アスリートに役立つコンディショニングの為の栄養摂取について
トレーニング内容と栄養摂取
アスリートは試合や大会で最高のパフォーマンスを発揮できるようにトレーニング内容や体調管理を計画的に取り組むことが必要になります。
栄養摂取についても年間を通して健康な食事として、主食、主菜、副菜、乳製品、果物などの食品をバランス良く摂取することが基本となります。
バランスの良い食生活をベースとしてそれぞれの期分けで計画されるトレーニング内容やその目的に沿って摂取量やタイミングも工夫していくと良いです。
筋肉を鍛えるウェイトトレーニングの効果を最大限に得るにはタンパクnな摂取量やタイミングを工夫をする必要があります。
アスリートのタンパク質摂取量の目安は、一般的に体重1kgあたり1.6~2.2程度が良いとされています。
一般的にタイミングとしては、トレーニングの刺激によってタンパク質代謝が亢進している運動後2~3時間以内に1日に必要なタンパク質の10~20%程度摂取すると良いとされています。
また、勘違いをしている人も多いかもしれませんがタンパク質を摂れば摂るほどタンパク質合成率が上がるわけではありません。
過剰に摂取しても筋肉は作られませんし、体脂肪の増加や腎臓、肝臓の疲労に繋がることもあります。
1日の食事内容とプロテインパウダーの摂取量も合わせて計算をして適切な量のタンパク質を摂取するように心掛けるようにしましょう。
年間スケジュールと栄養摂取
準備期では、試合や競技会に備えて体調や体重を整える為に個人個人に合わせた食事の管理が必要となります。
トランスファーシーズンで行った強化トレーニングによる身体への過剰な負荷が一因となって疾病や障害が発生するのもこの時期です。
疲労骨折や鉄欠乏性貧血を予防するには、骨代謝や造血に必要な葉酸、ビタミンD、カルシウム、鉄などの栄養素も意識をしましょう。
区分 | 期分け | 準備期 (プレシーズン) | 試合・競技会が多い時期 (インシーズン) | 休息から強化トレーニングを実施する移行期 (トランスファーシーズン) |
アスリート全般の共通事項 | トレーニング計画とアスリートの考慮すべき事項 | 体調や免疫機能、身体組成をチェックする。 スキルトレーニングの増加など。 | 疲労回復のケアとリカバリー。 心理ストレス対策、睡眠の質の確保など。 | 疲労からの回復、リフレッシュ。 強化トレーニングや合宿の実施。増量トレーニング実施。 |
栄養摂取の戦略と考慮すべき事項 | ビタミン、ミネラルなどの摂取量の見直し。 免疫機能の為に乳酸菌食品と食物繊維の摂取を確保する。 | 高糖質食と消化の良い食事。 試合後のリカバリーの為に、できるだけ早く炭水化物とタンパク質摂取をする。 腸内環境の為に乳酸菌や食物繊維の摂取を継続する。 | 好きなものや普段食べられない献立へのチャレンジなどリフレッシュできる食事。 トレーニングに合わせた食事の調整。 | |
体重コントロール/階級制競技 | トレーニング計画とアスリートの考慮すべき事項 | 目指す階級に対して必要な減量を把握する為、体重の変動とトレーニング計画を確認しておく。 | 計量に合わせて減量とトレーニングを調整する。 | 筋量増量やリカバリー、減量によるストレスからの回復。 |
栄養摂取の戦略と考慮すべき事項 | 試合期に安全な減量を行う為、食事バランスを整える。 試合期に極端な減量にならないように食事量をコントロールする。 | 計量に合わせて食事量を調整し、計量後、試合日に脱水や空腹から回復をする為に消化の良い汁物や炭水化物中心の食事にする。 | 食事バランスを考えながら楽しく、おいしく食べれる環境でリラックスした食事がとれるようにする。 | |
持久系競技 | トレーニング計画とアスリートの考慮すべき事項 | 疲労骨折や貧血などの体調不良がないかチェックをする。 | ピーキングトレーニングやレースペースのトレーニングを行う。 調整の為に筋力トレーニングなどは少なくする場合もある。 | 走行量の多いトレーニングや高地合宿が実施される場合もある。 |
