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トレーニング・フィットネス

筋力トレーニングの動作速度は8秒以内が良いのかも、動作スピードと筋肥大

動作スピード

筋力トレーニングをする時、どれくらいのペースで行うようにしていますか。

筋力トレーニングの効果は動作速度、運動スピードによって大きく変わります。
目的に合わせた適切なスピードで行えば、より効果を高めることができます。
では、筋肉を大きく肥大させる為にはどのくらいのスピードで行うと最も効果が高いのでしょうか。

関節を動かすと筋肉は収縮しますが、筋肉の収縮には大きく2つの様式があります。
筋肉の長さを短くしながら収縮する短縮性筋収縮(求心性収縮/ポジティブ動作)と筋肉の長さを伸ばしながら収縮する伸張性筋収縮(遠心性収縮/ネガティブ動作)があります。

例えばアームカールでは、主に上腕二頭筋が働きます。
肘を曲げてダンベルを持ち上げる時、上腕二頭筋は短くなり収縮します。
この局面が短縮性筋収縮でありポジティブ動作とも言われます。

また、肘を伸ばしてダンベルを下ろす時、上腕二頭筋は長くなりブレーキをかけるように収縮します。
この局面が伸張性筋収縮でありネガティブ動作とも言われます。

ここで言うトレーニング中の動作スピードは、このポジティブ動作とネガティブ動作を合わせた時間を動作スピードになります。
アームカールの場合、肘を曲げる時間が2秒、肘を伸ばす時間が2秒の場合、動作スピードは4秒になります。

では、筋肉の肥大を最大限にするスピードはどれくらいなのでしょうか。

筋肥大と動作スピード

バーベルスクワットをする女性

筋肥大の効果と動作のスピードには関係があります。
これについては、ニューヨーク市立大学のシェーンフェルドらが行ったメタアナリシスがあります。

一定の基準を満たした8つの研究結果をもとに、そこから得られたデータを3つの運動スピードにグループ分けをして筋肥大効果との関連を検証しました。

・速い0.5~4秒
・中程度4~8秒
・遅い8秒以上

3つの運動スピードごとに算出した筋肥大の効果を比較すると「速い」の効果量は、0.42、「中程度」は0.37と両グループに有意な差は認められず、さらに「遅い」のグループは有意な効果は認められなかったので分析から除外されました。
この結果から、次のような結論を導き出しています。

・8秒以下の運動スピードであれば速くても遅くても筋肥大の効果に大きな差はない。
・8秒より遅いと筋肥大の効果は低くなる。

そして、この結論には運動単位の動員が関係すると示唆されています。

運動単位は、運動神経が数十本の筋繊維を支配する小さな運動単位と数百本から数千本の筋繊維を支配する大きな運動単位に分けられます。
小さな運動単位は発揮する力が弱いが疲れにくく、大きな運動単位は発揮する力は強いが疲れやすい特徴があります。
小さな運動単位は遅筋繊維で、大きな運動単位は速筋繊維になります。

これをサイズの原理と言います。

トレーニングの総負荷量を高めることで、小さな運動単位だけでなく大きな運動単位の動員も促されるので結果として多くの筋繊維を収縮させることができて、筋肥大効果を大きくすることができます。

運動単位の動員は運動強度だけでなく、動作のスピードも実は関係しています。
動作スピードが速いほど大きな運動単位が動員されてより多くの筋繊維を収縮させることができます。
この研究結果によると運動スピードの上限が8秒以内と言うことになります。

8秒以上のスロートレーニングは筋肥大効果が少ないかも

ダンベルトレーニング

マクマスター大学のシェプストーンらは20代の被験者を集めて、アームカールを使った運動スピードに関する実験を行いました。
片方のグループは運動スピードが1秒以内、もう一方のグループは8~9秒と言う条件で、それぞれ疲労困憊までアームカールを行い、これを4セット週3回の頻度で8週間実施しました。

そして、トレーニング前後の上腕二頭筋の横断面積、筋繊維のタイプ別の横断面積を計測しました。
両グループともに上腕二頭筋の筋肥大が認められましたが、動作スピードが速い1秒以内のグループの方がより高い効果が認められました。

シェプストーンらは、筋繊維のタイプ別の肥大についても調べています。
その結果、遅筋繊維であるタイプⅠ繊維の肥大は両グループとも増加をし、有意な差はありませんでした。
しかし、速筋繊維であるタイプⅡ繊維は、動作の速いグループの方が有意な増加を示したのです。

この結果によると遅筋繊維を肥大させる効果は、どちらも同じで、速筋繊維を肥大させる効果は動作の速いグループの方が高いと言うことになります。
このことから8秒以上のスロートレーニングは、筋肥大効果が低いと言うことになるのかもしれません。

オーストラリアのニューイングランド大学のシューケンらは、ベンチプレスやスクワットなどの多関節トレーニングでもスロートレーニングではタイプⅡ繊維の十分な筋肉の肥大が生じないと報告しています。

これらを根拠に、現在では8秒よりも遅いスロートレーニングは筋肥大効果が低いと考えられているようです。
ですが、動作スピードについては、まだまだ発展途上であり詳しく分かっていません。

バリスティックトレーニングやプライオメトリクストレーニングは、素早い動作で行いますが筋肥大の効果はあまり期待できません。
なぜなら大きな力を発揮していても発揮している時間が極端に短いからです。
ある程度力を発揮する時間がないと筋肉は肥大しにくいと言えるので、動作は速すぎても効果的ではないと言えます。

動作スピードに関する研究報告もまだ多くはありませんし、性別や年齢、トレーニング経験の有無などによる解析も行われていません。
筋肥大に最適な動作スピードは、まだ詳しくは分からないと言えます。
ただ、筋肥大効果に関しては、8秒以上の遅い動作では効果が低くなる可能性が高いのかもしれません。

筋肉を大きくさせたいなら遅過ぎず速過ぎずで8秒以内の運動スピードを意識してトレーニングをするようすると良いかと思います。