筋肉量の減少が死亡率を高める!小太りが一番長生きする
中肉中背が健康で長生き「BMI22が理想」は神話
自分の体重は、どのくらいが適正なのかを知る指標としてBMIがあります。
健康診断でも用いられているので一度は見聞きをしたことがあるのではないでしょうか。
BMIは、体重kg÷(身長m×身長m)で求めることができます。
これは、1835年にベルギーのアドルフ・ケトレー氏が提案しました。
BMIは、これまで22が理想的な数値と言われてきました。
この指標のもとになった研究は、実は30~59歳の限定された世代を対象とした成績が基本となっています。
近年では、世界各国の研究者が様々な調査を行い、時代の実情に合った新たなBMI指標が提唱されています。
健康で長生きできる数値はBMI22.5~25くらいで太ってはいないけどぽっちゃりしている、中肉中背と言われる体格になります。
日本でBMIが広く知られるようになったのは20年くらい前の2000年頃かと思います。
当時は、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、肥満など生活習慣病の改善やメタボリックシンドロームに対する栄養管理、つまりやせる為の栄養管理に主眼が置かれていました。
22という数値は、高血圧、脂質異常症などの有病率が最も低いBMIを示したものになります。
しかし、これだけで健康で長生きをする為のBMIは22が理想と言えるわけでもないのです。
BMIが広く知られるようになったことで、BMIや体脂肪率、コレステロールの数値を気にする人が増えているかと思います。
高齢化が進む現在では、BMI22が理想という神話が反対に健康に悪影響を及ぼしているの可能性もあると思います。
BMIが低下し筋肉量が減少すると死亡率が高まる
筋肉量と死亡率は一見すると関係がないように思うかもしれませんが、筋肉量が減少すると死亡率は高まります。
加齢に伴う筋肉量の変化を調べた研究データによると20~30代をピークに減り始めて40歳からは10年ごとに8~10%、70代の10年間では15%減少をします。
加齢に伴って筋肉が衰えていくのは自然現象ですが、筋肉量の減少が急激で病気ととらえて対処するべき状態をサルコペニアと言います。
サルコペニアは65歳以上の高齢者に多く、特に75歳以上になると増加して80歳以上では、約半数がサルコペニアであると考えられています。
サルコペニアになると歩く速度が低下し、着替えや入浴など日常生活の動作も難しくなっていきます。
また、バランス機能も悪くなり転倒の危険性も高くなります。
さらには、糖尿病や肺炎などの感染症を発症しやすくなるので死亡率を高めることも分かってきています。
サルコペニアは、健康と要介護の中間の状態であるフレイルの最大の危険因子です。
フレイルは、体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、気力の低下などの精神的変化、引きこもりなどの社会的変化も引き起こします。
75歳以上の人の多くは、フレイルの段階を経て要介護状態になっていきます。
筋肉量の減少は様々な健康リスクを高めてしまいます。
それを防ぐには、栄養をしっかりと摂って運動をすることなのです。
BMIが高めだと基本的に筋肉量もあるので、小太りのほうが長生きしやすいと言えるのです。
高齢者の多くは低栄養で運動不足
フレイルの状態になってしまう要因は、栄養不足と運動不足が大きく影響をしています。
ネスレ日本が行った後期高齢者の食と健康に関する実態調査によると75歳以上の日本人のほとんどが必要とされる食事量に足りていないことが明らかになったそうです。
この調査では、75歳以上の男女500名、75歳以上の同居家族を介護支援している男女500名、管理栄養士200名を対象に現在の食事量、食事内容で必要な栄養量が十分に足りていると思いますか?と質問をしました。
その結果、高齢者の90%が足りていると回答したのに対して介護支援者の27%、管理栄養士の71%が足りていないと答えています。
つまり、自分では十分足りていると思っていても実際には足りていない人が圧倒的に多いということです。
この背景には「高齢者でも粗食が大切」「太ることは健康に悪い」という認識があるからかもしれません。
