筋肉についての疑問10、速筋と遅筋、筋肥大の限界は?適した負荷は?
目次
速筋と遅筋とは?
筋肉を構成する筋繊維には、大きく分けると速筋繊維と遅筋繊維があります。
速筋繊維は、白く見えるので白筋とも呼ばれ収縮速度が速く、筋力・瞬発力に優れた筋繊維になります。
遅筋繊維は、赤く見えるので赤筋とも呼ばれ収縮速度が遅く、持久力に優れた筋繊維になります。
色の違いは、筋肉中に存在するミオグロビン(酸素の貯蔵体)と呼ばれるタンパク質の差になります。
ミオグロビンが多いと筋繊維が赤く見え、少ないと白く見えます。
速筋と遅筋の中間のタイプの中間筋もあります。
これはピンク筋とも呼ばれますが、ピンク筋の分類は速筋線になります。
マグロのような赤身の魚は遅筋繊維が多く、長い時間泳ぎ続けることができます。
一方で白身魚は、瞬間的な力発揮は得意ですが、長時間泳ぐことはできません。
人間であれば、速筋繊維が多いと短距離が得意で遅筋繊維が多いと長距離が得意になります。
スプリンターは速筋タイプ、ランナーは遅筋タイプです。
筋繊維のタイプは、遺伝的要素が強いのでトレーニングをしてもその割合が大きく変わることはないとされています。
筋繊維タイプによるスポーツの得意、不得意は、先天的に決まってしまっているとも言えます。
トレーニングをしても筋繊維のタイプが劇的に変化することはありませんが、トレーニングを継続していると筋繊維は遅筋化が起こります。
これは速筋繊維が遅筋繊維になるというわけではなく、速筋繊維の中で遅筋化が起こっていきます。
筋肉の質って何?
よく日本人と外国人では、筋肉の質が違うと言われることがありますが、筋肉の質とは一体何なのでしょうか。
ここでは、筋肉の質を2つ紹介します。
一つ目は、筋肉の構造によって変わる質があります。
筋肉には、紡錘状筋と羽状筋があります。
紡錘状筋は、筋肉が長軸方向に対して並行かつ直線的に並んでいて、速いスピードで収縮することができます。
代表的な紡錘状筋は、力こぶの上腕二頭筋や胸の大胸筋があります。
羽状筋は、筋肉が長軸方向に対して斜めに並んでいて、より多くの筋繊維を配置できるようになっています。
しかも短い筋線維が並列しているので、それぞれの筋線維が生み出す力を足し算することができます。
ですので、より強い力を発揮することができます。
羽状筋は「スピードは出ないけれども力は出せる」という特徴があります。
これら筋肉の構造によって、収縮速度や発揮できる力に差があります。
筋肉の構造は、同じ人間同士で大きく異なることはありません。
もう一つは、筋肉の固さによって筋肉の質を評価する方法があります。
超音波エラストグラフィーという装置を使うことで活動中の筋肉の固さを評価することができます。
短距離選手と長距離選手の筋肉の性質を調べたところ、固くて伸び縮みしにくい筋肉を持つ選手は短距離走の記録が良く、柔らかくて伸びやすい筋肉は長距離走に適していることが分かったそうです。
この結果を考えると一概に「こういった筋肉は質が良い」とは言えないかと思います。
筋肉が固い方が良いのか、柔らかい方が良いのかは、スポーツによっても変わるということになりそうです。
スポーツによって適切な筋肉の固さがあることでしょう。
筋力強化に適した年齢は?
いくつになっても筋肉は鍛えることができますが、適した年齢もあります。
筋肉の合成に関わるホルモンにテストステロンがあります。
これは男性ホルモンになりますが、テストステロンの濃度がピークになるのが20代になります。
テストステロンの分泌量を考えるとピークになっている20代が筋力強化に一番適していると考えることができます。
もちろん個人差はありますが、テストステロンの分泌量は30代を境に低下し始め、その割合は年に1%ほどになります。
筋肉は高齢になっても鍛えることはできますが、その効果が出やすいのは20代になるのでトレーニングは早く始めた方が良いでしょう。
日本人が発達させやすい筋肉は?
