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ストレッチは動脈硬化予防にもなる|静的ストレッチで動脈硬化のリスクを軽減

動脈硬化とは?

動脈硬化とは、血管の壁が厚く硬くなり、弾力性を失う病気です。
動脈硬化が進むと、血流が妨げられ心臓や脳などの臓器に十分な酸素や栄養が届かなくなります。
これにより心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。
動脈硬化の原因は、高血圧、高コレステロール、糖尿病、喫煙、肥満、遺伝などが挙げられます。
これらの危険因子は、血管の内皮細胞にダメージを与え、炎症や酸化ストレスを引き起こします。
その結果、血管の壁にコレステロールやカルシウムなどが沈着し、動脈硬化斑と呼ばれるプラークを形成します。
プラークは血管を狭めるだけでなく、破裂すると血栓を引き起こし、血管を完全に塞いでしまうこともあります。
動脈硬化は無症状で進行することが多いので自覚しづらい病気ですので、早期発見・早期治療が重要です

加齢に伴って誰でも動脈のスティフネス(硬さ)が増加していき、動脈硬化が進んでいきます。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を習慣的に行っていると動脈のスティフネスを減少させてくれますので、動脈硬化の予防に繋がります。
しかし、中高年者にとって膝などに負担のかかる有酸素運動を継続的に行うことが難しい場合もあります。
関節に不安のある人の場合は、陸上で行う運動よりもプールで行う水中ウォーキングや水泳のほうが良いでしょう。
ですが、プールを習慣化させるのも難しいことかと思います。
そんな人におススメなのがストレッチです。
ストレッチを行うことで動脈硬化のリスクを減らすことができます。

一般的なストレッチはスタティックストレッチ

肩をストレッチする女性

ストレッチとは、筋肉や関節を伸ばすことで、柔軟性や可動域を高める運動のことです。
ストレッチには、身体の緊張をほぐす効果や血行を促進する効果などがあり、筋肉や腱の柔軟性・関節可動域を向上させる為に行われています。
運動前や運動後に行うことで怪我の予防やパフォーマンスの向上にも役立つとされています。

ストレッチには、スタティックストレッチ(静的ストレッチ)、ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)、PNFストレッチの3つがあります。
一般的に知られているストレッチはスタティックストレッチです。

スタティックストレッチは、筋肉を伸ばしていきその状態を10~30秒程度キープするストレッチになります。
ダイナミックストレッチは、関節を動かしながら筋肉を伸ばすことで筋肉の柔軟性や関節の可動域を高める方法です。
運動前にダイナミックストレッチを行うとパフォーマンス向上、ケガの予防に効果が期待できます。

PNFストレッチは、筋肉の伸張反射を利用して柔軟性を高めるストレッチ法の一種です。
PNFとは、神経筋機能促進法(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)の略でリハビリテーションやスポーツトレーニングで広く用いられています。
PNFストレッチには、主に以下の3つの方法があります。

・持続弛緩法(CR):筋肉を伸ばした状態で数秒間収縮させた後、再び伸ばす方法です。
・収縮弛緩法(AC):筋肉を伸ばした状態で数秒間収縮させた後、力を抜いてさらに伸ばす方法です。
・収縮反対筋弛緩法(ACR):筋肉を伸ばした状態で反対側の筋肉を収縮させた後、力を抜いてさらに伸ばす方法です。

PNFストレッチは、他のストレッチ法に比べて柔軟性の向上効果が高いとされていますが、注意点もあります。
筋肉や関節に強い負荷をかけるため、過度に行うと筋肉や靭帯の損傷や関節の不安定化などのリスクがあります。
また、パートナーと行う場合は相手の力加減や動作に合わせて行う必要があります。
PNFストレッチは、ウォーミングアップやクールダウンなどのトレーニング前後に行うことで、パフォーマンスの向上や怪我の予防に役立ちます。

4週間の下肢のストレッチで動脈スティフネスが減少

統計データイメージ

ストレッチと一般的に言えば、スタティックストレッチのことを指します。

4週間の下肢スタティックストレッチで全身の動脈スティフネス(硬さ)を減少させることが報告されています。
研究では、14名の健康な中高年女性が対照群7名、またはストレッチ介入群7名に無作為に分けて検証しています。
介入群のみ4週間の下肢ストレッチ(股関節伸筋群、屈筋群、膝関節伸筋群、屈筋群、足関節底屈群)を実施。
介入前後に脈波伝播速度を用いて全身、中心および末梢の動脈スティフネスを測定。
その結果、末梢の動脈スティフネスの指標である大腿動脈-足首間脈波伝播速度は介入群で有意に減少、対照群では変化がみられませんでした。
また、全身の動脈スティフネスの指標である上腕-足首間波伝播速度、中心動脈スティフネスの指標である頸動脈-大腿動脈間脈波伝播速度は、両群とも変化がみられませんでした。

つまり、ストレッチはストレッチを行った部位の動脈の弾力性を向上させる作用があると言えます。
これにより4週間の下肢のストレッチによって局所的な動脈スティフネスを減少させることが分かりました。
この研究では、5種類の下肢スタティックストレッチを朝晩2回、最大可動域で30秒伸ばして10秒の弛緩を挟んで2セットの約15分行っているようです。

これ以外にも様々な研究によってストレッチによる動脈機能改善効果が示されています。
ストレッチを習慣化させることで血管の柔軟性の向上・維持が期待でき、動脈硬化のリスクを減らす可能性があると考えられます。
下肢だけでなく、上半身(上肢、体幹、頸部)のストレッチも行えば全身の血管の弾力性の向上・維持に繋がるかと思います。
ストレッチには様々な効果が期待できますので、是非日々の生活に取り入れてみてはどうでしょうか。

参考文献
ストレッチ運動による動脈機能の改善効果
介入研究の知見による動脈スティフネスに対するストレッチングの有用性
運動と栄養による動脈硬化のアンチエイジング