糖質制限で体脂肪率が増えた!?その原因と解決策について
はじめに
「糖質制限を始めたのに、なぜか体脂肪率が上がってしまった…」
この衝撃的な事実は、多くの人を困惑させています。
しかし、それは努力が足りないからではなく、糖質制限のメカニズムと身体の反応に対する誤解が原因かもしれません。
この記事では、この「糖質制限中の体脂肪率増加」という一見矛盾する現象の真実を徹底的に解明して具体的な解決策を提示します。
結論から言うと、糖質制限中に体脂肪率が増える主な原因は「筋肉量の減少」または「隠れ糖質」の摂取、もしくは「基礎代謝の低下」のいずれか、またはその複合的な要因と考えられます。
なぜ糖質制限なのに体脂肪率が増えるという矛盾が起こるのか?
糖質制限は、炭水化物の摂取を制限することで、身体がケトン体をエネルギー源として利用し、体脂肪の燃焼を促進するという理論に基づいたダイエット法です。
多くの成功事例が報告されており、その効果は広く認知されています。
しかし、一方で「体重は減ったのに体脂肪率が増えた」「かえって体脂肪がつきやすくなった気がする」といった声も聞かれます。
これは、糖質制限を単なる「糖質を抜くこと」と捉え、そのメカニズムを理解せずに実践している場合に起こりやすい問題です。
糖質制限中に体脂肪率が増加する現象は、単なる体重の変化だけでは測れない、身体の複雑な生理作用が関与しています。
糖質制限中に体脂肪率が増加する深層にあるメカニズム
糖質制限中に体脂肪率が増えるという一見矛盾した現象には、いくつかの明確な原因が存在します。
これらの原因を理解することが、適切な対策を講じる第一歩となります。
1. 最も危険な落とし穴:筋肉量の壊滅的な減少
これは、糖質制限中に体脂肪率が増加する最も頻繁かつ深刻な原因です。
体脂肪率は「体脂肪量 ÷ 体重 × 100」で計算されるので、体重が減っても筋肉量が大幅に減少し、相対的に体脂肪の割合が増えれば、体脂肪率は高くなります。
- エネルギー源の枯渇と筋肉の分解
糖質は、私たちの身体にとって最も手軽で効率の良いエネルギー源です。
特に筋肉は、グリコーゲン(糖質の貯蔵形態)を主要な燃料として活動しています。
糖質摂取を極端に制限するとグリコーゲンが不足し、エネルギー不足に陥ります。
この時、身体は脂肪だけでなく筋肉をも分解してアミノ酸にして、それを肝臓で糖に変換(糖新生)してエネルギーとして利用しようとします。
これは、身体が飢餓状態に陥った際の緊急回避メカニズムです。 - タンパク質摂取の不足
糖質制限をしているからといって、タンパク質の摂取を怠ると、筋肉の合成が追いつかず、分解が進む一方になります。
特に、糖質を減らした分、何を食べるべきか明確な指針がないと、食事全体の栄養バランスが崩れやすくなります。 - 運動不足と筋肉の萎縮
糖質制限によりエネルギー不足を感じ、活動量が減少したり、筋力トレーニングを怠ったりすると、筋肉への刺激が減り、筋肉はどんどん衰えていきます。
筋肉は使われなければ、その維持にエネルギーを消費しないので、身体は不必要と判断して萎縮させてしまうのです。
【なぜ危険なのか?】
筋肉は脂肪よりも多くのエネルギーを消費する「焼却炉」です。
筋肉量が減少すると、安静時でも消費されるエネルギー(基礎代謝)が低下します。
これにより、同じ量の食事をしていても太りやすい体質になり、リバウンドのリスクも高まります。
2. 見過ごされがちな盲点:隠れ糖質と総摂取カロリーの過剰
「糖質制限をしているつもり」でも、実は知らず知らずのうちに多くの糖質やカロリーを摂取してしまっているケースは非常に多いです。
- 加工食品の巧妙な罠
パン、麺類、お菓子、清涼飲料水はもちろんのこと、市販のドレッシング、ソース、ケチャップ、スープ、レトルト食品などには、驚くほどの糖質が含まれています。
これらは食品添加物として「異性化糖」「果糖ブドウ糖液糖」「水飴」といった形で表示されていることが多く、一見すると糖質と分かりにくい場合もあります。 - 調味料の意外な糖質
料理に欠かせない醤油、みりん、料理酒、ケチャップ、ウスターソースなどにも、かなりの糖質が含まれています。
