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ヘルス&フィットネス~日々の健康・身体作りに役立つ知っておきたいこと~

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トレーニング・フィットネス

乳酸は疲労をするような運動をした結果としてできる、乳酸性作業閾値(LT)乳酸が一気に増えるポイント

乳酸は糖質の代謝産物

私たちは生きる為に常にエネルギーを生産しています。
体内では、ATP(アデノシン3リン酸)を分解することでエネルギーを得ています。

ATPとは、アデノシンに3つのリン酸が結合した物質です。
ATPを分解するとリン酸(P)が1つ外れてアデノシン2リン酸(ADP)になり、この過程でエネルギーが発生します。
糖質、脂質、タンパク質が代謝される過程でATPが作られます。

生体活動に必要なATPは、ATP-CP系、解糖系、酸化系と呼ばれる3つのエネルギー代謝によって供給されます。
運動時には、運動の強度や時間、個人のエネルギー代謝能力、呼吸系と循環系の能力、骨格筋の筋繊維特性などによって、3つの代謝系の利用割合が臨機応変に調整されています。

乳酸は筋肉でできて血液中に出てきますので、血液の乳酸濃度を測定することができます。

運動強度を上げていくとあるところで血液中の乳酸濃度が急激に上昇するポイントがあります。
この運動強度を乳酸性作業閾値(LT)と言います。

LTを最大酸素摂取量(VO2max)に置き換えると60~70%程度の運動強度になります。
乳酸は運動強度と非常に関係があります。

では、乳酸とは一体何なのでしょうか。

現在、スポーツ・体育を専門に学んでいる人であれば「乳酸は疲労物質だ」と答える人はあまりいないのではないでしょうか。

乳酸は長い間、疲労物質と言われていましたが、現在では疲労物質ではないことが分かっています。
乳酸は運動をすることによって糖質が分解される過程で筋肉の中でできます。
糖質の代謝産物が乳酸です。

乳酸は運動強度と密接な関係があり、強度が高ければ高いほど乳酸が多く出ます。
実際に高強度運動での疲労困憊時には、多くの乳酸が作られています。

1990年代以前は、このような理由により乳酸が身体に溜まってしまうことによって身体的な限界が来ると考えられていました。

しかし、研究が進んで2000年代になると「乳酸は疲労の原因ではなく、疲労をするような運動をした結果としてできる」と言うことが分かってきました。

乳酸が出たからと言って疲労困憊になり運動ができなくなるわけではないと言うことです。
乳酸は決して悪者ではないと言うことなのです。

乳酸性作業閾値、60~65%の強度から一気に乳酸濃度が上昇

運動する女性

運動強度を上げていくとそれに伴って乳酸濃度も上がっていきます。

ただし、乳酸の場合、心拍数のように直線的に上がっていくわけではなく、ある一定の強度までは緩やかに上がり、60~65%の強度のあたりから一気に上昇すると言う特徴があります。
このポイントが乳酸性作業閾値(LT)です。
そして、これを乳酸カーブと言います。

LTを超える段階から、それまで以上にエネルギーを使わなければ強度を保つことができなくなります。

また、当然ですがLTには個人差があります。

例えば、一般の人とトップアスリートが一緒にジョギングを始めたとします。
すると同じスピードであってもトップアスリートにとってはLTに達してない軽いレベルでしかないものが、一般の人にとってはLT以上のとてもきつい強度になります。
トップアスリートの60%強度は、一般の人にとってはそれ以上の強度になるのです。
これは日々のトレーニングによって磨き抜かれたエンジン性能の違いと言えるでしょう。
そして、マラソンランナーの順位は、このLTのわずかな差によるものかもしれません。

エネルギー代謝との関係、乳酸ハンドリング

燃えるイメージ

LTの運動強度の特徴は、下記のようなものがあります。

・エネルギー生産の貢献割合が酸化系から解糖系へシフトし始める
・解糖系の亢進によって血中乳酸濃度が増加する
・遅筋繊維に加えて速筋繊維の動員割合が増える

など

乳酸は、糖質が代謝された際にできるので解糖系にシフトする時に生成される物質です。
サッカーのように試合中、運動強度に強弱が生じるスポーツでは、ここぞという勝負所では、アクセルを全開し強く速いプレーを展開します。
そして、それによって乳酸が多く出ます。

では、軽いジョギングのようなペースに切り替わった時、発生した乳酸はどうなるのでしょうか。

発生した乳酸は、エネルギー源としてまた再利用されるのです。
乳酸は糖質の代謝産物であり、まだまだ分解されてエネルギーを生んでくれます。
乳酸の一部は、酸化系の方に戻ってエネルギー源として使われます。
この調整を乳酸ハンドリングとも言います。

いわゆる必要な時に作られ不要な時は再利用されるのが乳酸になります。
運動強度が上がれば上がるほど乳酸は、多く作られて血中乳酸濃度も上がっていきます。
そして、血液中の乳酸濃度が20mmolくらいになると身体に限界がきます。

血中乳酸濃度を抑えつつ高いパフォーマンスを発揮していると言うことは、乳酸ハンドリングによって酸化系をうまく活用しながら乳酸をコントロールしているとも言えるでしょう。
このコントロールの方法は競技によって異なります。

マラソンの場合、サッカーのような強弱が明確に分かれているわけではありません。
レース中は、ずっとLTレベル程度をキープすることが重要です。
LTレベルをキープしつつ勝負所では強度を上げてスパートします。
消耗度を考えると勝負を仕掛けるのは、1回が良いと言うことになります。
なぜなら何度もLTを超える強度を繰り返すと、乳酸を作りながら使う効率的な走りを乱してしまうことになってしまうからです。

LT程度のレベルをいかにキープできるか、どこで勝負を仕掛けるかで勝負が決まると言えます。
これらを意識して練習をすると良いでしょう。