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トレーニング・フィットネス

アスリートと脂質、ケトン食の運動パフォーマンスへの影響は?メリットとデメリット

脂肪、油、脂の違いとは?

脂質は長い間、健康に良くないとされて悪の栄養素として扱われていました。
ですが、近年になって脂質の重要性が見直されてきました。現在では、良質な脂質は摂った方が健康に良いと言う風潮にまでなっています。

ですが、脂質に関しては糖質やタンパク質ほど情報が多くはありません。

脂質はどれくらい摂取すればいいのでしょうか。
健康の維持や増進に役立ち、運動パフォーマンスを向上させることができるのでしょうか。

まず、あぶらと一言に言っても漢字では、脂肪、油、脂と書くことができます。
これらは厳密に定義されているわけではありませんが、これらの違いを理解しておくと良いでしょう。

脂肪

脂肪とは、中性脂肪のことです。
グリセロール分子に脂肪酸が3個結合しています。
健康診断で測定するのは、血液中を流れている中性脂肪になります。
中性脂肪は、内臓や身体の脂肪細胞に蓄えられた体脂肪です。

常温で液体の中性脂肪です。
植物性油はオリーブオイル、アマニ油、大豆油など。動物性油は魚油や鶏油です。

常温で固体の中性脂肪です。
動物性脂は牛脂、豚脂など、植物性脂はパーム油、ココナッツ油です。
油と脂をまとめて油脂と呼びます。

脂質

栄養学で使われる用語です。
中性脂肪以外にもコレステロールなども含まれています。

重要な働きをする脂質

女性ストレッチ

減量をする時に脂質をなるべく摂らない方が良いとよく言われるかと思います。
なるべく摂らないようにしたことがあるのではないでしょうか。

三大栄養素の中で脂質は、g単位でのカロリーが一番高いです。
その為、脂質を抑えることで効率的に摂取カロリーを抑えることができます。

ですが、脂質をカットした食事をすると身体に不調が出てくることもあります。
体力がなくなる、筋肉に張りがなくなる、皮膚や髪の毛がカサつき見た目も老化してくることもあります。
ダイエットで脂質をカットしたことがある人は、経験をしたこともあるのではないでしょうか。

実は、脂質は健康を維持する為に重要な役割を果たしているのです。
脂質には主に下記の働きがあります。

細胞膜を構成する

細胞膜は、細胞の骨格と言えます。
細胞膜は、リン脂質やコレステロールなどの脂質からできています。

脂溶性ビタミンの吸収を助ける

脂溶性ビタミンであるA、D、E、Kやカロテノイドなどの吸収を高めてくれます。

脳の機能を保つ

脳は水分を除くと6割程度は脂質からできています。
その中でもn-3系脂肪酸やn-6系脂肪酸が多く含まれています。

身体を保温して保護をする

体脂肪は、衝撃や寒さから内臓や筋肉を保護しています。

エネルギー源になる

体脂肪は、身体のエネルギー源になります。
体脂肪1kgあたり約7,200kcalあります。

ホルモンの材料になる

脂質は男性ホルモンであるテストステロンなどの性ホルモンや副腎皮質ホルモンの材料になります。

このように脂質には重要な働きがあります。
脂質が不足してしまうと身体の機能が低下してしまうのです。
それによって運動パフォーマンスも低下してしまいます。

脂質の摂り過ぎはもちろんいけませんが、取らなさ過ぎも良くないと言うことです。
では一体どれくらい摂ればいいのでしょうか。

脂質はどれくらい摂れば良い?

揚げ物を食べている女性

実際にどれくらいの脂質を摂取すると身体に良いのでしょうか。
どの程度摂取すれば健康の維持や増進ができるのかは、実はまだ議論中のようです。

日本人の2020年食事摂取基準は、脂肪の目標摂取量エネルギー比の20~30%で、そのうち飽和脂肪酸は7%以下とされています。
例えば1日に2,000kcal摂取するのであれば、だいたい45~65gの脂質を取りましょうと言うことになります。

