トレーニング後のタンパク質摂取はゴールデンタイムよりもトレーニング後24時間が重要!
目次
筋力トレーニングをする人はタンパク質を意識しよう
毎日筋力トレーニングに励んでいてもそれだけで筋肉が鍛えられるわけではありません。
自動車が走り続けるには、外部からエネルギーを補給しないといけないように私たちの身体も同じように運動によってエネルギーを消費すれば外部からエネルギーを補給しないといけません。
筋肉を大きく肥大させたり強くさせたりするには、正しい運動と栄養摂取の両方が必要です。
人間の身体は、約60%が水分です。
その他に脂質やミネラルなどがあり、水分の次に多いのが全体の約20%を占めているタンパク質になります。
タンパク質は、心臓や肺などの臓器をはじめ、皮膚や爪、髪の毛、ホルモン、血液、免疫成分など身体を構成する様々な物質を作る為の原料となっています。
筋肉の最小単位である筋原線維もアクチンとミオシンと言う筋タンパク質からできています。
なので、筋肉を増やすにはタンパク質が重要と言うことになります。
タンパク質は、アミノ酸と言う分子が数十~数万個単位で組み合わさってできています。
地球上のあらゆる植物、動物もアミノ酸が作り出す無数のタンパク質からできています。
アミノ酸は、アミノ基(NH3)、カルボシル基(COOH)、水素(H)、側鎖(R)で構成されています。
側鎖には、様々な分子が繋がることでアミノ酸は多種多彩な機能を発揮するようになります。
自然界には、数百万種類のアミノ酸が存在していますが、タンパク質の材料になるのは20種類のアミノ酸です。
20種類のアミノ酸は、9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸に分けられます。
非必須アミノ酸は体内で作り出すことが可能ですが、必須アミノ酸は体内で合成することができませんので食事から摂取しないといけません。
アミノ酸が2個以上結合した物をペプチドと言います。
アミノ酸が2個結合したのがジペプチド、3個でトリペプチド、10個程度でオリゴペプチド、それ以上をポリペプチドと言います。
ペプチドとタンパク質の明確な線引きはないのですが、一般的にアミノ酸が50~100個以上結合した物をタンパク質と呼んでいます。
食事で摂取したタンパク質は、消化されて一度アミノ酸レベルまで分解されます。
そして、必要に応じて再度タンパク質に合成すると言うプロセスを経ています。
アミノ酸は肝臓からすぐに使う分は血液中に放出されて、それ以外はアミノ酸プールに貯蔵されます。
貯蔵と言っても特定の貯蔵庫があるわけではなくて、血液中や組織内にアミノ酸が遊離した状態にあることを言います。
体内に入ってきたタンパク質は、消化・分解⇒吸収⇒貯蔵⇒合成と言う流れで筋肉に作り替えられていきます。
しかし、タンパク質をたくさん摂取すれば筋肉が合成されるわけではありません。
単純にタンパク質を摂取しているだけでは、現状の筋肉量を維持する程度にしかタンパク質は合成されません。
筋肉の合成を促進させるには、食事による栄養を摂取とともに、運動がもたらす刺激によって「筋タンパク質の合成感度」を高める必要があります。
その為に適切な筋力トレーニングをすることが重要となります。
筋力トレーニング後のタンパク質摂取は理にかなっている
近年、アミノ酸の安定同位体を用いる研究手法が確立し、アミノ酸の合成・分解を詳しく調べる方法が生み出されたことによって次々と新たな知見が報告されています。
現代のスポーツ科学やスポーツ栄養学では「筋力トレーニングだけでは筋肥大は起こらない」「筋トレ後にタンパク質を摂取する」ことが常識として定着しつつあります。
その根拠となったのが、アメリカのシュライナーズ・バーンズ研究所のビオロらの研究報告です。
ビオロらは「空腹の時」「タンパク質を摂取した時」「空腹時に筋力トレーニングをした時」「筋力トレーニング後にタンパク質を摂取した時」の4パターンで筋タンパク質の合成量と分解量を計測しました。
その結果、空腹の時は筋タンパク質の分解量が増加しタンパク質を摂取すると合成量が増加しました。
空腹になると体内のアミノ酸濃度が不足し、それを補う為に筋タンパク質を分解してアミノ酸が作り出されます。
ですので、筋肥大は起こりにくくなります。
ここでタンパク質を摂取するとアミノ酸濃度を高めることができ筋タンパク質の合成量を促すことができます。
「空腹状態で筋力トレーニングをした時」は筋タンパク質の合成量は増加しません。
「筋力トレーニング後にタンパク質を摂取した時」は、筋タンパク質の合成量が顕著に増加します。
