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トレーニング・フィットネス

筋肥大に高負荷は必須ではない|トレーニング効果の差は?多関節、単関節、マシン、フリー|筋電図による主働筋について

筋肥大に高負荷は必須ではない

トレーニングのプログラムデザインでは、目的を達成する為に実施するトレーニング種目の選択、強度、トレーニング量、休息時間、頻度などを適切に設定する必要があります。
筋肉を大きくすることを目的としたトレーニングでは、1RMの67~85%で6~12回を3~6セット、セット間の休息は30~90秒に設定して行うことが一般的かと思います。
しかし、これまで行われた研究によれば、これまで常識とされてきた理論と異なる結果が複数発表されています。

レジスタンストレーニング歴のある男性49名を対象に軽負荷群(30~50%1RM×20~25回)と高負荷群(75~90%1RM×8~12回)に分けて、レッグプレス、ベンチプレス、レッグエクステンション、ショルダープレスを各セットともに限界まで追い込んだトレーニングを12週間実施したところ、両郡ともタイプⅠ繊維(遅筋繊維)とタイプⅡ繊維(速筋繊維)の両方の筋肉の横断面積がそれぞれ有意に増加し、両郡に筋肥大効果の有意な差は認められませんでした。
運動生理学の専門書によるとサイズの原理では、軽負荷トレーニングではタイプⅡ繊維の運動単位が動員されないのでタイプⅡ繊維は肥大しないとされていますが、この研究ではタイプⅡ繊維も肥大しています。
軽負荷でのトレーニングでは、回数の増加によってタイプⅠ繊維の運動単位が疲労してタイプⅡ繊維の運動単位が動員されて筋肥大が起こったと考えられています。

また、2017年に発表されたエビデンスレベルの最も高いメタ分析においても筋肥大は軽負荷でも高負荷でも同様に起ることが報告されています。

2019年に発表されたエビデンスレベルに基づくトレーニングの論文によると筋肥大の為には可動域全体で最大収縮させて、疲労困憊まで追い込むことが重要であり、軽負荷と高負荷の筋肥大効果は同等であることが示されています。

2022年には、軽負荷、中負荷、高負荷でのトレーニングによる筋肥大効果をメタ分析で検討した研究でも筋肥大効果には負荷による有意差は認められないことが報告されています。

これまで筋肥大は、高負荷が必要とされてきましたが筋肥大に負荷は関係なく、軽負荷でも中負荷でも高負荷でも筋肥大効果があるということです。
これらの研究では、30%ⅠRM以上の負荷で筋肥大が認められているので、最低でも30%ⅠRM以上の負荷でのトレーニングを行うことが必要だと考えられます。

また、トレーニング効果は個人差が大きいです。
遺伝特性によってトレーニング効果が異なる可能性があります。
筋肥大や筋力向上の効果には、個人差が大きいということを踏まえトレーニングプログラムを考える必要があるかと思います。

トレーニング効果の差は?多関節、単関節、マシン、フリーウエイト

背中のトレーニングをする男性

様々な関節が可動して行うトレーニング、スクワットやベンチプレスなどを多関節トレーニング、一つの関節の可動のみで行うトレーニング、レッグエクステンションやアームカールなどが単関節トレーニングになります。

では、多関節と単関節トレーニングでは、どちらの効果が高いのでしょうか。

多関節と単関節トレーニングに対する筋肥大効果を比較した研究があります。
レジスタンストレーニング経験のない男性アマチュアサッカー選手36名を対象に多関節群と単関節群に分け、多関節群では、6~8RM×4セット、セット間休息150~180秒、単関節群では12~18RM×4セット、セット間の休息は90~120秒でトレーニング総量は同じにして週3回、8週間のトレーニングを行いました。
その結果、両郡とも筋量が有意に増加し両郡に有意な差は認められませんでした。

また、筋肥大を比較した系統的レビュー、メタ分析においても差は認められませんでした。
ですが、単関節トレーニングはターゲットの筋肉に刺激を与えることができるので、トレーニングを最適化させる為に多関節トレーニングと単関節トレーニングを組み合わせて行うことが良いかと思います。

では、マシンとフリーウエイトではどうなのでしょうか。

トレーニングの現場では、マシンよりもフリーウエイトの方が効果が高いとされています。
マシンでは、エキセントリック局面での摩擦抵抗の増加や動作でバランスを取る必要もないので筋活動が減少してしまうからとされています。
しかし、46名の男女を対象にした研究報告によるとマシンとフリーウエイトでの筋肥大効果に有意な差は認められていません。

これらを考えると筋肥大に関して言えば、ターゲットになる筋肉にしっかりと刺激が入っていれば多関節でも単関節でもマシンでもフリーウエイトでも有意な差はないと考えることができます。
これは、あくまで筋肥大に関することなので動作に繋げる場合であれば、フリーウエイトや多関節トレーニングをメインに取り組むほうが効果は高いでしょう。

大胸筋上部を刺激するインクラインベンチプレスは30°

ベンチプレスをする男性

レジスタンストレーニングの専門書には、機能解剖学に基づいた知見から各トレーニングの主働筋が記載されていますが、筋電図による筋活動を評価した主働筋の筋活動レベルは、これらの情報とは違った結果が出ることもあります。

多くの専門書では、バックスクワットの主働筋は、大殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングスであるとされています。
しかし、17人の男性がバックスクワットを8×3セット、週2回、10週間行ったところ大殿筋、大腿四頭筋、内転筋は有意に肥大しましたがハムストリングスの肥大は認められませんでした。
このことから股関節伸展動作には内転筋が強く関係していることが分かります。

また、ベンチプレスのバリエーションのインクラインベンチプレスは、フラットのベンチプレスよりも大胸筋上部の筋活動が増加するとされています。

ですが、筋電図を用いて評価をしてみるとインクラインベンチプレスによる大胸筋上部の活動レベルは通常のベンチプレスと同様であることが示されています。

その一方で60%ⅠRMの負荷のベンチプレスでベンチの角度0°、30°、45°、60°で行った時の大胸筋上部、大胸筋中部、三角筋前部、上腕三頭筋の内側頭の筋活動レベルを筋電図で評価した研究によると、30°の時に大胸筋上部の筋活動が最大になり、大胸筋中部と下部は0°の時が最も高い筋活動を示しました。

三角筋前部は、60°で最も高い筋活動を示し、上腕三頭筋は全ての角度で同様の筋活動を示したと報告されています。

このことからインクラインベンチプレスで大胸筋上部に効かせたい場合、ベンチの角度を30°程度にする必要があると考えられます。

ベントオーバーロウでは、広背筋と僧帽筋下部の筋活動レベルは上体の前傾角度は65°のほうが40°のほうよりも活動レベルが増加します。
僧帽筋中部では、65°と40°では、有意な差は見られていないようです。

ベントオーバーロウで広背筋や僧帽筋下部の活動レベルを高めるには上体の角度を深くして行うことが重要と言えます。
僧帽筋中部に関しては、両脇をやや広げて行うと筋活動レベルが高くなることが分かっています。

これからも新たな知見が出て、これまで常識と言われていたことが覆されることが出てくるかと思います。
トレーニング効果を最適化させるには、学術論文を検索し常に新しい情報を得る必要があるでしょう。