栄養摂取の戦略と考慮すべき事項 | カルシウムや鉄、ビタミンDなどをしっかりと摂取する。 | 試合当日・レース日の高糖質食をする。 脱水や熱中症予防の為の水分、ミネラルなどをしっかりと摂取する。 | 強化トレーニングの前の栄養状態を強化する為に、タンパク質、鉄、葉酸などの摂取量を見直す。 |
重要な試合や競技大会で風邪などを引かないように免疫機能を考えた栄養素も摂取する必要もあります。
免疫機能は腸内環境が大きく影響しているとされているので、発酵食品や食物繊維を意識すると良いかと思います。
食事改善による腸内細菌の改善には、数週間かかる場合があるので、試合や競技大会が集中するシーズンの前に数週間単位で計画的に行うようにしましょう。
もちろん試合や大会に関わらず普段から気を付けておくと良いでしょう。
試合・大会が多い時期には、糖質中心の消化の良い食事を心掛けることで運動中に必要なエネルギーを確保でき、心身のストレスや疲労からの回復にも効果的です。
トランスファーシーズンでは、持久系高強度トレーニングを組み込んで、心肺機能の強化を図ることがあります。
持久能力の向上には、適切なタンパク質摂取や鉄の栄養状態が良好であることが必須です。
鉄は、過剰に摂取したり体内の炎症が高まったりしていると消化管での吸収が妨げられてしまいます。
走り込み合宿や高地トレーニングを実施する場合は、食事内容を見直して前もって準備をしておきましょう。
体調に合わせて栄養摂取をしよう
体調に合わせて食事を選択するには、自分自身の体調wチェックする必要があります。
自分でも簡単にできるチェック法としては、体重、食欲、肌や爪などを見ることです。
体重の増減は、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスを反映しています。
また、体重はトレーニングによる疲労度や適切な水分補給の目安にもなりますので、毎日測定することで身体の状態を知ることができます。
胃腸の調子は疲労や心理ストレスによっても影響を受けます。
食欲不振は慢性的な疲労や様々な疾病の予兆とも考えることができます。
激しいトレーニングや試合に向けた緊張感は胃腸の調子を崩すことがあります。
胃痛や食欲不振をチェックすることはもちろん、適切な空腹感や食後の満腹感があることにも意識をすると良いでしょう。
肌荒れは、水分摂取不足やビタミン類、特にビタミンB群やビタミンCの不足の影響もあります。
爪の変形は、鉄などのミネラル不足によって起こることがあります。
また、医療機関に行かないといけませんが、血液検査は良い指標になります。
血液中の中性脂肪やコレステロール、肝機能(AST、ALT、γGTPなど)の指標は無理な増量や食事のアンバランスの影響によって異常値が出ることがあります。
貧血の予防や改善の為の栄養管理では、ヘモグロビン値をはじめ、赤血球、血清鉄、貯蔵鉄の指標であるフェリチンについてもチェックすることによって貧血症の初期段階を発見することができます。
めまいや頭痛、だるさなどの体調不良は貧血の典型的な自覚症状になりますが、脳機能や肝臓、腎臓の機能障害でも起こります。
体調不良がある場合、特定の栄養素を安易にサプリメントなどで使う前にまずは医療機関で一度診てもらうと良いかと思います。
特に鉄分は過剰摂取に注意が必要なので、貧血が疑われる場合は血液検査で確認をして診断を受けると良いでしょう。
スポーツの現場での栄養管理を考える場合、個人の体調はもちろん、競技力や競技種目、トレーニングスケジュールに合わせた適切な栄養摂取ができるように準備をすると良いです。
近年では、試合会場やトレーニング直後に合わせて摂取できる商品がたくさんありますので上手く利用すると良いでしょう。
しかし、サプリメントは特定の栄養素が過剰摂取になってしまう危険もあるので、食事内容を考慮して特定の栄養素に偏っていないかを常に注意するようにしましょう。