肥満はアルツハイマー型認知症の発症にも関係!?全身に炎症が起きている状態
日本人の肥満の現状
肥満とは、身体に体脂肪が過剰に蓄積した状態のことを言います。
肥満かどうかを判断するには、主に身長と体重から算出されるBMIが用いられています。
健康診断などで見たことがあると思います。
日本肥満学会では、BMIが25以上で肥満、35以上で高度肥満に分類しています。
また、日本人の食事摂取基準2022年版では、フレイル予防と生活習慣病予防を考慮して目標とするBMIを定めています。
厚生労働省によって行われた2019年の「国民健康・栄養調査」によると日本人の肥満の割合は男性で33%、女性で22.3%になっています。
ここ数年間、女性は有意な増減は見られていませんが、男性は2013年から増加傾向にあります。
年代別で見ると男性で最も肥満の割合が高いのは40歳代で39.7%、次に50歳代で39.2%となっています。
この原因として、加齢と共に基礎代謝量が落ちることが考えられます。
それだけでなく、他の年代と比べて運動習慣のある人の割合が低いことや生活習慣病のリスクを高める量の飲酒をしている人の割合が高いなども考えることができます。
一方で女性では最も割合が高い年代は60歳代で28.1%と年齢が高くなると増加する傾向にあります。
男性と同じで女性も加齢によって基礎代謝が落ちてきますが、女性においては更年期も大きく影響をしていると言われています。
更年期は、閉経を迎える前後の数年間のことを言いますが、この時期はエストロゲンの分泌が急激に低下してきます。
エストロゲンは、脂質の代謝を促す働きもあるので分泌量が減ると太りやすくなります。
歳を重ねても適正体重を維持するには、運動習慣を身に付けて代謝が低下を防いで、バランスの良い食事を心掛けることが大切です。
肥満はアルツハイマー型認知症の原因にもなる
あまり知られていないと思いますが、肥満は高血圧や糖尿病などの生活習慣病だけでなくアルツハイマー型認知症の発症にも関わっていると言われています。
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβと言う異常なタンパク質が脳細胞に沈着することで発症すると考えられています。
原因となるアミロイドβの排出には、インスリン分解酵素が関わっていると言われています。
内臓脂肪が増えるとインスリンの効き目が悪くなり、この状態のことをインスリン抵抗性と言います。
インスリン抵抗性が高くなるとインスリンが十分に分泌されていても血糖値が下がらずに高血糖状態が続くので、さらにインスリンの分泌量が増えます。
するとインスリン分解酵素がインスリンの処理に追われ消費されてしまいます。
その結果、アミロイドβが蓄積していき、アルツハイマー型認知症の発症に繋がるとされています。
肥満は女性疾患のリスクが増加
肥満は、ホルモンのバランスを崩します。
その為、月経不順や不妊などの女性疾患に繋がることがあります。
女性ホルモンであるエストロゲンは卵巣から分泌されると思っている人が多いかと思いますが、実は脂肪細胞も関わっています。
脂肪細胞からもエストロゲンが分泌されているので、肥満になってしまうとエストロゲンが異常に増えてホルモンバランスを崩す危険があります。
また、閉経後の肥満は乳ガンや子宮体ガンのリスクを上げると言われています。
閉経後は卵巣からのエストロゲン分泌が低下しますが、肥満によって脂肪が多ければエストロゲンの分泌量は減らずに増えることもあります。
乳ガンや子宮体ガンの多くはエストロゲンがガン細胞内のエストロゲン受容体と結合することでガン細胞が増殖していくと言われています。
なので肥満によってエストロゲンの分泌量が多いと発症のリスクが高くなります。
肥満は全身に炎症が起きている
肥満の状態は、全身で慢性的な炎症が起きている状態と言えます。
脂肪細胞は、ただエネルギーを貯蔵しているだけではありません。
脳や腸などの身体の臓器や組織と情報のやりとりを行い、身体の機能を整える為に必要な生理活性物質を分泌する役割も担っています。
脂肪細胞より分泌される生理活性物質のことをアディポサイトカインと言います。
このアディポサイトカインには、抗炎症性アディポサイトカインと炎症性アディポサイトカインがあります。
抗炎症性アディポサイトカインは、食欲を抑制する働きのあるレプチン、動脈硬化をなど防ぐ働きを持つアディポネクチンなどがあります。
一方で炎症性アディポサイトカインは、インスリンの働きを抑制し糖代謝を悪化させるTNF-a、血栓を作りやすくして動脈硬化を促進するPAI-1、血圧を上昇させる作用をもたせるアンジオテンシノーゲンなどがあります。
肥満になるとサイトカインの分泌量が変化していきます。
抗炎症性サイトカインであるアディポネクチンの分泌量は減少し、炎症性サイトカインであるTNF-a、PAI-1、アンジオテンシノーゲンの分泌量は増加します。
また、抗炎症性サイトカインのレプチンは肥満になると効きにくくなるので食欲が低下しにくくなります。
脂肪が過剰に蓄積した脂肪細胞では、マクロファージなどの免疫細胞が集まってきます。
集まってきたマクロファージは脂肪細胞を刺激して炎症性サイトカインの分泌を促進させます。
さらに、マクロファージは脂肪細胞の分解も促進させるので、飽和脂肪酸などが増加します。
その飽和脂肪酸がマクロファージを活性化させます。
するとマクロファージは、さらに脂肪細胞を刺激するので悪循環が生じて炎症が慢性化していきます。
なので肥満になると炎症が全身で起きている状態になるのです。
肥満による慢性炎症によって高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症に繋がるとされています。
生活習慣を正して肥満を防止しよう
肥満は様々な病気の原因となるので、肥満にならないようにすることが大切です。
その為には、食事はバランスを考えて食べるようにしましょう。
食事の基本はバランスの良い食事です。
身体に必要な栄養素を過不足なく摂取することが最も大切です。
炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養をバランス良く摂るようにします。
バランスの良い食事をすると代謝も円滑になり太りにくくなります。
もちろんカロリーも大事ですが、まずは代謝を高める為にバランスの良い食事を心掛けてみましょう。
そして、毎日十分な睡眠を取ることと適度に運動をすることです。
睡眠不足は、ホルモンバランスを乱す原因になるので十分な睡眠を確保するようにしましょう。
規則正しい生活が良いので、なるべく毎日同じ時間に起きて寝るようにすると良いです。
運動は筋肉の衰えを防ぎ、血流が改善し代謝を良くしてくれます。
運動には、様々な病気の予防に効果があるので健康を維持するには運動も大事です。
適正体重を維持して肥満にならない為に、食事、睡眠、運動、規則正しい生活を意識してみてはどうでしょうか。。