例えば、大さじ1杯のみりんに約10g、ケチャップに約4gの糖質が含まれることもあり、積み重ねると無視できない量になります。 - 「ヘルシー」食品の落とし穴
一見ヘルシーそうな果物や根菜類(ジャガイモ、サツマイモ、レンコン、人参など)も、糖質を多く含んでいます。
特に、糖質制限初期に安易に多量の果物を摂取してしまうと、糖質オーバーになることがあります。 - 脂質の過剰摂取
糖質を制限する代わりに、肉の脂身や揚げ物、バター、チーズなどを際限なく摂取してしまうと、総摂取カロリーが大幅に増加します。
脂質は1gあたり9kcalと、糖質やタンパク質(1gあたり4kcal)の2倍以上のカロリーを持っています。
健康的な脂質であっても、摂取量が多すぎれば体脂肪として蓄積されます。
【なぜ体脂肪が増えるのか?】
糖質制限の目的は、体脂肪をエネルギー源として利用することです。
しかし、摂取カロリーが消費カロリーを上回れば、余分なエネルギーを効率よく体脂肪として蓄積します。
糖質を減らしても、カロリーが過剰であれば意味がありません。
3. 身体の防衛反応:基礎代謝の低下
私たちの身体には、常に一定の状態を保とうとする「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」が備わっています。
- 飢餓反応としての代謝低下
摂取カロリーが極端に少ない状態が続くと、身体は「飢餓状態」と判断し、生命を維持するためにエネルギー消費を最小限に抑えようとします。
これが基礎代謝量の低下です。体温を維持したり、心臓を動かしたりといった生命活動に必要なエネルギー消費が減少してしまうので、同じ量の食事をしていても太りやすくなります。 - 甲状腺ホルモンへの影響
厳しすぎる糖質制限は、基礎代謝を調節する重要な役割を持つ甲状腺ホルモンの分泌に影響を与える可能性も指摘されています。
甲状腺機能が低下すると、全身の代謝が鈍化し、疲労感や冷え性、体重増加などの症状が現れることがあります。
【なぜ体脂肪が増えるのか?】
基礎代謝量が低下すると、日常活動や安静時に消費されるカロリーが減少します。
なので結果として、同じ量の食事をしてもエネルギーが余りやすくなり、それが体脂肪として蓄積されやすくなります。
4. 一時的な水分の変動による誤解
糖質(グリコーゲン)は、その貯蔵過程で大量の水分を一緒に貯蔵します。
- 糖質制限初期の体重減少の正体
糖質制限をすると、体内のグリコーゲンが消費され、それに伴い一緒に貯蔵されていた水分も排出されます。
これが、糖質制限開始直後に体重が急激に減少する主な理由です。
この体重減少は体脂肪の減少ではなく、単なる水分量の変化です。 - 測定のタイミングと条件
家庭用の体組成計は、体内の水分量の影響を受けやすいので、測定のタイミングや条件(食事の有無、運動後、入浴後など)によって数値が大きく変動することがあります。
水分が一時的に減った後に、食事や飲水で水分量が回復すると、体重が増加し、あたかも体脂肪が増えたかのように見えてしまうことがあります。
【なぜ誤解が生まれるのか?】
「体重は減ったのに体脂肪率が増えた」と感じるのは、初期の水分減少による体重減と、その後の体脂肪の変化を混同している可能性があります。
正確な体脂肪率の評価には、継続的な測定と、他の要因との総合的な判断が必要です。
糖質制限で体脂肪率を確実に減らす為の具体的な対策

ここまでで、糖質制限中に体脂肪率が増える原因を理解できたかと思います。
これらの問題を解決して、体脂肪を効率的に減らす具体的な対策を実践していきましょう。
1. 筋肉を守り育てる「良質なタンパク質」を徹底的に摂取する
筋肉の維持・増強は、体脂肪率を低下させる上で最も重要な要素です。
- 目標摂取量:体重1kgあたり1.5g〜2.0g
例えば体重60kgの人であれば、1日あたり90g〜120gのタンパク質を目安に摂取しましょう。
これは、鶏むね肉300g〜400gに相当します。 - 毎食均等に摂取
1食に偏らせるのではなく、朝・昼・晩の食事で均等にタンパク質を摂ることで、効率的に筋肉の合成を促します。 - 最適な食材の選択
- 動物性タンパク質: 鶏むね肉(皮なし)、ささみ、牛赤身肉、豚ヒレ肉、魚介類(サケ、マグロ、サバなど)、卵
