オーラルケアで様々な病気のリスクを減らせる、QOL向上に口腔の健康は必須
内閣府の骨太の方針2022でオーラルケアについて初めて盛り込まれました。
特定検診・特定保健指導の第3期改定(2018年度から2023年度)において標準的な質問票に咀嚼に関する質問が取り込まれています。
口は、栄養摂取の入り口だけでなく、噛み合わせが悪いと肩こりや頭痛の原因にもなります。
また、口の中の細菌のバランスが崩れると肺炎や心疾患など様々な病気を引き起こすことが知られています。
口の中の健康維持、日々の口腔ケアがQOLに関わってくると言えます。
口の役割とは?
内閣府の経済財政運営と改革の基本方針2022の持続可能な社会保障制度の構築の項目にオーラルケアについて記載が盛り込まれました。
骨太方針は、政権の重要な課題や次年度の予算編成の方向性を示すもので、ここに口の中の健康について記載されたことでオーラルケアが改めて関心を集めています。
オーラルケア、口腔の健康と一口に言ってもそもそも口の役割とは一体何なのでしょうか。
口は咀嚼、発声など人間が生活をしていく上でとても重要な働きをしています。
咀嚼は、食べ物を噛んで食べやすくすることだけでなく、噛む動作によって脳への血流が良くなり、また刺激となって脳を活性化させてくれますし、他にも顎の骨や筋肉を発達させます。
口の周りの筋肉をよく使うと表情が豊かになりますし、発音がキレイになると言われます。
また、ゆっくりとよく噛んで食べることが肥満の予防、味覚が発達する、唾液の分泌を促して虫歯や歯肉炎を予防するなどにも繋がります。
咀嚼
食べ物や飲み物は、口唇・舌・頬の協調的な動きによって口に入り、細かくされ飲み込むことで消化管に運ばれます。
口腔内で食べ物が細かくなることで食物は嚥下しやすく消化もしやすくなります。
噛むことで成長期では、顎の骨や周囲の筋肉の発達を促します。
味覚
ヒトの場合、主に舌上面の舌乳頭にある味蕾で受容された味覚情報が脳に伝えられます。
基本味としては、甘味、酸味、塩味、苦み、うま味があります。
食べ物の味を決定する要因は、味以外にも臭い、歯触り、舌触り、温度、色、体調などがあります。
基本の味が他の要素で拡張され感覚としての味は、風味と呼ばれることが多いです。
唾液
唾液は、食べ物中の味物質が唾液中に溶けて味蕾の受容体と反応するのを助けます。
ムチンなどによって唾液は強い粘性があり、食物を湿らせて塊にしやすくして咀嚼と嚥下をしやすくする効果があります。
唾液中には、αアミラーゼがでんぷんを麦芽糖に分解する化学的消化作用があります。
また、洗浄作用や歯や粘膜の保護作用、歯の再石化作用などもあります。
発音と発声
ヒトは会話をすることでコミュニケーションを取っています。
言葉は、声と口元や顔の表情とともに発せられます。
声は、声帯が振動して音が発せられ、歯、顎、骨、口唇、舌の形態や機能によって作られます。
形態や機能に異常があると発音障害となります。
オーラルケア、口腔清掃の種類
オーラルケアというと虫歯の予防や歯周病対策を思い浮かべる人も多いと思いますが、それだけでもありません。
大きく虫歯予防や歯周病対策などを目的とした口腔の清掃と口腔機能の回復を目的としたケアに分けることができます。
オーラルケアは、日常的に自分で行うセルフケアと歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアがあります。
口腔清掃のほかセルフケアについてのアドバイス、口腔機能のリハビリなどがあります。
セルフケア
適切な歯ブラシや歯間清掃器具を使用して口腔内を清掃する。
虫歯の原因となる甘味食品の量を調整し、栄養バランスの取れた食事をよく噛んで食べる。
全身のリラクゼーションを心掛けて、顔面、口腔をよく動かし、摂食、嚥下の為の良好な口腔機能を保つ。
フッ化物入りの歯磨きを使用して虫歯予防に役立てる。
定期的に歯科検診を受ける。
プロフェッショナルケア
虫歯や歯周病の状況を診て全身の状態や口腔内の状況にあった適切な口腔清掃のアドバイス。
セルフケアでは清掃できない部位の清掃。
口腔機能の維持、回復を図る機能的口腔ケア。
食介護への支援。
フッ化物洗口など、予防に関係する薬剤の紹介と正しい使い方の指導。
オーラルケアは様々な病気の予防に繋がる
適切にオーラルケアをしないとどうなってしまうのでしょうか。
40歳以上の日本人の約8割が歯周病の症状を持っていると言われています。
歯周病に感染すると歯周組織の炎症が進行し、口の中の粘つき、歯磨き時の出血、口臭、歯茎が腫れる、歯肉が痛むなどの症状が出てきます。
これらの症状が進行すると歯が抜けてしまうことがあります。
近年の研究では、歯周病が誤嚥性肺炎や動脈硬化、心臓病、脳卒中、糖尿病、早産、関節リウマチ、アルツハイマー病などとも関係があることが分かってきているようです。
歯磨きが不十分だと歯垢(プラーク)や歯石が歯と歯茎の境目に繁殖します。
プラークの中には、重さ1mgあたり1億個の細菌が含まれていて細菌の毒素によって歯肉に炎症が起こったり、腫れたり出血しやすくなったり歯と歯肉の間に隙間ができてしまいます。
歯周病菌、歯周病菌が作る酵素や毒素、歯周病組織で作られるサイトカインなどが供給源となって、血管を通して全身に運ばれ全身の疾患に悪影響を及ぼすと考えられています。
例えば、心臓の内膜に歯周病菌が付着すると心内膜炎を起こして狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高まるとされています。
糖尿病や関節リウマチは免疫機能の低下から歯周病になりやすいとされ、歯周病がこれらの病気を悪化させることも分かってきています。
高齢者では、歯周病の罹患率が高く、口の中の細菌が肺に入って炎症を起こすことで誤嚥性肺炎の発症に繋がります。
オーラルケアを怠ってしまうと様々な病気の原因になってしまったり悪化させてしまったりします。
毎日しっかりとオーラルケアを意識して口の中の健康を保ちましょう。