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筋肉から分泌されるマイオカインが脳を活性化、趣味と幸福感で認知症予防

運動によるマイオカインが脳の活動を活性化

運動をすることは、脳にも良いということは今や常識になっています。
脳への血流が増えることもそうですが、運動をすることによって筋肉から分泌される生理活性物質であるマイオカインが脳の活動を向上させてくれます。

マイオカインは、筋肉から分泌される生理活性物質の総称です。
視床下部などから分泌されるホルモンのように他の細胞や組織に影響を与えています。

京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 栄養科学研究室 准教授の青井干渉氏によるとこの発見は、ライフサイエンスや医療界にとって大きな衝撃だったと言います。
現在、働きが解明されつつあるマイオカインは約50種類あるそうです。
マイオカインの中で脳にプラスの効果を及ぼすと言われているのが、アイリシンやカテプシンBです。
これらは脳内でBDNFと呼ばれる脳由来神経栄養因子の発現を促進しているという報告があります。

BDNFは、記憶を司る海馬の神経を増やす神経新生を起こすとされています。
運動をすることで神経新生が期待できて加齢による脳の萎縮を抑えることに繋がります。

また、乳酸も今ではマイオカインの一種とされています。
乳酸は脳の中でBDNFを増やす効果を持っていることが報告されています。

では、マイオカインを効率的に分泌させて脳を健康に保つにはどんな運動をすればいいのでしょうか。

運動強度75%で神経新生が促進

全力疾走

海馬の神経新生を促すには、50~75%の運動強度で有酸素運動をすると効果的と言われています。
有酸素運動の運動強度は心拍数を目安にします。

目標心拍数は、カルボーネン法で最大心拍数と安静時心拍数を使って求めることができます。

最大心拍数=220-年齢

目標心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×運動強度%+安静時心拍数

例)20歳、安静時心拍数70、運動強度50~75%

目標心拍数=(最大心拍数200-安静時心拍数70)×0.5~0.75+70

=135~167

目標心拍数を目安に週2~3回、1回30分程度の運動を行うと良いでしょう。
のんびりと歩くウォーキングではなく息が弾む程度のジョギングやサイクリングが効果的です。
初めは低い強度から行い、運動強度は少しずつ上げていくようにして50~75%程度を目指すようにしましょう。

また、筋力トレーニングも効果的です。
脳に良いとされる乳酸を出すには、筋力トレーニングによって多く出すことができます。
特にスロートレーニングや加圧トレーニングがより効率的です。
通常の筋力トレーニングであれば、ある程度回数を多くしたほうが乳酸は溜まるので負荷強度はやや低くし15~30RM程度の負荷が良いかと思います。

脳の鍛え方の常識は変わりつつあります。
脳の老化を防ぐ為にも運動を定期的に取り入れられると良いでしょう。

集中系と分散系のバランスを意識しよう

脳伝達イメージ

脳のコンディションを良好に保つには集中系と分散系のバランスが重要になります。

集中系は仕事などで脳を酷使している状態です。
目的のある課題、読書、好きなことに集中、運動、文章を書く、ゲームをするなどがあります。

分散系は景色を眺めるなどボーっとしたり、散歩、過去の回想をする、入浴、単純作業、SNSを流し読みなどがあります。

実は、大きな不幸や仕事のプレッシャーなどの精神的なストレスは分散系を活性化してうつ傾向になることもあります。
このような時は、ゲームなどで集中系に切り替えると良いとされています。

脳を鍛えるというと神経細胞であるニューロンへの刺激に注目しがちかと思います。
ですが、脳内細胞の約8割を占めているグリア細胞も重要な役割を持っています。
グリア細胞の中で最も数が多いオリゴデンドロサイトが、脳の健康維持のカギを握ることが近年の研究で分かってきているようです。

オリゴデンドロサイトはニューロンを支える大事な役割を持っていますが、代謝活動が活発な細胞なので傷つきやすいです。
その為、脳に負担がかかるとオリゴデンドロサイトがダメージを受け、将棋倒しのように悪影響が広がっていきます。

オリゴデンドロサイトを守る為に重要なのが集中系と分散系のバランスを意識することなのです。
集中系の作業でニューロンなどを酷使し過ぎていると活性酸素が増えてオリゴデンドロサイトがダメージを受けてしまいます。
集中系の状態を続けていたら分散系の行動を取り入れるようにするとオリゴデンドロサイトを守ることに繋がります。
意外かもしれませんが、仕事のプレッシャーなどでストレスが高まっている時は、分散系の状態になります。
分散系の活動はうつ傾向になりかねないので、そうした場合は趣味やゲームに取り組むなど集中系を意識したほうが良いでしょう。

幸福感が認知症予防になる

認知症の予防は、運動、食事、睡眠、コミュニケーションが常識とされてきましたが、それ以外にも近年注目されているのが主観的幸福感です。
誰かに席を譲ったり、ボランティアなどの手伝いをしたりする利他的行動が主観的幸福感を高めて認知症のリスクが下がることが分かってきています。
日々のささやかな幸せを感じることがストレスレベルを下げ、認知症リスクを下げてくれます。

人間は、利己的行動よりも誰かの為に行う利他的行動の方が主観的幸福感が高まり脳に良い影響を与えます。
ちょっとしたボランティア活動などを無理のない範囲で行うことが認知症予防に繋がります。

また、趣味や好奇心で脳を使うことも重要です。
好きな趣味に関わることで感情が刺激されて記憶力も高まります。
楽器を弾く、料理をするなどの能動的な趣味であればシナプスが再編成されます。
脳の可塑性を高めることにも繋がります。

趣味や好奇心などの楽しい感情は記憶にポジティブな影響を及ぼします。
特に絵を描く、旅行に行くなど能動的な趣味が認知症予防に効果的です。