健康情報館

ヘルス&フィットネス~日々の健康・身体作りに役立つ知っておきたいこと~

健康情報館
健康

食の健康神話「〇〇は身体に良い」は仮説にすぎない、健康意識が高い人ほど注意が必要かも

仮説にすぎない健康神話

「〇〇を食べると身体に良い」というような謳い文句はよく目にするのではないでしょうか。
例えば、夏が近づくと「夏バテには豚肉が良い」などをよく見かけると思います。

では、実際にこれは本当なのでしょうか。

豚肉に含まれる栄養素が血液中のアルブミンなどに影響を与えるというエビデンスは実際にあります。
そして、アルブミンが増えると疲労回復の効果があるというエビデンスもあります。
そこから「豚肉が疲労回復に効果がある」というような仮説が出てきます。

しかし、これは理論上正しくても、あくまで仮説にすぎません。
これを検証して関連性が確認することができればエビデンスとなりますが、現状は豚肉と疲労回復を実証するエビデンスはないようです。

ですが、〇〇を食べると健康に良いと単純化したほうが多くの人は興味を持ちます。
つまり、売り上げを伸ばすのにとても効果的なのです。

複雑な事柄を単純に結論付ける方法は、還元主義と呼ばれています。
日本は、外国に比べて情報リテラシーの度合いが低いように感じます。
テレビで納豆は身体に良いと放送されれば、翌日スーパーから納豆が消えるなどがありましたが、海外ではこのようなことはほとんどありません。

日本人は、特にテレビの情報に非常に弱く誘導されやすいと言えます。
コロナについても同じことが言えるのではないでしょうか。

身体に良いという情報を見たら、まず対象(誰に)、理由(なぜ?)、定義(具体的に何か)、そして情報源の確認をしましょう。
情報に踊らされない為には、提供されている情報に疑問を持って自分で考えてみる姿勢が大切です。

人間の健康は、身体や環境などの要素が複雑に絡み合っています。
食事の効果は、特定の食品一つに由来するとは限りません。
食べ物の組み合わせやタイミング、調理法や食事を摂る環境などに影響を受けている可能性もあります。
エビデンスを確かめつつ、視野を広く持つことが大切です。

また、エビデンスにはエビデンスレベルがあります。
そのエビデンスの信頼度のレベルはどうなのかも考える必要がありますし、エビデンスは何年もすれば覆ることも普通にあるので、エビデンスを信じ切ってしまうのも危険かもしれません。

玄米が健康に悪影響の可能性

頭を抱えて落ち込む女性

よく白米よりも玄米のほうが健康に良いと聞くかと思います。
穀物には、白米のように精製されたものと玄米などの精製していない全粒穀物があります。
精製しないことでビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素を失わずに済みます。

ですが、これだけで身体に良いと判断をしてしまうのは、先ほどの還元主義的な考え方になってしまいます。
実際に検証してみないといけないのです。
確かに、全粒穀物や食物繊維の摂取量が多い人ほど死亡率が低く、循環器系疾患、糖尿病や特定のガンなどの予防効果が高いという研究結果はあります。
しかし、これは主に欧米の研究で調査の対象になっているのは基本的に大麦や小麦です。

また、全粒穀物を食べている人ほど健康的な食生活をする傾向があるという研究もあります。
なので、全粒穀物そのものだけの効果だというのは難しいのです。

白米に関してだと、アジア人は白米の摂取量が多いほど糖尿病のリスクが高まることが多くの研究で指摘されています。
だからといって「白米は身体に悪い」と結論づけるのは危険です。
白米を食べることは、ガンや心疾患など糖尿病以外の病気との因果関係は今のところ認められていません。
カナダや日本人男性を対象にした研究では、白米を食べている人ほど死亡リスクが低いことを示唆するものもあります。

白米と比べて身体に良いイメージがある玄米ですが、玄米も身体に悪影響を与える可能性はあります。
精白しないことで、ヒ素やカドミウム、残留農薬などの胚芽が残ってしまう可能性があるからです。

一つの食べ物には、身体に良い面もあれば悪い面もあります。
どんな食べ物も身体に良いと言えますし、反対に身体に悪いとも言えます。
自分の状況に応じて判断することが重要になるかと思います。

