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筋肉から分泌されるインスリン様成長因子(IGF-1)が筋肥大に重要!成長ホルモンはあまり関係ない

筋肥大に成長ホルモンは重要視されていない

かつては、成長ホルモンが筋肥大に直接関わっていると考えられていましたが、近年ではあまり重要ではないと考えられています。
たまたま筋肉が太くなるよう刺激が加わった時、一種のパラレリズムとして成長ホルモンの分泌が上がるので、そこに因果関係がると言う考えが支配的になっていたのかと思います。

1980年代後半から2000年代前半くらいまでは常識として考えられていましたが、今では過去の知識であると言うことを覚えておきましょう。
もちろん全く関係がないわけではありませんが、どちらかというとマイナーな効果になります。

その一方で男性ホルモンであるテストステロンは、かなり重要な役割を果たしていることが分かってきています。

男性ホルモンの分泌を増やすには、トレーニングの容量を増やすしインターバルを短くすることが有効です。
ネズミなどの動物に男性ホルモンを長期的に作用させると、たいした運動をしなくても筋繊維が太くなることが判明しています。

このことからも男性ホルモンのテストステロンと類似するアナボリックステロイドがドーピング物質として効果的であると言うことも分かります。

成長ホルモンと違って男性ホルモンは、筋肥大にとても重要な役割をしています。

インスリン様成長因子(IGF-1)が筋肥大を促進

ホルモンは基本的に全身に作用します。
成長ホルモンは、脳下垂体から分泌されて、男性ホルモンは精巣から分泌されて全身を巡りながら筋肉に作用をします。

もし筋肥大における成長ホルモンの影響が強いのであれば、片腕のトレーニングを行うことで反対側の腕も同じように強くならないといけませんし、腕のトレーニングをしたら脚も太くならないとおかしいことになります。
しかし、顕著にそう言うことは起こりません。
なのでホルモンの影響よりも「筋肉を動かす」と言う局所的な仕組みの方が重要であると言うことになります。

そこで注目されているのが、成長ホルモンに似たインスリン様成長ホルモン(IGF-1)と言う物質です。
これは肝臓から分泌されますが、トレーニングをすると筋肉からも分泌されます。

インスリン様成長因子は、筋肉自体に働きかけたり筋サテライト細胞と言う幹細胞の増殖を促したり局所的に働いて筋肥大を促すことが分かっています。

では、筋肉にインスリン様成長因子を効果的に分泌させるにはどうすればいいのでしょうか。

それは瞬間的に大きな力を出すトレーニングではなく、少し長い時間、筋繊維が頑張って力を出すトレーニングです。
つまり、トレーニング容量を増やすことがインスリン様成長因子を増やすことに繋がります。

メカニズムは完全に解明されているわけではありませんが、容量の大きなトレーニングをすると一過的に成長ホルモンも多く分泌されます。

成長ホルモンが多く出るトレーニングが筋肉にインスリン様成長因子を作らせることと同様の刺激である可能性が高いと言うことでしょう。

成長ホルモンと筋肥大との間に直接的な因果関係があるわけではないので、成長ホルモンを分泌させることが目的になってしまうのは間違いになります。
ですが、成長ホルモンの分泌が質の高いトレーニングをした言う目安として考えることは間違いではないかと思います。

また、最近の研究では男性ホルモンはインスリン様成長因子のように筋肉からも分泌されることが分かっています。
このような筋肉由来の男性ホルモンは、精巣から分泌される循環型の男性ホルモンよりも筋肥大効果が高いと言うことになります。

ホルモンが筋肥大をさせると言う考えは乳酸疲労物質説と似ている

レッグエクステンション

循環型のホルモンの話は、乳酸疲労物質の話と似ています。

筋肉がオールアウトになるようなトレーニングをすると結果的に血液中の乳酸濃度が上がります。
筋肉周辺の乳酸濃度も局所的に上昇します。

こう言う現象を見て長い期間、運動と疲労との間には乳酸が介在していて乳酸そのものが疲労の直接的な原因であると考えられていました。

しかし、最近ではこの考えは間違いであったと言うことが分かっています。
乳酸は疲労を起こす物質と言うよりも筋肉のエネルギー源としても重要な働きをする二次的な代謝産物であると言う見方が強くなっています。

乳酸が多く出るタイプの運動は、短い時間で筋肉にたくさんのエネルギー消費を行わせたと言うことになります。乳酸が多く出れば、それが強い運動であると言う証になります。

1980年代後半から2000年代前半までは、分泌されるホルモンを頼りに様々なトレーニング処方に関する研究が進んだと言う歴史的な経緯があります。
中にはその時代の知識を今でも引きずっていて成長ホルモンが出るから効果が高いと言う考えから脱却していない見方が一部であるのも乳酸疲労物質説と同じ状況と言えます。
これらの考えは改めて行く必要があるでしょう。

成長ホルモンの影響はそれほど強いわけではなく、筋肉の局所的なインスリン様成長因子の分泌が筋肥大に重要なのです。