疾患です。
この病気の最大の特徴は、この妄想を除いては、日常生活や社会生活において比較的支障がなく機能していることが多い点です。
周囲から見ても、本人の行動や言動が不妄想的(妄想的ではない)である限りは、正常に映ることがあります。
📌 妄想障害の核となる症状
妄想障害における妄想は、以下のような特徴を持ちます。
- 持続性:通常、1ヶ月以上にわたって持続します。
- 非現実的確信:反証となる証拠を突きつけられても、その確信が揺らぐことがありません。
- 非奇異的:妄想の内容は、現実的に起こりうる範囲の出来事が多いのが特徴です。(例:浮気されている、監視されているなど)
🔬 妄想障害の主な「タイプ」と症状
妄想障害は、その妄想の内容によっていくつかのタイプに分類されます。
| 妄想のタイプ | 妄想の内容 |
| 嫉妬型 | 配偶者や恋人が浮気をしていると確信する |
| 被害型 | 自分が悪意を持って不当に扱われている、陰謀に巻き込まれていると確信する |
| 被愛型 | 特定の著名人や地位の高い人物に愛されていると確信する |
| 誇大型 | 自分には特別な才能や能力、重要な発見がある、あるいは偉大な人物であると確信する |
| 身体型 | 身体に病気がある、寄生虫がいる、不快な臭いを発しているなどと確信する |
| 混合型 | 複数のタイプの妄想が同時に存在する |
⚖️ 診断プロセス:統合失調症との決定的な違い
妄想障害の診断は、主に精神科医による詳細な問診と、症状の経過を観察することによって行われます。
1. 診断基準と重要な除外事項
世界的な診断基準(DSM-5やICD-11)では、妄想障害と診断するために以下の点が重要となります。
- 妄想が1ヶ月以上持続していること。
- 幻覚、思考の障害(連合弛緩など)、陰性症状(感情の平板化など)といった、統合失調症に特徴的な症状がないこと。
- 妄想によって日常生活に大きな支障をきたすことがあるものの、全体的な社会機能(仕事や自己管理)は比較的保たれていること。
2. 統合失調症との違い
妄想障害と統合失調症は、どちらも妄想を主要な症状としますが、以下の点で明確に区別されます。
| 特徴 | 妄想障害 | 統合失調症 |
| 主症状 | 妄想のみ(非奇異的な妄想が多い) | 妄想に加え、幻聴、思考の障害、陰性症状など多様な症状 |
| 社会機能 | 比較的保たれていることが多い | 妄想以外の症状により、社会機能が著しく障害されることが多い |
| 病識 | 欠如していることが多い | 欠如していることが多いが、治療により回復することもある |
🏥 妄想障害の治療と周囲のサポート
妄想障害の治療は非常に難しく、特に患者さん自身に「病識(自分は病気だという認識)」がない場合、治療開始や継続に強い抵抗を示すことが一般的です。
1. 治療の難しさと薬物療法
- 薬物療法
抗精神病薬が用いられますが、妄想障害は統合失調症と比較して薬物の効果が限定的であることが少なくありません。
症状や副作用を考慮しながら、少量から慎重に投与されます。 - 治療の目標
妄想を完全に消し去るというよりは、妄想の内容に患者さんが囚われすぎないよう、現実と折り合いをつけ、社会生活を維持することを目標とすることが多いです。
2. 周囲のサポートで大切なこと
ご家族や友人、同僚など、周囲の理解が患者さんの安定には欠かせません。
- 妄想への対応
妄想の内容を真正面から否定することは、患者さんとの関係性を悪化させ、かえって妄想を強化させる可能性があるため避けるべきです。 - 信頼関係の構築
まずは患者さんの感情を尊重し、信頼関係を築くことが大切です。
その上で、治療や生活習慣の改善を優しく促します。 - 専門家への相談
妄想障害の特性を理解し、適切な対応方法について、専門の精神科医や心療内科医、臨床心理士などのアドバイスを受けることが非常に重要です。
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