野菜と果物を食べると健康に良いのか

野菜

野菜と果物には、ビタミン、カリウム、食物繊維などを多く含んでいて健康に良いイメージがあるかと思います。
実際に野菜や果物をたくさん食べている人ほど死亡率が低くなる傾向があります。
果物の摂取量が多い人ほど脳卒中や循環器疾患などによる死亡率が低いことは日本の研究でも認められています。

しかし、様々な種類の野菜や果物を食べることが健康に良いというエビデンスは限られています。
その理由として分類の仕方が国や研究者によって異なるので、研究するのが難しいという事情があります。

例えば、日本だとジャガイモはイモ類に分類されていますが、イギリスでは野菜ではなく炭水化物とされています。
ジャガイモは、糖尿病のリスクを高める説があります。
ジャガイモの摂取後は、血糖値が上昇するので摂取量が多い人ほど糖尿病などの疾患や死亡率が高くなるという報告があります。
ですが、これはほとんど欧米の研究です。

摂取量に関して言うとイギリスやアメリカと日本では、大きな差があり研究が限られているので異なる結果が出ることがあります。
イランでは、糖尿病のリスクを下げるという報告もあったようです。

食材一つだけを考えるのではなく、その国の文化や食べ方の違いも考えないといけません。
様々な野菜や果物を食べるメリットの明確なエビデンスはありませんが、身体に害があるとは考えにくいです。
栄養学的にも同じ食べ物で全ての栄養素を賄えません。
一つの食べ物に偏るのではなく、食べ過ぎに気を付けながら野菜や果物は色々な種類食べるのが良いでしょう。

オーガニック食品が身体に良いかどうかは分からない

悩む女性

オーガニック食品と言えば、身体に良いイメージがあると思います。
高いお金を払ってオーガニック食品を食べている人も多いのではないでしょうか。
ですが、オーガニック食品に質の高いエビデンスはありません。

オーガニック食品に興味がある人は、そもそも健康に関心があり健康的な生活をしている傾向があります。
つまり、オーガニック食品の摂取量が多い人が仮に健康だったとして、それがオーガニック食品のおかげなのかどうかは分からないのです。

オーガニック食品の効果を証明する為に農薬や添加物が人体に与える悪影響を研究する方法もあります。
しかし、人を二つのグループに分けて片方に特定の食品を与えて害が出るのかどうかを調べるのは現実的ではありません。
動物実験を超えて実際に人間で長期的に実験することは倫理的にも難しいです。
オーガニック食品の研究は発展途上の段階なのです。

身体に良いかどうかは分からないオーガニック食品、それでも人はオーガニック食品という言葉に弱いようです。
オーガニックと言葉が入っているだけで栄養がたくさん含まれているように感じて、高いお金を払ってしまう傾向があります。

肉は食べすぎると悪影響

肉を食べればスタミナがつく、元気になるというのも一般的なイメージかと思います。
ですが、健康面では様々な問題が指摘されています。

WHO付属機関が、2015年に「加工肉は発ガン性があり、赤肉はおそらく発ガン性がある」と発表をしました。
大腸ガン以外にも赤肉と加工肉は、脳卒中、心筋梗塞などの動脈硬化による循環器疾患や糖尿病のリスクを高める可能性が認められています。

日本人では、平均的な量であればリスクは低いと国立がん研究センターが発表をしていますが、日本人の肉の摂取量や大腸ガンは増えていますので多く食べている人は注意が必要かと思います。
肉に多く含まれるタンパク質は、鶏肉、魚、卵、大豆製品などで摂取することも考えましょう。

肉料理に野菜が添えられているとカロリーを低く見積もる傾向があることが分かっています。
一部の特徴に引きずられて全体の評価が変わることをハロー効果と言います。
これによって「肉料理に野菜が添えられているからヘルシーだ。食べても良い」と認識をするのではないでしょうか。
この傾向は、カロリーを気にする人ほど顕著に見られるようです。
肉と野菜を一緒に食べればヘルシーというわけでもありません。

参考雑誌⇒PRESIDENT プレジデント 2023年.6.2号