熱中症について|スポーツ時は、環境や時期、天候などを考慮することが重要
はじめに
スポーツ活動時における熱中症は、身体を動かすことで熱生産が活発になり体温が上昇することが主な原因となります。
スポーツ種目によって運動特性や運動環境などが異なるので熱中症が発生しやすい種目、環境、対象年齢などが様々あると考えることができます。
運動指導者は、日ごろから対象者の体調管理確認をすることが大切です。
また、場所の環境や時期、天候などを考慮することが熱中症予防では重要となります。
熱中症の分類
熱中症とは、暑熱環境における身体適応の生涯によって起こる状態の総称です。
暑熱によるめまい、湿疹、生あくび、大量の発汗、強い口渇感、頭痛、嘔吐などを呈すものを熱中症と定めています。
現場では、できる限り迅速に熱中症による異常を認識して医療機関への繋げることが重要となります。
熱中症はその特徴による分類されています。
熱痙攣
大量に汗をかいて塩分をあまり摂らずに水だけを補給して血中の塩分濃度が低下し低ナトリウム血症になると起こります。
主に四肢や腹筋などの筋肉が痙攣や筋肉痛が起こります。
汗には塩分も含まれているので水分だけでなく塩分も一緒に補給することが大切です。
痙攣の対応としては、ストレッチやクライオストレッチが有効です。
クライオストレッチとは、氷で冷却しながら筋肉を伸ばす方法になります。
熱失神
炎天下で長時間立っていたり、座った状態から立ち上がったりしたとき、または運動後などに起こります。
皮膚血管の拡張と下肢への血液滞留により血圧が低下して脳血流が減少することでめまいや失神などが起こります。
仰向けの状態で安静にすることで回復することが多いです。
熱疲労
発刊によって脱水と皮膚血管の拡張による循環不全の状態で。発汗が多く血圧低下や頻脈、顔面蒼白の状態になります。
脱力感や全身の倦怠感、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状がみられます。
体温は、正常もしくは40℃を超えることはありませんが、早急に症状に気づき運動を中止したりして熱射病になることを防ぐ必要があります。
熱射病
体温調節機能が破綻し、過度に体温が上昇することで脳機能に異常をきたす状態です。
意識障害がみられ、応答が鈍い、言動がおかしいなどの状態から昏睡状態になります。
高体温が持続すると脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓、などの多臓器障害を併発し死亡率が高くなります。
深部体温をできる限り早く下げる必要があります。
スポーツ活動時の熱中症の現状
学校管理下の災害において平成17年度~令和4年度の中学、高校などの体育的部活動における熱中症死亡事例は24件報告されています。
室内競技や屋外競技問わずランニングやその他トレーニングでの発生が報告されています。
令和4年度、学校管理下の災害において中学、高校などの体育的部活動での熱中症発生報告数は1年間で1457件です。
中学校では、バスケットボールでの熱中症発生が最も多く、次いでテニス、野球、陸上競技、サッカー・フットサルの順に多くなっています。
高校では、野球が最も多く次いでサッカー・フットサル、バスケットボール、テニス、陸上競技の順に多いと報告されています。
これらの結果は、学校現場での体育的部活動中の報告のみになりますが、熱中症の発生は、天候、練習時間や個々の内的要因などに加えて運動環境やユニフォームや防具等の着用の影響が要因になり得ることが考えられます。
熱中症の救急対応
熱中症が疑われる場合は、まず意識障害の有無を確認します。
呼びかけに対して応答が鈍かったり、言動がおかしい、反応が無い場合は直ぐに救急車を呼びましょう。
救急隊が到着するまで傷病者を涼しい場所へ移動し脱衣と冷却をしながら経過観察を行い救急隊へ引継ぎを行います。
意識障害がない場合は、涼しい場所へ移動して衣類を緩めるなどの対応を行います。
意識障害が疑われない場合は、涼しい場所へ移動した後に水分摂取を行います。
摂取が可能な場合は、スポーツドリンクなどの水分と塩分を補給すると同時に身体の冷却も行いましょう。
水分摂取が困難な場合は、症状が悪化してしまうことも考えられるので医療機関へ早急に搬送する必要があります。
水分摂取と冷却で症状が改善する場合は、引き続き経過観察を行い症状の変化に十分注意しましょう。
症状が改善しない場合は、早急に医療機関へ搬送するようにします。
冷却方法としては、全身を浸す氷水浴が最も効果的であるとされています。
実施する際は、寒いと言うまで冷却をします。
その他、一般的には水道水をホースで全身にかける、水道水撒布法や氷水で濡らしたタオルを全身に被せ、同時に扇風機で風を送る方法が良いでしょう。
アイスパックなどを頸動脈、腋窩動脈、鼠径動脈への大動脈に当てる方法は冷却効率が低いので熱射病では不十分になります。
それよりも全身に水を浴びせ、風を送るほうが良いのです。
スポーツ現場では、深部体温を測定することが困難な場合がほとんどかと思うので、後遺症のリスクを最小限にする為に躊躇せずに身体を冷却しましょう。