フロイトの精神分析療法|無意識を意識化する「自由連想法」と「夢判断」
精神分析療法は、20世紀初頭にジークムント・フロイトによって創始された精神療法です。
この療法の根幹は、心の病気の根本的な原因を、自分自身では気づいていない「無意識」の領域にある心理的な要因(抑圧された感情、記憶、葛藤)に求め、それを「意識化」することで心の病の改善を目指す点にあります。
心の構造:意識、前意識、無意識
フロイトは、人間の心(精神)を以下の三層構造に分けました。
- 意識 (Conscious)
自分で気づいている心の部分。思考や感覚、行動など、自覚できる領域(全体のわずか3%程度)。 - 前意識 (Preconscious)
今は気づいていないが、努力すれば意識に上らせられる心の部分。
例:思い出そうとすれば思い出せる記憶。 - 無意識 (Unconscious)
抑圧され、意識の奥底にあり、自分でも知らない心の部分。
人間の行動や思考に大きな影響を与えていると考えられています(残りの約97%を前意識と無意識が占める)。
フロイトは、幼少期の衝撃的な体験や、社会的に受け入れがたい衝動などが無意識に追い込まれ(抑圧され)、それが長い時間を経て、心の病気や生きづらさとして現れると考えました。
無意識の扉を開く二大技法
精神分析療法では、抑圧された無意識の感情や葛藤を意識の表層に呼び起こすために、以下の代表的な技法が用いられます。
1. 自由連想法(Free Association)
自由連想法は、精神分析の基本となる技法です。
- 方法
患者は寝椅子などに横たわり、リラックスした状態で、心に浮かんだ感情、言葉、イメージを、それがどんなに取るに足らないことや不快なことであっても、一切の検閲を加えずに直感的に口にするよう促されます。 - 目的
意識的な思考の枠組みを外し、無意識下で何気なく結びついている連想の流れを辿ることで、抑圧された無意識の記憶や感情を意識に上げることが目的です。
このプロセスを通じて、患者は自分自身を深く見つめ直し、理解を深めていきます。 - 特徴
根本的な心の成長を目指すため、一般的に週1~3回の頻度の高い面接を、数年以上という長い期間にわたって行われます。
2. 夢判断(Dream Interpretation)
夢判断は、無意識が最も顕著に現れるとされる「夢」を分析する技法です。
- 考え方
夢は「無意識に至る王道」とされ、夢の中で起こった出来事(顕在夢)には、本人の無意識の願望や葛藤が象徴的な形で現れている(潜在夢)と考えられます。 - 方法
患者が見た夢の内容を治療者に伝え、治療者はその夢の意味を分析し、患者の無意識の葛藤や心理的な病理について理解を深めます。
精神分析の治療プロセスと適応
治療者は、自由連想法や夢判断を通じて呼び起こされた無意識の記憶や感情を分析し、「その記憶が現在の困難にどう影響しているか」を患者に伝えます。
この「無意識の意識化」と治療者による解釈(分析)を通して、患者自身が現在の状態に至った背景を理解し、心の病や生きづらさの改善を試みるのが、精神分析療法の基本的な流れです。
主に、強迫性障害、パニック障害、うつ病などの心の病気や、内面的な葛藤、対人関係の問題、漠然とした不安、自己肯定感の低さなど、薬物療法では解決しにくい根深い心理的問題を抱える方に対して行われています。
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