- 植物性タンパク質: 大豆製品(豆腐、納豆、豆乳)、ブロッコリー、ほうれん草など
- プロテインの積極的活用
食事だけで十分なタンパク質を摂るのが難しい場合は、ホエイプロテインやカゼインプロテインなどのプロテインを補助的に活用しましょう。
特に筋力トレーニング後30分以内は、筋肉の合成が高まる「ゴールデンタイム」と呼ばれています。
2. カロリーオーバーを防ぐ「脂質の質と量」を最適化する
糖質を制限する分、脂質やタンパク質の摂取量が増えるのは自然なことですが、脂質の過剰摂取は体脂肪増加の直接的な原因となります。
- 良質な脂質を意識的に摂取
- 不飽和脂肪酸: オリーブオイル、アボカドオイル、アマニ油、えごま油、青魚(サバ、イワシなど)に含まれるオメガ3脂肪酸、ナッツ類など。これらは炎症を抑えたり、コレステロール値を改善したりする効果も期待できます。
- 飽和脂肪酸: バター、ココナッツオイルなど。摂り過ぎには注意が必要ですが、適量であればホルモン生成や細胞膜の構成に重要な役割を果たします。
- 脂質の摂取量に上限を設ける
具体的なグラム数よりも、「揚げ物を控える」「肉の脂身を避ける」「炒め物に使う油の量を減らす」「ドレッシングはノンオイルを選ぶか手作りする」など、意識的な選択が重要です。
目安としては、総摂取カロリーの20〜30%程度を脂質から摂るように調整しましょう。 - PFCバランスの見直し
糖質制限と一口に言っても、様々なレベルがあります。
極端な糖質制限ではなく、自分にとって無理なく続けられる糖質量(例:1日70g〜100g程度)を設定し、それに合わせてタンパク質と脂質の量を調整する「緩やかな糖質制限」から始めるのが成功の秘訣です。
3. 代謝を落とさない「戦略的な筋力トレーニング」をする
筋肉は、動かさなければ衰えます。
糖質制限中に筋肉を維持・増強することは、基礎代謝を保ち、体脂肪を燃焼しやすい体質を作る上で不可欠です。
- 全身の大きな筋肉を鍛える
スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどの「複合関節運動」は、複数の筋肉を同時に鍛え、効率的に筋肉量を増やします。 - 週2〜3回の習慣化
毎日行う必要はありません。週に2〜3回、集中的に質の高いトレーニングを行うことで、筋肉は十分に成長します。 - 有酸素運動との組み合わ
筋力トレーニングで代謝を上げた後、20〜30分程度のウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を行うことで、脂肪燃焼効果がさらに高まります。 - トレーニング前の糖質補給の検討
激しいトレーニングを行う場合、完全に糖質をカットするとパフォーマンスが低下し、筋肉分解のリスクも高まります。
トレーニングの30分〜1時間前に少量(10g〜20g程度)の吸収の速い糖質(例:バナナ半分、スポーツドリンク少量)を摂取することで、トレーニングの質を維持し、筋肉分解を抑制できる場合があります。
4. 隠れた糖質を徹底的に排除する「賢い食品選択」
目に見えない糖質が、あなたのダイエットを妨げている可能性があります。
- 原材料表示の徹底確認
購入する食品は、必ず栄養成分表示と原材料表示をチェックしましょう。
「砂糖」「ブドウ糖果糖液糖」「異性化糖」「水飴」「デキストリン」などの表記があれば、糖質が含まれている証拠です。 - 調味料の見直しと手作り
- 市販のドレッシング、ソース、ケチャップ、めんつゆ、焼肉のタレなどは糖質が多いです。
- 代わりに、塩、胡椒、ハーブ、レモン汁、お酢、オリーブオイルなどを活用しましょう。
- 手作りドレッシングやタレに挑戦するのも良い方法です。
- 外食・中食時の注意点
外食では、料理の味付けに多くの糖質が使われていることがあります。
揚げ物の衣、煮物のタレ、丼物、麺類、デザートなどは避けるか、少量に留めましょう。
ドレッシングは別添えにしてもらい、かける量を調整するなどの工夫も有効です。 - 嗜好品の再検討
清涼飲料水、缶コーヒー、お菓子、菓子パンなどは、糖質の塊です。これらを断つだけでも、摂取糖質量は大きく変わります。