これは、筋力トレーニングによって筋タンパク質の合成感度が上昇したタイミングでタンパク質を摂取すれば、合成量が増大して筋肥大が促進されることを意味しています。
筋肥大を目指す場合は、筋力トレーニング後にタンパク質を摂取することが重要であると言うことになります。
筋力トレーニング⇒筋タンパク質の合成感度が上昇⇒タンパク質を摂取⇒筋タンパク質の合成が促進⇒筋肥大
ゴールデンタイムよりも24時間が重要
一般的に筋力トレーニング後1~2時間は、筋タンパク質の合成が高まるゴールデンタイムと言われています。
筋力トレーニングをしている人は、意識していることでしょう。
この根拠となっているのが、アメリカ・テキサス大学医学部のラスムッセンらによる研究報告です。
ラスムッセンらは、トレーニング未経験者を集めてトレーニング直後のタンパク質摂取による筋タンパク質の合成反応を調べました。
被験者は1時間トレーニングを行った後、必須アミノ酸15g摂取しその後1時間おきに筋タンパク質の合成量を計測しました。
すると、筋タンパク質の合成量はトレーニング後1~2時間が最も高くなり、その後は1時間ごとに減っていったのです。
この結果からトレーニング直後にタンパク質を摂ることが最も筋タンパク質の合成作用を高める摂取方法だと結論付けました。
これがゴールデンタイムと言われるようになり常識として広まっていったのです。
しかし、現代のスポーツ科学やスポーツ栄養学では、トレーニング後のタンパク質摂取において、ゴールデンタイムよりも重要なことがあるとしています。
それは「筋力トレーニング後のタンパク質摂取は24時間を意識しろ」と言うものです。
なぜならタンパク質の合成感度は24時間継続するからです。
筋タンパク質の合成感度は24時間継続する
筋力トレーニングによる筋タンパク質の合成感度はトレーニング後24時間継続をします。
アメリカ・シュリナーズ病院のティプトンらはトレーニング未経験の20代男女を被験者としてトレーニング前後に必須アミノ酸15g摂取させて、その前後24時間における筋タンパク質の合成感度の上昇時間を計測しました。
すると筋タンパク質の合成感度は24時間後まで高い状態が続いていることが分かりました。
この結果は非常に興味深いものですが、対象者がトレーニング未経験者に限定されているのでトレーニング経験者の場合がどうなるのかは分かりません。
そこでマクマスター大学のバードらによる研究報告があります。
こちらはトレーニング経験のある20代男性を被験者としてレッグエクステンションを行わせた後、24時間後にホエイプロテインを15g摂取させ、筋タンパク質の合成率を計測しています。
その際、トレーニング強度と疲労度を基準に被験者を三つのグループに分けて検証しています。
1RMの90%で疲労困憊まで行う
1RMの30%で疲労困憊まで行う
1RMの30%で疲労困憊まで行わない
その結果、高強度、低強度ともにトレーニングを疲労困憊まで行ったグループは、24時間後の筋タンパク質の合成率が増加していました。
一方で疲労困憊まで行わなかったグループは、筋タンパク質の合成率がそれほど増加していませんでした。
この結果から分かることがあります。
トレーニング強度に関係なく疲労困憊まで行えば筋タンパク質の合成感度が24時間後まで上昇する、合成感度の上昇が24時間継続するのはトレーニング経験の有無に関係しないと言うことです。
バードらは同様の検証を複数回行い2014年には一連の研究結果をまとめています。
その後、マクマスター大学のフィリップスらも同テーマで報告していますが、いずれもトレーニング後1~3時間ほどで筋タンパク質の合成感度は最も高くなり、それ以降は増大率が減退するものの少なくても24時間後まで継続することが確認されています。
2017年には、国際スポーツ栄養学会から「トレーニング後、少なくとも24時間は筋タンパク質の合成感度が高まる」と公式見解も発表されています。
今までは、トレーニング後1~2時間のゴールデンタイムにタンパク質を摂取することが常識でした。
ですが、これは今では過去の常識と言えます。
最新のエビデンスによれば「トレーニング後のタンパク質摂取は24時間を意識」になっています。
トレーニング後にプロテインを飲む人は多いかと思いますが、効果を最大限に引き出すにはそれだけでは足りません。
24時間後まで筋タンパク質の合成が高まるので、普段の食事も意識をする必要があります。
筋力トレーニング後24時間の3食でバランス良くタンパク質を摂取することがトレーニング効果をより高めてくれるでしょう。