健康情報館

ヘルス&フィットネス~日々の健康・身体作りに役立つ知っておきたいこと~

健康情報館
トレーニング・フィットネス

アスリートの水分補給について|運動前・中・後に適切に水分を補給しよう

スポーツ時における脱水

私たちの身体の半分以上は水分で構成されています。
脱水とは、適正範囲を下回った体水分状態のことをいいます。
運動時に失った水分と電解質を補給する必要がありますが、実際には水分喪失量よりも水分摂取量が少なくなり脱水状態に陥ってしまうことが多いです。

アスリートにとって脱水対策が重要とされる理由としては、熱中症のリスク、競技パフォーマンスの低下があります。
脱水状態では、発汗効率が低下することによって深部体温が上昇しやすくなり、熱中症の発症リスクが高まってしまいます。

脱水は、深部体温の上昇に心拍出量や筋肉の血液量の低下を引き起こすので、持久系能力、パワー系能力、認知機能などの競技パフォーマンスにも影響を及ぼすことが報告されています。
体重の2%以上の脱水で持久性パフォーマンスや認知機能が低下し3~5%以上で無酸素性運動や競技スキルにおけるパフォーマンスの低下を引き起こすと言われています。
脱水のよるパフォーマンスの影響は暑熱や高地などの環境条件と合わせることでさらに悪化してしまうので、このような条件下では水分補給による配慮が重要となります。

運動前・中・後の水分補給が大事

準備運動する女性

スポーツ時の水分補給については、運動前、運動中、運動後においてそれぞれ計画的に実施することが望ましいです。

運動前の水分補給の目的は、運動開始までに十分な水分状態と正常な血漿電解質レベルに調整することにあります。
運動4時間前から体重1kgあたり5~7mlの飲料を少しずつ飲み始め、それでも尿が出ない、または尿の色が濃い場合は、運動2時間前に追加で体重1kがたり3~5mlの飲料をゆっくりと飲むことが推奨されています。
特に運動中に水分補給の機会が少ない競技では、運動前に十分な水分状態に回復させておくことが重要です。

運動中の水分補給のポイントは、発汗量を超えて飲み過ぎないことと体重の2%以上脱水しないことです。
日常的に運動前後の体重を測定して、運動時の発汗量をある程度把握しておくと良いです。
運動時の体重減少のほとんどは発汗によるものなので、発汗量を簡易的に知ることができます。
特に夏場は、運動時の発汗量が増えるのであらかじめ気温の上昇に伴う発汗量の増加を経時的に測定し暑熱環境における適切な水分摂取量を見積もらっておく必要があります。

運動後の水分補給としては、体重減少1kgあたり1.25~1.5L程度の水分を摂ることが推奨されています。
運動後の水分状態の回復の為には、飲料の摂取だけでなく少量の塩分を追加した軽食を摂ることも有効とされています。
1日に複数の試合があり、その間隔が短いような競技では、試合後に体重減少量の1.25~1.5Lの水分摂取が難しい場合があります。
その場合、運動中と同様に体重2%以内の脱水に留めることを重視して、可能な範囲で追加の水分補給を行うようにしましょう。

普段の練習時から実際の試合時の状況を想定して可能な水分摂取量の算出や水分補給プランのシミュレーションをしておくと良いかと思います。

スポーツドリンクが推奨されている

運動時には、水だけでなく電解質と糖質を含むようなスポーツドリンクの摂取が推奨されています。
電解質を含まない水分摂取の場合、血漿浸透圧の低下や口渇感の軽減が起こり、それ以上の水分摂取をしなくなる自発的脱水やナトリウム濃度の低い尿の排出促進が起きて必要な水分量を補うことができなくなってしまいます。
また、糖質濃度は、飲料が胃から腸に移動する速度に影響をしています。
これらを考慮すると100mlあたり0.1~0.2gの食塩相当量、3~8%の糖質を含む飲料が推奨されています。

水分補給時の注意点

水を飲む女性

通常、多くの人は運動時に喉の渇きに応じて自発的に水分補給をしているかと思います。
しかし、自発的な水分補給では喉が潤されるとそれ以上の水分補給をやめてしまうので、運動時の発汗による水分喪失量の半分程度の量しか水分補給できていないと言われています。
その一方で脱水のリスクばかりに着目し過剰に水分摂取をしてしまうと低ナトリウム血症を引き起こしてしまう危険性があります。

運動時には、水分の摂取不足だけでなく過剰摂取にも注意が必要です。
質の高いトレーニングの実施やより高いパフォーマンスを発揮できるようになる為にも様々な運動強度や環境におけるアスリートの発汗量を把握しておいて、運動前、運動中、運動後の個別の水分補給のプランを準備しておくと良いかと思います。