トレーニングは夕方が最適かも!?就寝前のプロテインは就寝時のタンパク質合成率を高める
就寝中は筋タンパク質の合成率が低下
筋力トレーニング後のタンパク質摂取については、1日3回の食事で最適なタンパク質量を摂取することが基本となります。
食事で不足するようであれば、プロテインで補うことで筋力トレーニングの効果を最大限に高めてくれるでしょう。
⇒トレーニング後のタンパク質摂取はゴールデンタイムよりもトレーニング後24時間が重要!
⇒トレーニング効果を高める最適なタンパク質摂取量はトレーニングの内容で変わる!
筋力トレーニングによる筋タンパク質の合成感度の上昇はトレーニング後24時間継続します。
なので、例えば夕方にトレーニングをした場合はその日の夕食、翌日の朝食、昼食までを考慮して良質なタンパク質を摂取することが重要です。
通常、筋タンパク質は合成と分解のサイクルを繰り返していますが、寝ている間は筋タンパク質の合成が刺激されなく、分解に大きく傾いてしまいます。
では、トレーニングで筋タンパク質の合成感度を高めた後、寝る前にタンパク質を摂取しておけば合成作用は高まるのでしょうか。
2008年マーストリヒト大学のビーレンらは、就寝前のプロテイン摂取の影響について調べています。
トレーニング経験のある男性にトレーニングを行ってもらい、就寝前に20~25gのプロテインを摂取するグループと水を摂取するグループに分け、就寝から9時間後、筋タンパク質の合成作用を計測しました。
その結果、両グループに有意な差は見られませんでした。
通常、タンパク質を摂取すれば筋タンパク質の合成作用は増加します。
ですが、就寝前の摂取では増加はしなかったのです。
ビーレンらと同じ研究グループに属するグルーンらは、その理由を「サーカディアンリズムによるもの」だと推測をしています。
サーカディアンリズムとは、睡眠や覚醒、血圧、体温、ホルモン分泌など生命活動の調整が24時間周期で行われるメカニズムのことです。
一般的には体内時計と言われているものです。
ほぼ全ての生物がサーカディアンリズムのもとで生きています。
人間の場合、このリズムが乱れると睡眠時間や体調の崩れ、病気にもなりやすくなります。
タンパク質を吸収する腸の運動もサーカディアンリズムに影響をされます。
たくさんの栄養を摂取する日中は腸の運動も活発になりますが、夜になるほど腸の運動は低下していきます。
ですので就寝中は、タンパク質の吸収機能も低下します。
タンパク質の吸収が悪くなるので就寝中は、筋タンパク質の合成が低下すると言うことです。
では、就寝中でもタンパク質の合成を高めることはできないのでしょうか。
就寝中でも筋タンパク質の合成を高めることはできる
サーカディアンリズムを考えると就寝中に筋タンパク質の合成を高めるのは難しいかもしれません。
ところがグルーンらは「20~25gの摂取量では筋タンパク質の合成を促進するには少なかったのでは?」と仮説を立ててさらに検証をしましました。
グルーンらは就寝中の被験者に経鼻胃管でタンパク質を直接摂取させて筋タンパク質の合成反応を調べました。
被験者にとってはとても辛い実験だったと思います。
段階的に摂取量を増やした結果、40gまで増やしたところで筋タンパク質の合成作用が促進されることが分かりました。
グルーンらの研究を受けて同じくマーストリヒト大学のレスらは次のような検証を行っています。
20代男性の被験者は、夕方に筋力トレーニングを行った後、就寝前に40gのカゼインを摂取するグループと水を摂取するグループに分けられました。
そして、就寝から約7時間後筋タンパク質の合成作用を計測した結果、水を摂取したグループに比べてカゼインを摂取したグループは約22%も多い筋タンパク質の合成作用が認められました。
この結果からすると筋力トレーニング後、就寝前に40gのタンパク質を摂取すれば、腸内運動が低下する就寝中も筋タンパク質の合成を促すことができると考えることができます。
さらに就寝前のタンパク質摂取が長期的な筋肉量に与える影響についても検証されています。
マーストリヒト大学のカッターらは、トレーニング経験のある若者を集めてトレーニングを行わせて就寝前に片方のグループにはカゼイン30gを、もう片方のグループには水を摂取させました。
これを12週間継続した結果、カゼインを摂取したグループは水を摂取したグループよりも大腿四頭筋の筋肥大、筋力増加が認められました。
つまり、筋力トレーニングを行った後、就寝前にタンパク質を摂取することは筋タンパク質の合成作用を高めて、その効果は長期的に継続をし、さらに筋肉を増大させる可能性があることが示唆されました。
トレーニング効果を高めるには、トレーニング後24時間で1日3回の食事でバランス良く良質なタンパク質を摂取することです。
食事でタンパク質を摂取できていない場合、就寝前にもタンパク質を摂取することで筋タンパク質の合成作用を促進させることができるようになると考えられます。
就寝前には30~40gのタンパク質摂取をすると良いかもしれません。
トレーニングは夕方が最適
トレーニング後と言っても午前中に行う人もいれば、会社帰りに行う人もいるでしょう。
では、1日のどの時間帯にトレーニングを行えば、就寝前のタンパク質摂取の効果が高まるのでしょうか。
2016年マーストリヒト大学のトロンメレンらは20代の被験者を複数のグループに分けて、それぞれ異なる時間帯に分けてトレーニングを行わせたたうえで、就寝前に同量のタンパク質を摂取させました。
筋タンパク質の合成率を比較した結果、夕方にトレーニングを行ったグループは、他の時間帯に行ったグループよりも30%以上、筋タンパク質の合成率が増加していました。
この研究報告についてオランダ食品栄養学先端研究所のホルベルダらによって追試が行われて同様の結果が示されています。
これらによると夕方のトレーニングが最も効果的であると言うことになります。
現代のスポーツ栄養学は、就寝前に摂取するプロテインはカゼインが最適としています。
カゼインは、消化・吸収の速度が穏やかなので摂取後、約6時間は血液中のアミノ酸濃度を高めることができるからです。
筋力トレーニングによる筋タンパク質の合成感度の上昇は、少なくても24時間継続をします。
ですが、1日のうちで大きな割合を占める就寝時の影響は見過ごされていました。
就寝前のタンパク質摂取による効果については、エビデンスレベルの高いメタアナリシスなどの検証が必要です。
しかし、少なくても1日3食の食事やプロテインでも最適な摂取量が足りていない場合は、就寝前にタンパク質を摂取することで筋力トレーニングの効果を高められる可能性が示唆されています。