5. 身体の機能を整える「質の良い睡眠とストレスケア」
ダイエットは食事と運動だけでなく、休息も非常に重要です。
- 睡眠の重要性
睡眠不足は、食欲を増進させるホルモン(グレリン)の分泌を増やし、食欲を抑えるホルモン(レプチン)の分泌を減少させます。
また、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促し、体脂肪の蓄積を促進します。1日7〜8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。 - ストレスマネジメント
慢性的なストレスは、コルチゾールを過剰に分泌させ、特に腹部に脂肪を蓄積しやすくします。
ウォーキング、瞑想、趣味の時間、入浴など、自分に合ったストレス解消法を見つけ、実践しましょう。
6. 正しい評価の為の「体脂肪率測定のコツ」
家庭用体組成計は手軽ですが、測定方法によっては誤解を招くことがあります。
- 「毎日同じ時間帯、同じ条件」で測定
起床後すぐ、排泄後、食前など、毎日決まった時間に、同じ服装(または裸)で測定することで、変動要因を最小限に抑えられます。 - 週に一度程度の測定で十分
毎日の細かな変動に一喜一憂せず、週に一度程度の測定で長期的なトレンドを把握しましょう。 - 複数回の測定で平均値を
数回測定して平均値を出すことで、より正確な数値が得られることがあります。 - より精密な測定も検討
スポーツジムや医療機関に設置されている高性能な体組成計(例:InBody)は、より正確な体脂肪量、筋肉量、水分量などを測定できます。
定期的に利用することで、自分の体の変化を客観的に把握し、ダイエットの軌道修正に役立てられます。
よくある質問(FAQ)

Q1. 糖質を全く摂らない「ケトジェニックダイエット」の方が体脂肪は減りやすいですか?
A1. ケトジェニックダイエットは体脂肪の減少に非常に効果的ですが、非常に厳格な糖質制限(1日20g以下)が必要であり、実行には専門知識と継続力が必要です。
安易に始めると、筋肉減少や体調不良のリスクが高まります。
初めて糖質制限を行う方や、運動習慣がない方には、まず緩やかな糖質制限(1日50g〜100g程度)から始めることをお勧めします。
Q2. 糖質制限中に甘いものが食べたくなったらどうすれば良いですか?
A2. 人工甘味料を使ったゼロカロリー飲料や、低糖質のスイーツなどが市販されていますが、依存性を高めたり、腸内環境に悪影響を与えたりする可能性も指摘されています。
まずは、ナッツやチーズ、ゆで卵など、糖質が少なくタンパク質や脂質が豊富なものを選ぶのが良いでしょう。
どうしても甘いものが食べたい場合は、少量にとして、頻度を減らす工夫が必要です。
Q3. 糖質制限中に便秘になりました。どうすれば良いですか?
A3. 糖質制限中は、食物繊維の摂取が不足しやすくなります。
野菜(葉物野菜、きのこ、海藻類)、アボカド、ナッツ類などを積極的に摂取しましょう。
水分補給も非常に重要です。それでも改善しない場合は、食物繊維サプリメントや、プロバイオティクス(ヨーグルトや納豆など)の摂取を検討してみましょう。
まとめ:賢い糖質制限で、体脂肪の悩みを解消する!
「糖質制限で体脂肪率が増えた」という経験は、決して珍しいことではありません。
それは、間違った方法でダイエットを進めていた可能性があるのかもしれません。
最後にダイエットを成功に導くための最重要ポイントを再確認しましょう。
- 筋肉は「焼却炉」!タンパク質摂取と筋力トレーニングで、筋肉量を維持・増やすこと。
- 「隠れ糖質」と「脂質の過剰摂取」に要注意!原材料表示を徹底し、PFCバランスを意識した食事を心がける。
- 身体の代謝を落とさない!極端な食事制限は避け、十分な睡眠とストレスケアで、心身の健康を保つ。
糖質制限は、極端に行わずに正しく理解し実践すれば、体脂肪を効率的に減らし、健康的な身体を手に入れる為の強力な方法にもなるかと思います。
焦らず、自身の身体と向き合いながら、無理のない範囲で継続できる方法を見つけていくといいのではないでしょうか。