パワーリフティング競技を見ると日本人は押す種目であるベンチプレスが強いことが分かります。
一方で海外選手は、背中の力を使う引く種目が強い傾向があります。
日本人は、外国人に比べると腕が短いのでベンチプレスで高重量を扱いやすいですが、筋肉の特性ははっきりとは分かりません。
日本人は、ヒラメ筋が発達しやすいと言われているようですが、特異不得意は個人によって変わるので自分自身を理解することが大切かと思います。
遺伝によって筋肉の形を決まる?
筋肉全体の形は、筋肉とそれにつながる腱、骨格が決めています。
腱の長さは生まれつき決まっているので遺伝的要素が強い部分と言えます。
腱の長さや骨格に付着する位置によって筋肉の形はある程度決まってしまいますが、工夫してトレーニングをすればある程度は見た目を変えることができるでしょう。
様々な種目を取り入れることで筋肉に対しての刺激が変わります。
同じ筋肉でも外側なのか内側なのか、種目によってどこに負荷がかかりやすくなるのかが変わるので、色々と工夫をしてみると良いのではないでしょうか。
筋肥大に限界はあるの?
筋肥大の限界を調べる正確な算出法として、Fat Free Mass Index(FFMI)というものがあります。
この数字は、除脂肪体重の値(kg)を身長(m)で2回割ることによって求めることができます。
除脂肪体重÷身長÷身長=FFMI
平均的:18~19.5
多少筋肉質:20~21
素晴らしく筋肉質:21.5~22.5
天性のものも影響する:23~23.5
ナチュラルの限界:24~25.5
例えば、除脂肪体重が60kg、身長160cmで計算するとFFMIは23.5になります。
これを考えるともう少し増やせる余地があることが分かります。
しかし、確からしい限界は提示されていません。
あくまで目安として考えると良いのではないでしょうか。
インナーマッスルとは?
インナーマッスルとは、身体の深部にある筋肉のことです。
一方で身体の体表近くにある筋肉はアウターマッスルと言います。
インナーマッスルの主な働きとしては、運動中に関節を安定化させたり保護したりします。
注意したいのは、働きはインナーマッスルに含まれるものの体表からその存在が確認できる棘下筋のようなものもあることです。
アウターマッスルを鍛える際にもインナーマッスルも動きますので合わせて鍛えることは可能です。
もしリハビリなどでインナーマッスル単体を効率よく鍛えたいのであれば、鍛えたいインナーマッスルが主働筋になる動きを、丁寧に行うことでピンポイントに鍛えることができます。
声を出すと筋力が上がる?
陸上の投てき選手が大声を出しているのは印象的かと思います。
実際に声を出すことで筋力が高まることは、陸上競技やウェイトリフティングで明らかになっています。
また、どの母音が一番筋力を高めるかも調べられています。
イの音が有力であるという結果があるようですが、個人差もあるようです。
筋肥大に適した負荷は?
トレーニングの負荷を大きく分けると、高強度、中強度、低強度になります。
これまでは、低強度だと筋肥大は起こらないとされていましたが、低強度でも筋肥大は起こります。
どの強度でも限界まで追い込めば筋肥大をさせることができます。
強度が違ってもトレーニングの総負荷量が同じであれば効果は同じであることも分かっています。
筋肥大を起こさせたいのであれば、総負荷量を高くするようにしましょう。
挙上回数で言えば10回程度の中強度の負荷が最も筋肥大に適していると言われています。
ですが、筋細胞や結合組織のレベルで見ると違う筋肥大が起こっている可能性が高いのでどの強度も全て重要と言えます。
刺激をマンネリ化させない為にも期分けをして色々な強度でトレーニングをしてみると良いでしょう。
同じ部位のトレーニングは連日しない方が良い?
トレーニングを行うと筋肉は微細なダメージを受け、筋タンパク質の合成が高まります。
この同化作用がだいたい24時間~48時間程度継続すると言われています。
トレーニング後は、筋力も落ちている状態で回復するまで時間がかかります。
この回復期間にトレーニングを行うとリカバリーが追い付かない状態になってしまうと考えられます。
なので、同じ部位のトレーニングを毎日実施するのではなくて1~2日空けて行った方が良いかと思います。
しかし、近年では1週間のトレーニング総負荷量が同じであれば、効果は同じになることが分かっています。
なので連日トレーニングをしても総負荷量が同じであれば、効果に差は出ないのかもしれません。
ですが、激しい筋肉痛がある場合や疲れが酷い場合は、回復してからのほうが良いでしょう。