血圧を下げる降圧剤のデータ改ざん、ウソの論文で大ヒットしたバルサルタン

降圧剤データ改ざん事件が発覚

血圧の基準はどんどん下げられてきて、多くの人に不安を与えて薬漬けにする高血圧の基準は一体誰が決めているのでしょうか。
それは大学の医療研究者が委員を務めている組織である日本高血圧学会です。

世間の人たちは、医師はおのおの論文を読んで研究をして患者の治療に当たっていると思っているかもしれません。
ですが、現実はそうではありません。

ほとんどの医師は、診察で忙しく研究する暇何てありません。

高血圧学会は、高血圧治療ガイドラインと言う冊子を出して日本中の医師はそこに記載されている基準値によって、高血圧かどうかを判断しているかと思います。

ほとんどの医師はそれに従っているのでガイドラインは大きな影響力があります。
ガイドラインは改定をされていきますが、その都度基準値は下がってきたと言えます。

この冊子は、細かい区分、専門用語、回りくどい説明などで意図的なのか分かりませんが非常に読みづらくなっています。

高血圧治療ガイドライン2019冊子

基準値が下げられてきたのは、高血圧学会が製薬会社とべったり癒着をしているからです。
この為に基準値はどんどん下げられていったのです。

2013年7月に製薬会社との癒着が明るみになった事件がありました。
京都府立医大、東京慈恵医大、千葉大、滋賀医大と製薬会社ノバルティスファーマ社による降圧剤データ改ざん事件です。
問題になった降圧剤は、バルサルタンで商品名はディオバンです。

2000年に国内での販売が始まって2012年度の国内売上額は1083億円にもなりました。
バルサルタンの国内での売上は、あらゆる医薬品の中でトップを占めました。
しかも世界約100カ国で承認もされています。

ウソの論文で商品が大ヒットした

バルサルタンが大きな注目を集めたのが2004年から約5年をかけて京都府立医大の教授が行った研究です。
この教授は、高血圧患者3000人を対象にバルサルタンの臨床試験を行いました。
そして、2009年に論文として発表。

バルサルタンは血圧を下げるだけでなく脳卒中や狭心症のリスクも下げる効果があると欧州心臓病学会誌に発表して一躍時の人となりました。

高血圧治療薬には、バルサルタンのように血管を拡張させる他にも心臓の動きを抑えるもの、余分な水分を体外に排出するものなどがあります。

バルサルタンは、1日160mgの服用で年間約8万1650円かかりますが、一番安い薬なら約3500円で済むそうです。

他の薬に比べて高価なバルサルタンが飛ぶように売れたのは、臨床試験で効果を確かめたと言う論文を現場の医師が信じたからです。

普通論文が間違っているとは思わないでしょうから多くの医師が患者にバルサルタンを優先的に処方したのです。
このおかげでバルサルタンは、一躍大ヒット商品となったのです。

降圧剤だけでなく2012年の全ての医薬品の中で最も売れた薬になりました。
他の製薬会社の人間によると妬ましいほどの売れ行きだったに違いありません。

製薬業界にはブロックバスターと呼ばれる商品のタイプがあるそうです。
際立った効果がある為に他を寄せ付けない莫大な売上を持つ物のことをブロックバスターと言います。
バルサルタンはこのブロックバスターでした。

論文の効果は絶大でした。
およそ1000億円の売上のうち300~400億円がそれに当たると言われています。
論文がバルサルタンをブロックバスターにしたのです。

論文を書いた教授や日本高血圧学会の幹部は、医療雑誌の広告ページに頻繁に登場をしてバルサルタンの優れた効果を訴えていました。
さらに「バルサルタンは日本人に合っている」「認知機能の低下も改善する」などとその効果を強調していました。

ですが、海外の反応は冷ややかでした。

2009年欧州心臓学会でこの教授は論文をスピーチしましたが、データの信憑性が乏しかったので論文はヨーロッパの医学界で黙殺されました。

スイスの高血圧の専門家は、本当なら素晴らしい薬だと断った上で自分の母親には投与したくないが、妻の母親になら使うと皮肉を言ったそうです。

2012年末、日本の循環器学会誌が数多くの解析ミスが発覚したとして、掲載論文の撤回を発表しました。

2013年2月には、欧州心臓病学会誌も致命的な問題があると教授の論文を撤回する事態となりました。
同月に教授は、責任を取る形で大学を辞めていますが「論文不正は絶対にないので辞職の必要はない」と最後まで抵抗したそうです。

前例のない刑事告発に発展した

2013年7月、京都府立医大は論文に使われた解析データが人為的に操作されてバルサルタンに有利な結果が出ていたとの調査結果を発表しました。
大学は捏造の背景については「誰がデータを操作したのか」「意図的だったのかは分からない」としていました。
この調査を受けて日本高血圧学会が慌てました。

高血圧学会は、当初不正なデータ操作はなかったと発表しましたが、論文を書いた教授は学会の幹部です。

その後の調査で大学非常勤講師の肩書を持つ製薬会社の社員が研究チームに紛れ込んでいたことが判明しました。
実験のカルテにはない、都合の良い例をたくさん加えていました。

データを操作してバルサルタンに有利な結果をでっち上げていたと言うことです。
実際はバルサルタンを飲んでも脳卒中や狭心症のリスクは下がりません。

販売元であるノバルティスファーマ社の対応は「社として把握していなかった」「社員がデータの操作に関与した証拠ない」として当初は元社員への事情聴取にも応じていませんでした。

2014年に1月に厚生労働省はノバルティスファーマ社を薬事法違反容疑で東京地検に告発をしました。
誇大広告容疑で刑事告発は前例がありませんでした。
製薬業界と大学にようやく司法のメスが入ることになったのです。

ですが、2017年3月に下された判決結果は大方の予想を裏切って被告人(元社員)は無罪。
被告人のデータのねつ造は認めたものの論文への投稿は、薬事法でいう、一般人の目に触れる広告には該当しないという解釈だったのです。

そして、2021年6月28日に最高裁が検察側の上告を棄却し、一審(東京地裁2017年3月16日)および二審(東京高裁2018年11月19日)の無罪が確定。

バルサルタンの事件は、ただの不正で済まして良い話しではないでしょう。
高血圧症患者とその家族を騙してお金を巻き上げた立派な犯罪ではないのでしょうか。

どの分野でもウソはいけませんが、特に医学は絶対にウソがあってはならない分野だと思います。
ですが、現実に論文の改ざんが起こっていると言う事実があったのです。

医療関係者と製薬会社との癒着は、表に出てこないだけでこの事件は氷山の一角に過ぎないのかもしれません。

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