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トレーニング・フィットネス

ストレッチの種類3つと筋腱複合体の特性について、弾性と粘性

3種類のストレッチ

スポーツ現場で一般的に行われているストレッチには、静的ストレッチと動的ストレッチがあります。
また、ストレッチは能動的に行うこともあれば他動的に行うこともありますし、神経の反射機能を利用したストレッチ方法もあります。

スポーツの現場や臨床現場では、様々なストレッチが様々な目的で行われています。
ストレッチの種類は、大きく分けすと下記の3種類あります。

静止させる静的ストレッチ

これは一般的なストレッチであり、多くの人がイメージしているストレッチかと思います。
筋肉を伸ばして、数秒から数十秒その姿勢を保つ方法です。
筋肉をストレッチさせる為に特定の関節を通常の可動域以上の位置に固定させて一定時間保持し続けるストレッチになります。
筋肉を伸ばす為に関節の位置を保持する為には、自らの筋収縮を用いるだけではなく、重力、器具、パートナーによる補助などがあります。
静的ストレッチの特徴としては、静止状態に近い、極めてゆっくりとした動きで行います。

リズミカルな動的ストレッチ

動的ストレッチは一般的にリズミカルに、時には反動を用いて目的とする関節を通常の可動域以上に動かして目的とする筋肉を引き延ばすストレッチの種類を言います。
日本で広く知られている動的ストレッチの一例としては、ラジオ体操があります。
実は、ラジオ体操が動的ストレッチになっているのです。
ラジオ体操は、反動動作を使いリズミカルに関節を動かしながら様々な筋腱複合体を伸長させる運動形態です。
動的ストレッチでは自ら関節を動かし目的とする筋肉を伸ばす為に関節を動かしますが、静的ストレッチとは異なります。
関節の動きの最終位置を保持しないことが特徴と言えます。

PNFストレッチ(固有受容性神経筋促進法)

関節や身体の動きや位置を認知する感覚は、固有感覚と言います。
それを感じるセンサーのような器官を固有受容器と呼びます。
例えば、私たちの筋肉に存在する筋紡錘や筋腱移行部にあるゴルジ腱器官は、この固有感覚を感じる固有受容器です。
PNFストレッチでは、ある特定の固有受容器に刺激を与えてそれらを促進、または抑制させることによって、ストレッチの効果を高めることを目的としたストレッチになります。
PNFストレッチのやり方はいくつか種類もあります。

筋腱複合体のストレッチの方法

準備運動する女性

ストレッチを行う方法を理解する為には、筋腱複合体が関節を動かす仕組みを理解する必要があります。
筋腱複合体は、数十本の筋繊維の束である筋束が平行に数百から数千本配列した筋腹と腱組織で構成されます。
筋腱複合体は、関節をまたいで骨膜に付着しているので、筋肉が収縮して十分な力が骨に伝わると関節が動きます。

例えば、ももの前側の筋肉である大腿四頭筋の一部の内側広筋、中間広筋、外側広筋は、膝関節をまたぎ、腱組織を介してももの大腿骨とスネの脛骨に付着しています。
これらの筋群の作用は、膝関節の伸展であり膝を伸ばすことです。
広筋群が収縮して筋腱複合体全体の長さが短くなると、膝関節は伸展します。

このような筋肉が関節を動かす基本的なメカニズムから、目的とする筋肉をストレッチする原則が見えてきます。

筋肉の作用と逆方向に関節を動かす

筋肉をストレッチする為には、ストレッチさせたい筋肉の作用と逆方向に関節を動かすことです。
先ほどの広筋群の作用は、膝関節の伸展なので広筋群をストレッチさせるには膝関節を屈曲させるということになります。

一方で大腿四頭筋の一つである大腿直筋はどうでしょうか。

この筋肉は、膝関節と股関節をまたいでいる二関節筋になります。
大腿直筋は、起始と停止の位置から広筋群のように作用が一つではなく、膝関節の伸展と股関節の屈曲の二つの作用があります。
なので、この筋肉を伸ばすには膝関節を屈曲(曲げる)させて股関節を伸展(伸ばす)させる必要があります。