これは日本人が摂取している脂質量の中央値から、飽和脂肪酸摂取量、必須脂肪酸量の必要量を考慮して算出した比率になります。

明確な科学的根拠によって健康の維持、増進ができる量ではなくて、生活習慣病予防を目的とした目標量になっているのです。

脂質を摂取する上で明らかなことは1gあたり約9kcalと糖質やタンパク質よりも高カロリーであることです。
高カロリーで太りやすい栄養素なので摂り過ぎには注意が必要だと言うことです。
そして、体内で合成できないn-3系の脂肪酸とn-6系の脂肪酸は毎日摂取した方が良いのかもしれないと言うことかと思います。

体内で合成できない必須脂肪酸

n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸は体内で合成できない必須脂肪酸とされています。
ですが、これらも摂り過ぎては身体に悪影響を及ぼします。
適切に摂取することが重要です。

では一体どのくらい摂取すれば良いのでしょうか。

n-3系脂肪酸(オメガ3)

目標値は1日約2gとされています。
n-3系脂肪酸は、一般的に炎症やアレルギー症の抑制などの効果があるとされています。
多くの人が不足しているとも言われています。
n-3系脂肪酸は、魚油やアマニ油、エゴマ油に多く含まれています。
アマニ油やエゴマ油は、小さじ1杯で約2.3g(αリノレン酸)です。
サーモンやブリなどの魚は切り身1枚100gに約2.5g程度(DHA、EPA)含まれています。

n-6系脂肪酸(オメガ6)

n-6系脂肪酸の目標量は成人で1日約10gとされています。
大豆油やコーン油などに多く含まれています。
これらの油は調理でよく使われているのでn-3系脂肪酸と違って不足することはほとんどありません。
摂取し過ぎてしまうと炎症やアレルギーを引き起こしてしまうとされていますので、摂り過ぎないように注意する必要があるかと思います。

アスリートのケトン食によるメリットとデメリット

書類を開いている女性

アスリートにとって脂質は身体に良いのでしょうか。

一般の人の健康維持や健康増進に必要な摂取量が明確に分かっているわけではありません。
なのでアスリートにとって最適な脂質の量も分かっていないのが現状です。

北米のスポーツ医学関連団体が出したスポーツ栄養に関する公式の見解によると「減量時でも脂質の摂取量が20%未満にならないようにすべき」としています。

例えアスリートであっても脂質の摂取量は少な過ぎても多過ぎても良くないので、一般の人の基準値を参考に摂取しましょうと言うことになります。

では、運動のパフォーマンスを向上させる脂質の摂取の仕方と言うのはあるのでしょうか。

糖質制限ダイエットが人気を集め、ケトン食と言う言葉を一度は聞いたことがある人も多いと思います。

超低糖質で高脂肪食がいわゆるケトン食になります。
具体的には、1日の糖質の摂取量が20g未満、もしくはエネルギー摂取量の5%未満の食事になります。
一部のアスリートでは、パフォーマンスを向上させる為にケトン食を取り入れたりもしています。

このケトン食について今まで分かっているメリットとデメリットについては下記のようなことのようです。

メリット

・食欲抑制効果があり減量をしやすくなる
・効率の良いケトン体をエネルギー源として利用できるようになる
・活性酸素の発生が少なく抗酸化酵素の発言が高まる
・筋へのダメージが少なく回復も早くなる
・糖質を節約できる

デメリット

・長期間継続させるのが困難
・適応するまで時間がかかる
・数週間の間、疲れやすくなる
・糖代謝が抑制される
・力が出にくくなり高強度の運動が行えなくなる

日本スポーツ栄養学会監修 エッセンシャルスポーツ栄養学より

ケトン食の健康や運動パフォーマンスの効果はまだ研究中のことが多いです。
ケトン食の長期的な摂取による身体への影響も分かっていません。

そして、栄養バランスが極端に偏ってしまいます。
ビタミンやミネラルなども不足しやすくなるので安易に行わない方が良いかと思います。
健康を害してしまうことも多いので、もしケトン食を行ってみたい場合はケトン食に詳しい医師や管理栄養士、栄養士に相談するようにしましょう。

一言に脂質と言っても様々な種類があり体内での役割も異なりますが、どれもカロリーは同じです。
脂質の摂り過ぎは体脂肪になり肥満の原因となりますので適正な量を摂取することが大事だと言えます。