筋肉の「筋力型」「スピード型」は、関節のテコ作用やサルコメアの長さによっても決定

伸筋は抗重力筋

筋肉には、筋力型の羽状筋とスピード型の平行筋があります。
人間の四肢の伸筋には羽状筋が多く、屈筋には平行筋が多いです。

筋肉の構造は役割によって違う、スピードの平行筋、力の羽状筋、マクロ視点

では、なぜそうなっているのでしょうか。

人間はいつも重力に対して身体を支えていたり、跳んだり伸び上がったりしなければいけません。
この時多くの場合、伸筋が働き、これらは抗重力筋になります。

赤ちゃんがハイハイをする時も肘を伸ばすことで重力に逆らって身体を支えています。
成長と共に立ち上がるようになると膝も伸ばさないといけません。
そこで力を発揮するのが抗重力筋である膝と股関節の伸筋です。

これらの筋肉には、とても強い力が必要になります。
それに対して屈筋を使って関節を曲げる動作を行う際には、大きな負荷がかかると言うケースは日常生活ではほとんどありません。
重力に対して肘を曲げるのは、ダンベルカールをする時くらいではないでしょうか。

サルの仲間などでは、木渡りする時に肘を曲げることで身体を支えていますが、人間は木にぶら下がったり渡ったりすることはないので、上腕二頭筋に大きな力を発揮させるのは比較的特殊な動作と言うことになります。

関節を曲げる動作は、何かが飛んできた時に頭や顔を防御したりするなど、どちらかと言うとスピードが求められることが多いです。
ですので、筋肉もそのような構造になっているのです。

羽状筋、平行筋と言う筋繊維の形態は、筋内部の変速器としての役割を果たしています。
自動車で例えると、羽状筋はローギア、平行筋はトップギアと言うことになるでしょう。

力やスピードは関節のテコ作用によっても決まる

レッグエクステンション

筋肉の変速器は、内側だけでなく外側にもあります。
それが、関節のテコの作用です。

筋肉が「骨のどこに付着しているか」と言うことが問題になってきます。
簡単に言うと、関節(支点)に近いところに筋肉(力点)が付いていれば、筋肉が少し縮んだだけでも四肢の末端(作用点)の動きは大きくなります。
その代わりテコの原理によって末端が発揮する力は減衰してしまいます。

反対に関節から離れたところに筋肉が付いていれば、筋肉が少し縮んだだけでは末端はあまり動きません。
その代わりに筋肉が出した力は、あまり減衰せず末端に伝わるので発揮する力は大きくなります。

太ももの筋肉である大腿四頭筋を例にしてみましょう。
この筋肉は、膝蓋骨に付着し膝蓋腱を介して脛の骨に付いています。
筋肉が力を発揮することで膝が伸びてくるのですが、この時のテコ比は極めて大きくなります。
大腿四頭筋が少し縮んだだけでも膝の角度は、かなり大きく動くようになっています。
末端部が大きく動くようにできているので、その分大腿四頭筋が出した力はかなり減衰してしまいます。

例えば、50kgの負荷を付けてレッグエクステンションで力を発揮した時、大腿四頭筋が実際に発揮している力は500kgを容易に超えています。
逆に言うと500kgの力を出してやっと50kgのレッグエクステンションができると言うことになります。
これだけの代償をして末端の運動の大きさを増幅しているのです。

運動の大きさと共に大腿四頭筋には、大きな力が求められます。
動きを増幅する為に犠牲となってしまう筋力を補って尚かつ、余りある強さを必要とされているのです。

ですので、それに適した羽状角を持ち、その体積の中に多くの筋繊維を詰め込めるように設計されているのだと考えることができます。

筋肉が骨のどこに付着しているかによっても力やスピードは変ってくるのです。

力やスピードはサルコメアの長さによっても変わる

ダッシュ

筋肉の変速器のシステムには、もう一つの段階があります。
それはサルコメアの長さです。

サルコメアとは、筋肉が収縮する一つの単位です。
これが「長いか」「短いか」によって筋肉が収縮する力やスピードが変わってきます。

サルコメアは、筋肉の収縮を起こすミオシン分子のメカニズムによって基本的には、一定のスピードで縮みます。
短いサルコメアが二つ繋がっていると二つが同じ速度で縮むので全体としては2倍のスピードになります。
一方で一つのサルコメアが2倍の長さになると、速度は半分になりますが、力は2倍になります。

エビやカニのような甲殻類のハサミの中の筋肉は、筋繊維が羽状筋であるだけでなく、サルコメアが非常に長いです。
つまり、筋繊維の中も大きな力を出せるような構造をしていると言うことです。

人間では、サルコメアの長さに大きな違いはありません。
ですが、羽状筋・平行筋と言った筋肉の構造や速筋、遅筋と言う筋繊維のタイプ、そして関節のテコ作用によって筋肉の力やスピードは決定されています。
これらが全て「スピード型」に設計されている筋肉もありますし、全てが「力型」の筋肉もあります。

また、それぞれが複雑にミックスされたタイプの筋肉もあるので、人間全体で見ると様々なバリエーションが存在しています。
なので、個々の筋肉の性質は、それほど簡単に説明ができるものではないと言えます。

「筋力型」か「スピード型」かは、筋繊維のタイプだけでなく様々な要因によって決定されているのです。

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