邪魔をする筋肉をたるませる

これは、ストレッチしたい筋肉が伸張しきる前に伸張しきってしまう筋肉をたるませると言うことです。
この原則には、二つ以上の関節をまたいで付着している多関節筋が関係しています。

例えは、ふくらはぎの筋肉である腓腹筋の起始は大腿骨内側及び外側上顆で、停止はアキレス腱を介して踵骨隆起の後面中央で、足関節と膝関節をまたいでいる二関節筋になります。
その主な作用は、膝関節屈曲と足関節底屈です。

一方でヒラメ筋の起始は脛骨と腓骨の後面上部3分の1ですが、腓腹筋と融合してアキレス腱となるので、停止は腓腹筋と同じ踵骨隆起の後面中央になります。
つまり、腓腹筋とヒラメ筋は足関節では同じ作用をしていることになります。

では、ヒラメ筋のストレッチを考えてみましょう。

腓腹筋の作用は、膝関節の屈曲と足関節の底屈(伸ばす)です。
なのでこの筋肉をストレッチさせるには、膝関節を伸展させ足関節を背屈(曲げる)させます。

では、この関節位置でヒラメ筋は十分にストレッチさせることができるのでしょうか。

結論を言うと、できません。
この状態では、ヒラメ筋が十分に伸張する前に腓腹筋が伸張しきってしまうのでヒラメ筋を十分に伸ばすことができなくなるのです。
ヒラメ筋を十分に伸ばすには、腓腹筋をたるませる必要があります。

ヒラメ筋をストレッチする時は、腓腹筋の場合と同じで足関節を背屈させますが、その時に膝関節を屈曲させることで腓腹筋をたるませることができます。
なぜなら膝関節を屈曲させることで腓腹筋の起始と停止の距離が短くなるからです。

また、これらの腓腹筋とヒラメ筋の関節角度と伸張の関係から膝を曲げた時の方がより足関節の背屈可動域が大きくなることが分かっています。

筋腱複合体の特性とストレッチの効果

筋肉

ストレッチには様々な方法がありますが、ストレッチの行い方によって筋腱複合体に与えられるストレスの大きさ、時間、割合が変わるのでその効果も変わってきます。
筋腱複合体には、弾性と粘性の両方の特性があります。

弾性とは、バネやゴムのように組織に力を与えて変形させても、その力を取り除くと元の形に戻ろうとする性質のことです。

粘性とは、組織に力を与えて変形させた後に力を取り除いても弾性体のように変形が元の状態に戻らない性質のことです。

これらの筋腱複合体の性質を有する筋腱複合体を摘出して、その両端をつまんで牽引し牽引力を増大させ伸張させて、その後牽引力を緩めて収縮させた時の筋腱複合体に生じる張力を測定したとします。

筋腱複合体は、弾性の性質を持っているので受動的に生じる筋腱複合体の張力は、損傷が生じない限り増大していきます。

しかし、牽引力を減少させて引き伸ばした後に筋腱複合体の長さを短縮させていくと、ある特定の長さになった時の張力は、引き伸ばした時の同じ長さの時の張力よりも低くなってしまいます。
これは筋腱複合体には、粘性の特性もあるからです。
引き伸ばされた時に元の長さに回復しない変形が生じてしまったのです。

負荷がかかった物体に永久的に生じる変形は、塑性変形と言います。
このような粘弾性の性質を持った筋腱複合体は、引き伸ばされる速度が高いほどスティフネスが高まって塑性変形が生じにくく、一定の力で長時間引き伸ばし続けるとより伸張が進みます。

これらの特性から、ゆっくりと伸ばす静的ストレッチは、元の長さに回復しにくい変形が生じやすくなります。
特に柔軟性が失われてしまった筋肉を伸張させる場合に静的ストレッチは効果的です。

一方の動的ストレッチでは、筋腱複合体の抵抗が高まり塑性変形が生じにくいです。
なので動的ストレッチでは、運動前など筋腱複合体をたるませ過ぎたくない場合に適していると言えます。
筋肉がたるませ過ぎてしまうと筋収縮にマイナスとなり筋力やパワーが発揮しにくくなってしまいます。

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