もしかしたらBMI22が理想という神話も影響をしているかもしれません。
BMI22.5~25が最も死亡率が低いという研究では、欧米人とアジア人を比較したデータも示されています。
そのデータを見てみると欧米人ではBMI25を超えて数値が増えるほど死亡率が高くなるのに対してアジア人の場合は、22.5を下回ると急激に死亡率が上昇するという結果が出ているようです。
アジア人は、太るリスクよりもやせるリスクをより警戒をしたほうが良いのかもしれません。
しかし、実際には日本人の高齢者の多くがBMI18.5を下回っています。
50~60代の人たちは脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などのリスクが高い世代なので、太り過ぎないように注意しようと思いがちですが、筋肉を減らさないように注意すること、BMIが低下し過ぎないように意識をしたほうが良いかと思います。
病気やケガで入院し手術をする時、筋肉量が多い人は少ない人に比べて回復が早くなります。
筋肉は年齢に関係なく鍛えることが可能ですので、遅いということはありません。
筋肉量を増やすには運動をすることですが、ウォーキングなどの有酸素運動よりも筋肉に強い負荷のかかる筋力トレーニングをすると効果的です。
有酸素運動では、筋肉への刺激が弱いので筋肉量の減少を抑えるには不十分です。
筋肉に強い刺激を与える必要があるので、負荷をかける筋力トレーニングが必要になります
しかし、いきなり強度の高い運動はリスクが高いので、自分の身体と相談しながら軽めの運動から少しずつ始めるようにしましょう。
タンパク質を意識して運動をしよう
人間の臓器や筋肉、皮膚、髪の毛などはタンパク質からできています。
タンパク質はアミノ酸で構成されていて、食事で食べたタンパク質は、アミノ酸に分解されて体内のタンパク質を合成する材料になります。
その一方で体内のタンパク質が分解されたアミノ酸も材料となります。
筋肉量が多い人は、病気やケガで傷ついた細胞を修復する時の材料をたくさん蓄えてあるので、筋肉量が少ない人に比べて早く回復をします。
身体のタンパク質の分解は、空腹時にも起こります。
足りない栄養素を筋肉で賄っているのです。
ですので、ダイエットで食事制限をしていると身体のタンパク質の分解が進んでしまうのです。
では、年齢を重ねても筋肉を保つ為にはどうすればいいのでしょうか。
それは、筋肉の材料であるタンパク質をしっかりと摂って運動をすることです。
タンパク質を構成するアミノ酸のうち体内で合成することができないアミノ酸を必須アミノ酸と言います。
良質なタンパク質とは、必須アミノ酸が十分に含まれている食品になります。
その中で筋肉量の維持や増量に重要な役割を果たしているのが分岐鎖アミノ酸(BCAA)です。
BCAAは、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称で、マグロやカツオの赤身、鶏肉、牛肉、卵、牛乳などに多く含まれています。
また、必須アミノ酸ではないですがグルタミンも筋肉を作るのに重要なアミノ酸になります。
グルタミンは、レバーや豚肉、大豆、魚、卵、小麦粉、チーズなどに多く含まれています。
アルギニンも必須アミノ酸ではないですが、成長ホルモンの分泌を促す作用があるとされていますので、筋肉を作るのに重要なアミノ酸となります。
アルギニンは、鶏肉、大豆、エビ、マグロなどに多く含まれています。
特にこれら5種類のアミノ酸を意識して、バランスの良い食事を心掛けるようにすると良いかと思います。
そして、運動です。
いくら食事で栄養素をしっかりと摂っても運動をしないと筋肉は作られません。
筋肉の分解を抑えて合成させるには、強い刺激が必要になります。
ウォーキングなどの有酸素運動でも良いのですが、有酸素運動だと筋肉への刺激が少なく筋肉を維持するのも難しくなると思います。
筋力トレーニングのような筋肉にしっかりと負荷のかかる運動をすると良いです。
しかし、いきなり強度の高い運動は危険も伴うので徐々に運動のレベルを上げていくようにしましょう。
健康で長生きをするには、バランスの良い食事をし、筋肉を維持する為に運動をすることが重要です。